口語訳聖書(振り仮名付き)
章: 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42
ヨブ記き
第22章 Jb-Audio
22:1 そこでテマンびとエリパズは答こたえて言いった、
22:2 「人ひとは神かみを益えきすることができるであろうか。賢かしこい人ひとも、ただ自身じしんを益えきするのみである。
22:3 あなたが正ただしくても、全能者ぜんのうしゃになんの喜よろこびがあろう。あなたが自分じぶんの道みちを全まっとうしても、彼かれになんの利益りえきがあろう。
22:4 神かみはあなたが神かみを恐おそれることのゆえに、あなたを責せめ、あなたをさばかれるであろうか。
22:5 あなたの悪あくは大おおきいではないか。あなたの罪つみは、はてしがない。
22:6 あなたはゆえなく兄弟きょうだいのものを質しちにとり、裸はだかな者ものの着物きものをはぎ取とり、
22:7 疲つかれた者ものに水みずを飲のませず、飢うえた者ものに食物しょくもつを与あたえなかった。
22:8 力ちからある人ひとは土地とちを得え、名なある人ひとはそのうちに住すんだ。
22:9 あなたは、やもめをむなしく去さらせた。みなしごの腕うでは折おられた。
22:10 それゆえ、わなはあなたをめぐり、恐怖きょうふは、にわかにあなたを驚おどろかす。
22:11 あなたの光ひかりは暗くらくされ、あなたは見みることができない。大水おおみずはあなたをおおうであろう。
22:12 神かみは天てんに高たかくおられるではないか。見みよ、いと高たかき星ほしを。いかに高たかいことよ。
22:13 それであなたは言いう、『神かみは何なにを知しっておられるか。彼かれは黒雲くろくもを通とおして、さばくことができるのか。
22:14 濃こい雲くもが彼かれをおおい隠かくすと、彼かれは見みることができない。彼かれは天てんの大空おおぞらを歩あゆまれるのだ』と。
22:15 あなたは悪あしき人々ひとびとが踏ふんだいにしえの道みちを守まもろうとするのか。
22:16 彼かれらは時ときがこないうちに取とり去さられ、その基もといは川かわのように押おし流ながされた。
22:17 彼かれらは神かみに言いった、『われわれを離はなれてください』と、また『全能者ぜんのうしゃはわれわれに何なにをなしえようか』と。
22:18 しかし神かみは彼かれらの家いえを良よい物もので満みたされた。ただし悪人あくにんの計はかりごとはわたしのくみする所ところではない。
22:19 正ただしい者ものはこれを見みて喜よろこび、罪つみなき者ものは彼かれらをあざ笑わらって言いう、
22:20 『まことにわれわれのあだは滅ほろぼされ、その残のこした物ものは火ひで焼やき滅ほろぼされた』と。
22:21 あなたは神かみと和やわらいで、平安へいあんを得えるがよい。そうすれば幸福こうふくがあなたに来くるでしょう。
22:22 どうか、彼かれの口くちから教おしえを受うけ、その言葉ことばをあなたの心こころにおさめるように。
22:23 あなたがもし全能者ぜんのうしゃに立たち返かえって、おのれを低ひくくし、あなたの天幕てんまくから不義ふぎを除のぞき去さり、
22:24 こがねをちりの中なかに置おき、オフルのこがねを谷川たにがわの石いしの中なかに置おき、
22:25 全能者ぜんのうしゃがあなたのこがねとなり、あなたの貴重きちょうなしろがねとなるならば、
22:26 その時とき、あなたは全能者ぜんのうしゃを喜よろこび、神かみに向むかって顔かおをあげることができる。
22:27 あなたが彼かれに祈いのるならば、彼かれはあなたに聞きかれる。そしてあなたは自分じぶんの誓ちかいを果はたす。
22:28 あなたが事ことをなそうと定さだめるならば、あなたはその事ことを成就じょうじゅし、あなたの道みちには光ひかりが輝かがやく。
22:29 彼かれは高たかぶる者ものを低ひくくされるが、へりくだる者ものを救すくわれるからだ。
22:30 彼かれは罪つみのない者ものを救すくわれる。あなたはその手ての潔いさぎよいことによって、救すくわれるであろう」。
第23章 23:1 そこでヨブは答こたえて言いった、 23:2 「きょうもまた、わたしのつぶやきは激はげしく、彼かれの手てはわたしの嘆なげきにかかわらず、重おもい。23:3 どうか、彼かれを尋たずねてどこで会あえるかを知しり、そのみ座ざに至いたることができるように。23:4 わたしは彼かれの前まえにわたしの訴うったえをならべ、口くちをきわめて論議ぎするであろう。23:5 わたしは、わたしに答こたえられるみ言葉ことばを知しり、わたしに言いわれる所ところを悟さとろう。23:6 彼かれは大おおいなる力ちからをもって、わたしと争あらそわれるであろうか、いな、かえってわたしを顧かえりみられるであろう。23:7 かしこでは正ただしい人ひとは彼かれと言いい争あらそうことができる。そうすれば、わたしはわたしをさばく者ものから永久えいきゅうに救すくわれるであろう。 23:8 見みよ、わたしが進すすんでも、彼かれを見みない。退しりぞいても、彼かれを認みとめることができない。23:9 左ひだりの方ほうに尋たずねても、会あうことができない。右みぎの方ほうに向むかっても、見みることができない。23:10 しかし彼かれはわたしの歩あゆむ道みちを知しっておられる。彼かれがわたしを試こころみられるとき、わたしは金きんのように出でて来くるであろう。23:11 わたしの足あしは彼かれの歩あゆみに堅かたく従したがった。わたしは彼かれの道みちを守まもって離はなれなかった。23:12 わたしは彼かれのくちびるの命令めいれいにそむかず、その口くちの言葉ことばをわたしの胸むねにたくわえた。23:13 しかし彼かれは変かわることはない。だれが彼かれをひるがえすことができようか。彼かれはその心こころの欲ほっするところを行おこなわれるのだ。23:14 彼かれはわたしのために定さだめた事ことをなし遂とげられる。そしてこのような事ことが多おおく彼かれの心こころにある。23:15 それゆえ、わたしは彼かれの前まえにおののく。わたしは考かんがえるとき、彼かれを恐おそれる。23:16 神かみはわたしの心こころを弱よわくされた。全能者ぜんのうしゃはわたしを恐おそれさせられた。23:17 わたしは、やみによって閉とじこめられ、暗黒あんこくがわたしの顔かおをおおっている。 第24章 24:1 なにゆえ、全能者ぜんのうしゃはさばきの時ときを定さだめておかれないのか。なにゆえ、彼かれを知しる者ものがその日ひを見みないのか。24:2 世よには地境じざかいを移うつす者もの、群むれを奪うばってそれを飼かう者もの、24:3 みなしごのろばを追おいやる者もの、やもめの牛うしを質しちに取とる者もの、24:4 貧まずしい者ものを道みちから押おしのける者ものがある。世よの弱よわい者ものは皆みな彼かれらをさけて身みをかくす。24:5 見みよ、彼かれらは荒野あらのにおる野のろばのように出でて働はたらき、野ので獲物えものを求もとめて、その子こらの食物しょくもつとする。24:6 彼かれらは畑はたけでそのまぐさを刈かり、また悪人あくにんのぶどう畑はたけで拾ひろい集あつめる。24:7 彼かれらは着きる物ものがなく、裸はだかで夜よるを過すごし、寒さむさに身みをおおうべき物ものもない。24:8 彼かれらは山やまの雨あめにぬれ、しのぎ場ばもなく岩いわにすがる。24:9 (みなしごをその母ははのふところから奪うばい、貧まずしい者ものの幼おさな子ごを質しちにとる者ものがある。)24:10 彼かれらは着きる物ものがなく、裸はだかで歩あるき、飢うえつつ麦むぎ束たばを運はこび、24:11 悪人あくにんのオリブ並み木きの中なかで油あぶらをしぼり、酒さかぶねを踏ふんでも、かわきを覚おぼえる。24:12 町まちの中なかから死しのうめきが起おこり、傷きずついた者ものの魂たましいが助たすけを呼よび求もとめる。しかし神かみは彼かれらの祈いのりを顧かえりみられない。24:13 光ひかりにそむく者ものたちがある。彼かれらは光ひかりの道みちを知しらず、光ひかりの道みちにとどまらない。24:14 人ひとを殺ころす者ものは暗くらいうちに起おき出でて弱よわい者ものと貧まずしい者ものを殺ころし、夜よるは盗ぬすびととなる。24:15 姦淫かんいんする者ものの目めはたそがれを待まって、『だれもわたしを見みていないだろう』と言いい、顔かおにおおう物ものを当あてる。24:16 彼かれらは暗くらやみで家いえをうがち、昼ひるは閉とじこもって光ひかりを知しらない。24:17 彼かれらには暗黒あんこくは朝あさである。彼かれらは暗黒あんこくの恐おそれを友ともとするからだ。 24:18 あなたがたは言いう、『彼かれらは水みずのおもてにすみやかに流ながれ去さり、その受うける分ぶんは地ちでのろわれ、酒さかぶねを踏ふむ者ものはだれも彼かれらのぶどう畑はたけの道みちに行いかない。24:19 ひでりと熱あつさは雪ゆき水みずを奪うばい去さる、陰府よみが罪つみを犯おかした者ものに対たいするも、これと同様どうようだ。24:20 町まちの広場ひろばは彼かれらを忘わすれ、彼かれらの名なは覚おぼえられることなく、不義ふぎは木きの折おられるように折おられる』と。 24:21 彼かれらは子こを産うまぬうまずめをくらい、やもめをあわれむことをしない。24:22 しかし神かみはその力ちからをもって、強つよい人々ひとびとを生いきながらえさせられる。彼かれらは生いきる望のぞみのない時ときにも起おきあがる。24:23 神かみが彼かれらに安全あんぜんを与あたえられるので、彼かれらは安やすらかである。神かみの目めは彼かれらの道みちの上うえにある。24:24 彼かれらはしばし高たかめられて、いなくなり、ぜにあおいのように枯かれて消きえうせ、麦むぎの穂先ほさきのように切きり取とられる。24:25 もし、そうでないなら、だれがわたしにその偽いつわりを証明しょうめいし、わが言葉ことばのむなしいことを示しめしうるだろうか」。 第25章 25:1 そこでシュヒびとビルダデは答こたえて言いった、 25:2 「大権たいけんと恐おそれとは神かみと共ともにある。彼かれは高たかき所ところで平和へいわを施ほどこされる。25:3 その軍勢ぐんぜいは数かぞえることができるか。何なに物ものかその光ひかりに浴よくさないものがあるか。25:4 それで人ひとはどうして神かみの前まえに正ただしくありえようか。女おんなから生うまれた者ものがどうして清きよくありえようか。25:5 見みよ、月つきさえも輝かがやかず、星ほしも彼かれの目めには清きよくない。25:6 うじのような人ひと、虫むしのような人ひとの子こはなおさらである」。 第26章 26:1 そこでヨブは答こたえて言いった、 26:2 「あなたは力ちからのない者ものをどれほど助たすけたかしれない。気力きりょくのない腕うでをどれほど救すくったかしれない。26:3 知恵ちえのない者ものをどれほど教おしえたかしれない。悟さとりをどれほど多おおく示しめしたかしれない。26:4 あなたはだれの助たすけによって言葉ことばをだしたのか。あなたから出でたのはだれの霊れいなのか。26:5 亡霊ぼうれいは水みずおよびその中なかに住すむものの下したに震ふるう。26:6 神かみの前まえでは陰府よみも裸はだかである。滅ほろびの穴あなもおおい隠かくすものはない。26:7 彼かれは北きたの天てんを空間くうかんに張はり、地ちを何なにもない所ところに掛かけられる。26:8 彼かれは水みずを濃こい雲くもの中なかに包つつまれるが、その下したの雲くもは裂さけない。26:9 彼かれは月つきのおもてをおおい隠かくして、雲くもをその上うえにのべ、26:10 水みずのおもてに円えんを描えがいて、光ひかりとやみとの境さかいとされた。26:11 彼かれが戒いましめると、天てんの柱はしらは震ふるい、かつ驚おどろく。26:12 彼かれはその力ちからをもって海うみを静しずめ、その知恵ちえをもってラハブを打うち砕くだき、26:13 その息いきをもって天てんを晴はれわたらせ、その手てをもって逃にげるへびを突つき通とおされる。26:14 見みよ、これらはただ彼かれの道みちの端はしにすぎない。われわれが彼かれについて聞きく所ところはいかにかすかなささやきであろう。しかし、その力ちからのとどろきに至いたっては、だれが悟さとることができるか」。 第27章 27:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 27:2 「神かみは生いきておられる。彼かれはわたしの義ぎを奪うばい去さられた。全能者ぜんのうしゃはわたしの魂たましいを悩なやまされた。27:3 わたしの息いきがわたしのうちにあり、神かみの息いきがわたしの鼻はなにある間あいだ、27:4 わたしのくちびるは不義ふぎを言いわない、わたしの舌したは偽いつわりを語かたらない。27:5 わたしは断だんじて、あなたがたを正ただしいとは認みとめない。わたしは死しぬまで、潔白けっぱくを主張しゅちょうしてやめない。27:6 わたしは堅かたくわが義ぎを保たもって捨すてない。わたしは今いままで一日にちも心こころに責せめられた事ことがない。 27:7 どうか、わたしの敵てきは悪人あくにんのようになり、わたしに逆さからう者ものは不義ふぎなる者もののようになるように。27:8 神かみが彼かれを断たち、その魂たましいを抜ぬきとられるとき、神かみを信しんじない者ものになんの望のぞみがあろう。27:9 災わざわいが彼かれに臨のぞむとき、神かみはその叫さけびを聞きかれるであろうか。27:10 彼かれは全能者ぜんのうしゃを喜よろこぶであろうか、常つねに神かみを呼よぶであろうか。 27:11 わたしは神かみのみ手てについてあなたがたに教おしえ、全能者ぜんのうしゃと共ともにあるものを隠かくすことをしない。27:12 見みよ、あなたがたは皆みなみずからこれを見みた、それなのに、どうしてむなしい者ものとなったのか。 27:13 これは悪人あくにんの神かみから受うける分ぶん、圧制者あっせいしゃの全能者ぜんのうしゃから受うける嗣し業ぎょうである。27:14 その子こらがふえればつるぎに渡わたされ、その子孫しそんは食物しょくもつに飽あきることがない。27:15 その生いき残のこった者ものは疫病えきびょうで死しんで埋うめられ、そのやもめらは泣なき悲かなしむことをしない。27:16 たとい彼かれは銀ぎんをちりのように積つみ、衣服いふくを土つちのように備そなえても、27:17 その備そなえるものは正ただしい人ひとがこれを着き、その銀ぎんは罪つみなき者ものが分わかち取とるであろう。27:18 彼かれの建たてる家いえは、くもの巣すのようであり、番人ばんにんの つくる小屋こやのようである。27:19 彼かれは富とめる身みで寝ねても、再ふたたび富とむことがなく、目めを開ひらけばその富とみはない。27:20 恐おそろしい事ことが大水おおみずのように彼かれを襲おそい、夜よるはつむじ風かぜが彼かれを奪うばい去さる。27:21 東風ひがしかぜが彼かれを揚あげると、彼かれは去さり、彼かれをその所ところから吹ふき払はらう。27:22 それは彼かれを投なげつけて、あわれむことなく、彼かれはその力ちからからのがれようと、もがく。27:23 それは彼かれに向むかって手てを鳴ならし、あざけり笑わらって、その所ところから出でて行いかせる。 第28章 28:1 しろがねには掘ほり出だす穴あながあり、精錬せいれんするこがねには出でどころがある。28:2 くろがねは土つちから取とり、あかがねは石いしから溶とかして取とる。28:3 人ひとは暗くらやみを破やぶり、いやはてまでも尋たずねきわめて、暗くらやみおよび暗黒あんこくの中なかから鉱石こうせきを取とる。28:4 彼かれらは人ひとの住すむ所ところを離はなれて縦穴たてあなをうがち、道行みちゆく人ひとに忘わすれられ、人ひとを離はなれて身みをつりさげ、揺ゆれ動うごく。28:5 地ちはそこから食物しょくもつを出だす。その下したは火ひでくつがえされるようにくつがえる。28:6 その石いしはサファイヤのある所ところ、そこにはまた金塊きんかいがある。28:7 その道みちは猛禽もうきんも知しらず、たかの目めもこれを見みず、28:8 猛獣もうじゅうもこれを踏ふまず、ししもこれを通とおらなかった。28:9 人ひとは堅かたい岩いわに手てをくだして、山やまを根元ねもとからくつがえす。28:10 彼かれは岩いわに坑道こうどうを掘ほり、その目めはもろもろの尊たっとい物ものを見みる。28:11 彼かれは水路すいろをふさいで、漏もれないようにし、隠かくれた物ものを光ひかりに取とり出だす。 28:12 しかし知恵ちえはどこに見みいだされるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:13 人ひとはそこに至いたる道みちを知しらない、また生いける者ものの地ちでそれを獲えることができない。28:14 淵ふちは言いう、『それはわたしのうちにない』と。また海うみは言いう、『わたしのもとにない』と。28:15 精せい金きんもこれと換かえることはできない。銀ぎんも量はかってその価あたいとすることはできない。28:16 オフルの金きんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。尊たっとい縞しまめのうも、サファイヤも同様どうようである。28:17 こがねも、玻璃はりもこれに並ならぶことができない。また精せい金きんの器物うつわものもこれと換かえることができない。28:18 さんごも水晶すいしょうも言いうに足たりない。知恵ちえを得えるのは真珠しんじゅを得えるのにまさる。28:19 エチオピヤのトパズもこれに並ならぶことができない。純金じゅんきんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。28:20 それでは知恵ちえはどこから来くるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:21 これはすべての生いき物ものの目めに隠かくされ、空そらの鳥とりにも隠かくされている。28:22 滅ほろびも死しも言いう、『われわれはそのうわさを耳みみに聞きいただけだ』。28:23 神かみはこれに至いたる道みちを悟さとっておられる、彼かれはそのある所ところを知しっておられる。28:24 彼かれは地ちの果はてまでもみそなわし、天あめが下したを見みきわめられるからだ。28:25 彼かれが風かぜに重おもさを与あたえ、水みずをますで量はかられたとき、28:26 彼かれが雨あめのために規定きていを設もうけ、雷かみなりのひらめきのために道みちを設もうけられたとき、28:27 彼かれは知恵ちえを見みて、これをあらわし、これを確たしかめ、これをきわめられた。28:28 そして人ひとに言いわれた、『見みよ、主しゅを恐おそれることは知恵ちえである、悪あくを離はなれることは悟さとりである』と」。 第29章 29:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 29:2 「ああ過すぎた年月としつきのようであったらよいのだが、神かみがわたしを守まもってくださった日ひのようであったらよいのだが。29:3 あの時ときには、彼かれのともしびがわたしの頭あたまの上うえに輝かがやき、彼かれの光ひかりによってわたしは暗くらやみを歩あゆんだ。29:4 わたしの盛さかんな時ときのようであったならよいのだが。あの時ときには、神かみの親したしみがわたしの天幕てんまくの上うえにあった。29:5 あの時ときには、全能者ぜんのうしゃがなおわたしと共ともにいまし、わたしの子供こどもたちもわたしの周囲しゅういにいた。29:6 あの時とき、わたしの足跡あしあとは乳ちちで洗あらわれ、岩いわもわたしのために油あぶらの流ながれを注そそぎだした。29:7 あの時ときには、わたしは町まちの門もんに出でて行いき、わたしの座ざを広場ひろばに設もうけた。29:8 若わかい者ものはわたしを見みてしりぞき、老おいた者ものは身みをおこして立たち、29:9 君きみたる者ものも物言ものいうことをやめて、その口くちに手てを当あて、29:10 尊たっとい者ものも声こえをおさめて、その舌したを上うえあごにつけた。29:11 耳みみに聞きいた者ものはわたしを祝福しゅくふくされた者ものとなし、目めに見みた者ものはこれをあかしした。29:12 これは助たすけを求もとめる貧まずしい者ものを救すくい、また、みなしごおよび助たすける人ひとのない者ものを救すくったからである。29:13 今いまにも滅ほろびようとした者ものの祝福しゅくふくがわたしに来きた。わたしはまたやもめの心こころをして喜よろこび歌うたわせた。29:14 わたしは正義せいぎを着き、正義せいぎはわたしをおおった。わたしの公義こうぎは上着うわぎのごとく、また冠かんむりのようであった。29:15 わたしは目めしいの目めとなり、足あしなえの足あしとなり、29:16 貧まずしい者ものの父ちちとなり、知しらない人ひとの訴うったえの理由りゆうを調しらべてやった。29:17 わたしはまた悪あしき者もののきばを折おり、その歯はの間あいだから獲物えものを引ひき出だした。29:18 その時とき、わたしは言いった、『わたしは自分じぶんの巣すの中なかで死しに、わたしの日ひは砂すなのように多おおくなるであろう。29:19 わたしの根ねは水みずのほとりにはびこり、露つゆは夜よもすがらわたしの枝えだにおくであろう。29:20 わたしの栄さかえはわたしと共ともに新あたらしく、わたしの弓ゆみはわたしの手てにいつも強つよい』と。 29:21 人々ひとびとはわたしに聞きいて待まち、黙もくして、わたしの教おしえに従したがった。29:22 わたしが言いった後のちは彼かれらは再ふたたび言いわなかった。わたしの言葉ことばは彼かれらの上うえに雨あめのように降ふりそそいだ。29:23 彼かれらは雨あめを待まつように、わたしを待まち望のぞみ、春はるの雨あめを仰あおぐように口くちを開ひらいて仰あおいだ。29:24 彼かれらが希望きぼうを失うしなった時ときにも、わたしは彼かれらにむかってほほえんだ。彼かれらはわたしの顔かおの光ひかりを除のぞくことができなかった。29:25 わたしは彼かれらのために道みちを選えらび、そのかしらとして座ざし、軍中ぐんちゅうの王おうのようにしており、嘆なげく者ものを慰なぐさめる人ひとのようであった。 第30章 30:1 しかし今いまはわたしよりも年とし若わかい者ものが、かえってわたしをあざ笑わらう。彼かれらの父ちちはわたしが卑いやしめて、群むれの犬いぬと一緒いっしょにさえしなかった者ものだ。30:2 彼かれらの手ての力ちからからわたしは何なにを得えるであろうか、彼かれらはその気力きりょくがすでに衰おとろえた人々ひとびとだ。30:3 彼かれらは乏とぼしさと激はげしい飢うえとによって、かわいた荒あれ地ちをかむ。30:4 彼かれらは、ぜにあおいおよび灌木かんぼくの葉はを摘つみ、れだまの根ねをもって身みを暖あたためる。30:5 彼かれらは人々ひとびとの中なかから追おいだされ、盗ぬすびとを追おうように、人々ひとびとは彼かれらを追おい呼よばわる。30:6 彼かれらは急流きゅうりゅうの谷間たにまに住すみ、土つちの穴あなまたは岩いわの穴あなにおり、30:7 灌木かんぼくの中なかにいななき、いらくさの下したに押おし合あう。30:8 彼かれらは愚おろかな者ものの子こ、また卑いやしい者ものの子こであって、国くにから追おいだされた者ものだ。 30:9 それなのに、わたしは今いま彼かれらの歌うたとなり、彼かれらの笑わらい草ぐさとなった。30:10 彼かれらはわたしをいとい、遠とおくわたしをはなれ、わたしの顔かおにつばきすることも、ためらわない。30:11 神かみがわたしの綱つなを解といて、わたしを卑いやしめられたので、彼かれらもわたしの前まえに慎つつしみを捨すてた。30:12 このともがらはわたしの右みぎに立たち上あがり、わたしを追おいのけ、わたしにむかって滅ほろびの道みちを築きずく。30:13 彼かれらはわたしの道みちをこわし、わたしの災わざわいを促うながす。これをさし止とめる者ものはない。30:14 彼かれらは広ひろい破やぶれ口くちからはいるように進すすみきたり、破壊はかいの中なかをおし寄よせる。30:15 恐おそろしい事ことはわたしに臨のぞみ、わたしの誉ほまれは風かぜのように吹ふき払はらわれ、わたしの繁栄はんえいは雲くものように消きえうせた。 30:16 今いまは、わたしの魂たましいはわたしの内うちにとけて流ながれ、悩なやみの日ひはわたしを捕とらえた。30:17 夜よるはわたしの骨ほねを激はげしく悩なやまし、わたしをかむ苦くるしみは、やむことがない。30:18 それは暴力ぼうりょくをもって、わたしの着物きものを捕とらえ、はだ着ぎのえりのように、わたしをしめつける。30:19 神かみがわたしを泥どろの中なかに投なげ入いれられたので、わたしはちり灰はいのようになった。30:20 わたしがあなたにむかって呼よばわっても、あなたは答こたえられない。わたしが立たっていても、あなたは顧かえりみられない。30:21 あなたは変かわって、わたしに無情むじょうな者ものとなり、み手ての力ちからをもってわたしを攻せめ悩なやまされる。30:22 あなたはわたしを揚あげて風かぜの上うえに乗のせ、大風おおかぜのうなり声こえの中なかに、もませられる。30:23 わたしは知しっている、あなたはわたしを死しに帰かえらせ、すべての生いき物ものの集あつまる家いえに帰かえらせられることを。 30:24 さりながら荒塚あらつかの中なかにある者ものは、手てを伸のべないであろうか、災わざわいの中なかにある者ものは助たすけを呼よび求もとめないであろうか。30:25 わたしは苦くるしい日ひを送おくる者もののために泣なかなかったか。わたしの魂たましいは貧まずしい人ひとのために悲かなしまなかったか。30:26 しかしわたしが幸さいわいを望のぞんだのに災わざわいが来きた。光ひかりを待まち望のぞんだのにやみが来きた。30:27 わたしのはらわたは沸わきかえって、静しずまらない。悩なやみの日ひがわたしに近ちかづいた。30:28 わたしは日ひの光ひかりによらずに黒くろくなって歩あるき、公会こうかいの中なかに立たって助たすけを呼よび求もとめる。30:29 わたしは山犬やまいぬの兄弟きょうだいとなり、だちょうの友ともとなった。30:30 わたしの皮膚ひふは黒くろくなって、はげ落おち、わたしの骨ほねは熱あつさによって燃もえ、30:31 わたしの琴ことは悲かなしみの音ねとなり、わたしの笛ふえは泣なく者ものの声こえとなった。 第31章 31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。 第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
23:1 そこでヨブは答こたえて言いった、
23:2 「きょうもまた、わたしのつぶやきは激はげしく、彼かれの手てはわたしの嘆なげきにかかわらず、重おもい。
23:3 どうか、彼かれを尋たずねてどこで会あえるかを知しり、そのみ座ざに至いたることができるように。
23:4 わたしは彼かれの前まえにわたしの訴うったえをならべ、口くちをきわめて論議ぎするであろう。
23:5 わたしは、わたしに答こたえられるみ言葉ことばを知しり、わたしに言いわれる所ところを悟さとろう。
23:6 彼かれは大おおいなる力ちからをもって、わたしと争あらそわれるであろうか、いな、かえってわたしを顧かえりみられるであろう。
23:7 かしこでは正ただしい人ひとは彼かれと言いい争あらそうことができる。そうすれば、わたしはわたしをさばく者ものから永久えいきゅうに救すくわれるであろう。
23:8 見みよ、わたしが進すすんでも、彼かれを見みない。退しりぞいても、彼かれを認みとめることができない。
23:9 左ひだりの方ほうに尋たずねても、会あうことができない。右みぎの方ほうに向むかっても、見みることができない。
23:10 しかし彼かれはわたしの歩あゆむ道みちを知しっておられる。彼かれがわたしを試こころみられるとき、わたしは金きんのように出でて来くるであろう。
23:11 わたしの足あしは彼かれの歩あゆみに堅かたく従したがった。わたしは彼かれの道みちを守まもって離はなれなかった。
23:12 わたしは彼かれのくちびるの命令めいれいにそむかず、その口くちの言葉ことばをわたしの胸むねにたくわえた。
23:13 しかし彼かれは変かわることはない。だれが彼かれをひるがえすことができようか。彼かれはその心こころの欲ほっするところを行おこなわれるのだ。
23:14 彼かれはわたしのために定さだめた事ことをなし遂とげられる。そしてこのような事ことが多おおく彼かれの心こころにある。
23:15 それゆえ、わたしは彼かれの前まえにおののく。わたしは考かんがえるとき、彼かれを恐おそれる。
23:16 神かみはわたしの心こころを弱よわくされた。全能者ぜんのうしゃはわたしを恐おそれさせられた。
23:17 わたしは、やみによって閉とじこめられ、暗黒あんこくがわたしの顔かおをおおっている。
第24章 24:1 なにゆえ、全能者ぜんのうしゃはさばきの時ときを定さだめておかれないのか。なにゆえ、彼かれを知しる者ものがその日ひを見みないのか。24:2 世よには地境じざかいを移うつす者もの、群むれを奪うばってそれを飼かう者もの、24:3 みなしごのろばを追おいやる者もの、やもめの牛うしを質しちに取とる者もの、24:4 貧まずしい者ものを道みちから押おしのける者ものがある。世よの弱よわい者ものは皆みな彼かれらをさけて身みをかくす。24:5 見みよ、彼かれらは荒野あらのにおる野のろばのように出でて働はたらき、野ので獲物えものを求もとめて、その子こらの食物しょくもつとする。24:6 彼かれらは畑はたけでそのまぐさを刈かり、また悪人あくにんのぶどう畑はたけで拾ひろい集あつめる。24:7 彼かれらは着きる物ものがなく、裸はだかで夜よるを過すごし、寒さむさに身みをおおうべき物ものもない。24:8 彼かれらは山やまの雨あめにぬれ、しのぎ場ばもなく岩いわにすがる。24:9 (みなしごをその母ははのふところから奪うばい、貧まずしい者ものの幼おさな子ごを質しちにとる者ものがある。)24:10 彼かれらは着きる物ものがなく、裸はだかで歩あるき、飢うえつつ麦むぎ束たばを運はこび、24:11 悪人あくにんのオリブ並み木きの中なかで油あぶらをしぼり、酒さかぶねを踏ふんでも、かわきを覚おぼえる。24:12 町まちの中なかから死しのうめきが起おこり、傷きずついた者ものの魂たましいが助たすけを呼よび求もとめる。しかし神かみは彼かれらの祈いのりを顧かえりみられない。24:13 光ひかりにそむく者ものたちがある。彼かれらは光ひかりの道みちを知しらず、光ひかりの道みちにとどまらない。24:14 人ひとを殺ころす者ものは暗くらいうちに起おき出でて弱よわい者ものと貧まずしい者ものを殺ころし、夜よるは盗ぬすびととなる。24:15 姦淫かんいんする者ものの目めはたそがれを待まって、『だれもわたしを見みていないだろう』と言いい、顔かおにおおう物ものを当あてる。24:16 彼かれらは暗くらやみで家いえをうがち、昼ひるは閉とじこもって光ひかりを知しらない。24:17 彼かれらには暗黒あんこくは朝あさである。彼かれらは暗黒あんこくの恐おそれを友ともとするからだ。 24:18 あなたがたは言いう、『彼かれらは水みずのおもてにすみやかに流ながれ去さり、その受うける分ぶんは地ちでのろわれ、酒さかぶねを踏ふむ者ものはだれも彼かれらのぶどう畑はたけの道みちに行いかない。24:19 ひでりと熱あつさは雪ゆき水みずを奪うばい去さる、陰府よみが罪つみを犯おかした者ものに対たいするも、これと同様どうようだ。24:20 町まちの広場ひろばは彼かれらを忘わすれ、彼かれらの名なは覚おぼえられることなく、不義ふぎは木きの折おられるように折おられる』と。 24:21 彼かれらは子こを産うまぬうまずめをくらい、やもめをあわれむことをしない。24:22 しかし神かみはその力ちからをもって、強つよい人々ひとびとを生いきながらえさせられる。彼かれらは生いきる望のぞみのない時ときにも起おきあがる。24:23 神かみが彼かれらに安全あんぜんを与あたえられるので、彼かれらは安やすらかである。神かみの目めは彼かれらの道みちの上うえにある。24:24 彼かれらはしばし高たかめられて、いなくなり、ぜにあおいのように枯かれて消きえうせ、麦むぎの穂先ほさきのように切きり取とられる。24:25 もし、そうでないなら、だれがわたしにその偽いつわりを証明しょうめいし、わが言葉ことばのむなしいことを示しめしうるだろうか」。 第25章 25:1 そこでシュヒびとビルダデは答こたえて言いった、 25:2 「大権たいけんと恐おそれとは神かみと共ともにある。彼かれは高たかき所ところで平和へいわを施ほどこされる。25:3 その軍勢ぐんぜいは数かぞえることができるか。何なに物ものかその光ひかりに浴よくさないものがあるか。25:4 それで人ひとはどうして神かみの前まえに正ただしくありえようか。女おんなから生うまれた者ものがどうして清きよくありえようか。25:5 見みよ、月つきさえも輝かがやかず、星ほしも彼かれの目めには清きよくない。25:6 うじのような人ひと、虫むしのような人ひとの子こはなおさらである」。 第26章 26:1 そこでヨブは答こたえて言いった、 26:2 「あなたは力ちからのない者ものをどれほど助たすけたかしれない。気力きりょくのない腕うでをどれほど救すくったかしれない。26:3 知恵ちえのない者ものをどれほど教おしえたかしれない。悟さとりをどれほど多おおく示しめしたかしれない。26:4 あなたはだれの助たすけによって言葉ことばをだしたのか。あなたから出でたのはだれの霊れいなのか。26:5 亡霊ぼうれいは水みずおよびその中なかに住すむものの下したに震ふるう。26:6 神かみの前まえでは陰府よみも裸はだかである。滅ほろびの穴あなもおおい隠かくすものはない。26:7 彼かれは北きたの天てんを空間くうかんに張はり、地ちを何なにもない所ところに掛かけられる。26:8 彼かれは水みずを濃こい雲くもの中なかに包つつまれるが、その下したの雲くもは裂さけない。26:9 彼かれは月つきのおもてをおおい隠かくして、雲くもをその上うえにのべ、26:10 水みずのおもてに円えんを描えがいて、光ひかりとやみとの境さかいとされた。26:11 彼かれが戒いましめると、天てんの柱はしらは震ふるい、かつ驚おどろく。26:12 彼かれはその力ちからをもって海うみを静しずめ、その知恵ちえをもってラハブを打うち砕くだき、26:13 その息いきをもって天てんを晴はれわたらせ、その手てをもって逃にげるへびを突つき通とおされる。26:14 見みよ、これらはただ彼かれの道みちの端はしにすぎない。われわれが彼かれについて聞きく所ところはいかにかすかなささやきであろう。しかし、その力ちからのとどろきに至いたっては、だれが悟さとることができるか」。 第27章 27:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 27:2 「神かみは生いきておられる。彼かれはわたしの義ぎを奪うばい去さられた。全能者ぜんのうしゃはわたしの魂たましいを悩なやまされた。27:3 わたしの息いきがわたしのうちにあり、神かみの息いきがわたしの鼻はなにある間あいだ、27:4 わたしのくちびるは不義ふぎを言いわない、わたしの舌したは偽いつわりを語かたらない。27:5 わたしは断だんじて、あなたがたを正ただしいとは認みとめない。わたしは死しぬまで、潔白けっぱくを主張しゅちょうしてやめない。27:6 わたしは堅かたくわが義ぎを保たもって捨すてない。わたしは今いままで一日にちも心こころに責せめられた事ことがない。 27:7 どうか、わたしの敵てきは悪人あくにんのようになり、わたしに逆さからう者ものは不義ふぎなる者もののようになるように。27:8 神かみが彼かれを断たち、その魂たましいを抜ぬきとられるとき、神かみを信しんじない者ものになんの望のぞみがあろう。27:9 災わざわいが彼かれに臨のぞむとき、神かみはその叫さけびを聞きかれるであろうか。27:10 彼かれは全能者ぜんのうしゃを喜よろこぶであろうか、常つねに神かみを呼よぶであろうか。 27:11 わたしは神かみのみ手てについてあなたがたに教おしえ、全能者ぜんのうしゃと共ともにあるものを隠かくすことをしない。27:12 見みよ、あなたがたは皆みなみずからこれを見みた、それなのに、どうしてむなしい者ものとなったのか。 27:13 これは悪人あくにんの神かみから受うける分ぶん、圧制者あっせいしゃの全能者ぜんのうしゃから受うける嗣し業ぎょうである。27:14 その子こらがふえればつるぎに渡わたされ、その子孫しそんは食物しょくもつに飽あきることがない。27:15 その生いき残のこった者ものは疫病えきびょうで死しんで埋うめられ、そのやもめらは泣なき悲かなしむことをしない。27:16 たとい彼かれは銀ぎんをちりのように積つみ、衣服いふくを土つちのように備そなえても、27:17 その備そなえるものは正ただしい人ひとがこれを着き、その銀ぎんは罪つみなき者ものが分わかち取とるであろう。27:18 彼かれの建たてる家いえは、くもの巣すのようであり、番人ばんにんの つくる小屋こやのようである。27:19 彼かれは富とめる身みで寝ねても、再ふたたび富とむことがなく、目めを開ひらけばその富とみはない。27:20 恐おそろしい事ことが大水おおみずのように彼かれを襲おそい、夜よるはつむじ風かぜが彼かれを奪うばい去さる。27:21 東風ひがしかぜが彼かれを揚あげると、彼かれは去さり、彼かれをその所ところから吹ふき払はらう。27:22 それは彼かれを投なげつけて、あわれむことなく、彼かれはその力ちからからのがれようと、もがく。27:23 それは彼かれに向むかって手てを鳴ならし、あざけり笑わらって、その所ところから出でて行いかせる。 第28章 28:1 しろがねには掘ほり出だす穴あながあり、精錬せいれんするこがねには出でどころがある。28:2 くろがねは土つちから取とり、あかがねは石いしから溶とかして取とる。28:3 人ひとは暗くらやみを破やぶり、いやはてまでも尋たずねきわめて、暗くらやみおよび暗黒あんこくの中なかから鉱石こうせきを取とる。28:4 彼かれらは人ひとの住すむ所ところを離はなれて縦穴たてあなをうがち、道行みちゆく人ひとに忘わすれられ、人ひとを離はなれて身みをつりさげ、揺ゆれ動うごく。28:5 地ちはそこから食物しょくもつを出だす。その下したは火ひでくつがえされるようにくつがえる。28:6 その石いしはサファイヤのある所ところ、そこにはまた金塊きんかいがある。28:7 その道みちは猛禽もうきんも知しらず、たかの目めもこれを見みず、28:8 猛獣もうじゅうもこれを踏ふまず、ししもこれを通とおらなかった。28:9 人ひとは堅かたい岩いわに手てをくだして、山やまを根元ねもとからくつがえす。28:10 彼かれは岩いわに坑道こうどうを掘ほり、その目めはもろもろの尊たっとい物ものを見みる。28:11 彼かれは水路すいろをふさいで、漏もれないようにし、隠かくれた物ものを光ひかりに取とり出だす。 28:12 しかし知恵ちえはどこに見みいだされるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:13 人ひとはそこに至いたる道みちを知しらない、また生いける者ものの地ちでそれを獲えることができない。28:14 淵ふちは言いう、『それはわたしのうちにない』と。また海うみは言いう、『わたしのもとにない』と。28:15 精せい金きんもこれと換かえることはできない。銀ぎんも量はかってその価あたいとすることはできない。28:16 オフルの金きんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。尊たっとい縞しまめのうも、サファイヤも同様どうようである。28:17 こがねも、玻璃はりもこれに並ならぶことができない。また精せい金きんの器物うつわものもこれと換かえることができない。28:18 さんごも水晶すいしょうも言いうに足たりない。知恵ちえを得えるのは真珠しんじゅを得えるのにまさる。28:19 エチオピヤのトパズもこれに並ならぶことができない。純金じゅんきんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。28:20 それでは知恵ちえはどこから来くるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:21 これはすべての生いき物ものの目めに隠かくされ、空そらの鳥とりにも隠かくされている。28:22 滅ほろびも死しも言いう、『われわれはそのうわさを耳みみに聞きいただけだ』。28:23 神かみはこれに至いたる道みちを悟さとっておられる、彼かれはそのある所ところを知しっておられる。28:24 彼かれは地ちの果はてまでもみそなわし、天あめが下したを見みきわめられるからだ。28:25 彼かれが風かぜに重おもさを与あたえ、水みずをますで量はかられたとき、28:26 彼かれが雨あめのために規定きていを設もうけ、雷かみなりのひらめきのために道みちを設もうけられたとき、28:27 彼かれは知恵ちえを見みて、これをあらわし、これを確たしかめ、これをきわめられた。28:28 そして人ひとに言いわれた、『見みよ、主しゅを恐おそれることは知恵ちえである、悪あくを離はなれることは悟さとりである』と」。 第29章 29:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 29:2 「ああ過すぎた年月としつきのようであったらよいのだが、神かみがわたしを守まもってくださった日ひのようであったらよいのだが。29:3 あの時ときには、彼かれのともしびがわたしの頭あたまの上うえに輝かがやき、彼かれの光ひかりによってわたしは暗くらやみを歩あゆんだ。29:4 わたしの盛さかんな時ときのようであったならよいのだが。あの時ときには、神かみの親したしみがわたしの天幕てんまくの上うえにあった。29:5 あの時ときには、全能者ぜんのうしゃがなおわたしと共ともにいまし、わたしの子供こどもたちもわたしの周囲しゅういにいた。29:6 あの時とき、わたしの足跡あしあとは乳ちちで洗あらわれ、岩いわもわたしのために油あぶらの流ながれを注そそぎだした。29:7 あの時ときには、わたしは町まちの門もんに出でて行いき、わたしの座ざを広場ひろばに設もうけた。29:8 若わかい者ものはわたしを見みてしりぞき、老おいた者ものは身みをおこして立たち、29:9 君きみたる者ものも物言ものいうことをやめて、その口くちに手てを当あて、29:10 尊たっとい者ものも声こえをおさめて、その舌したを上うえあごにつけた。29:11 耳みみに聞きいた者ものはわたしを祝福しゅくふくされた者ものとなし、目めに見みた者ものはこれをあかしした。29:12 これは助たすけを求もとめる貧まずしい者ものを救すくい、また、みなしごおよび助たすける人ひとのない者ものを救すくったからである。29:13 今いまにも滅ほろびようとした者ものの祝福しゅくふくがわたしに来きた。わたしはまたやもめの心こころをして喜よろこび歌うたわせた。29:14 わたしは正義せいぎを着き、正義せいぎはわたしをおおった。わたしの公義こうぎは上着うわぎのごとく、また冠かんむりのようであった。29:15 わたしは目めしいの目めとなり、足あしなえの足あしとなり、29:16 貧まずしい者ものの父ちちとなり、知しらない人ひとの訴うったえの理由りゆうを調しらべてやった。29:17 わたしはまた悪あしき者もののきばを折おり、その歯はの間あいだから獲物えものを引ひき出だした。29:18 その時とき、わたしは言いった、『わたしは自分じぶんの巣すの中なかで死しに、わたしの日ひは砂すなのように多おおくなるであろう。29:19 わたしの根ねは水みずのほとりにはびこり、露つゆは夜よもすがらわたしの枝えだにおくであろう。29:20 わたしの栄さかえはわたしと共ともに新あたらしく、わたしの弓ゆみはわたしの手てにいつも強つよい』と。 29:21 人々ひとびとはわたしに聞きいて待まち、黙もくして、わたしの教おしえに従したがった。29:22 わたしが言いった後のちは彼かれらは再ふたたび言いわなかった。わたしの言葉ことばは彼かれらの上うえに雨あめのように降ふりそそいだ。29:23 彼かれらは雨あめを待まつように、わたしを待まち望のぞみ、春はるの雨あめを仰あおぐように口くちを開ひらいて仰あおいだ。29:24 彼かれらが希望きぼうを失うしなった時ときにも、わたしは彼かれらにむかってほほえんだ。彼かれらはわたしの顔かおの光ひかりを除のぞくことができなかった。29:25 わたしは彼かれらのために道みちを選えらび、そのかしらとして座ざし、軍中ぐんちゅうの王おうのようにしており、嘆なげく者ものを慰なぐさめる人ひとのようであった。 第30章 30:1 しかし今いまはわたしよりも年とし若わかい者ものが、かえってわたしをあざ笑わらう。彼かれらの父ちちはわたしが卑いやしめて、群むれの犬いぬと一緒いっしょにさえしなかった者ものだ。30:2 彼かれらの手ての力ちからからわたしは何なにを得えるであろうか、彼かれらはその気力きりょくがすでに衰おとろえた人々ひとびとだ。30:3 彼かれらは乏とぼしさと激はげしい飢うえとによって、かわいた荒あれ地ちをかむ。30:4 彼かれらは、ぜにあおいおよび灌木かんぼくの葉はを摘つみ、れだまの根ねをもって身みを暖あたためる。30:5 彼かれらは人々ひとびとの中なかから追おいだされ、盗ぬすびとを追おうように、人々ひとびとは彼かれらを追おい呼よばわる。30:6 彼かれらは急流きゅうりゅうの谷間たにまに住すみ、土つちの穴あなまたは岩いわの穴あなにおり、30:7 灌木かんぼくの中なかにいななき、いらくさの下したに押おし合あう。30:8 彼かれらは愚おろかな者ものの子こ、また卑いやしい者ものの子こであって、国くにから追おいだされた者ものだ。 30:9 それなのに、わたしは今いま彼かれらの歌うたとなり、彼かれらの笑わらい草ぐさとなった。30:10 彼かれらはわたしをいとい、遠とおくわたしをはなれ、わたしの顔かおにつばきすることも、ためらわない。30:11 神かみがわたしの綱つなを解といて、わたしを卑いやしめられたので、彼かれらもわたしの前まえに慎つつしみを捨すてた。30:12 このともがらはわたしの右みぎに立たち上あがり、わたしを追おいのけ、わたしにむかって滅ほろびの道みちを築きずく。30:13 彼かれらはわたしの道みちをこわし、わたしの災わざわいを促うながす。これをさし止とめる者ものはない。30:14 彼かれらは広ひろい破やぶれ口くちからはいるように進すすみきたり、破壊はかいの中なかをおし寄よせる。30:15 恐おそろしい事ことはわたしに臨のぞみ、わたしの誉ほまれは風かぜのように吹ふき払はらわれ、わたしの繁栄はんえいは雲くものように消きえうせた。 30:16 今いまは、わたしの魂たましいはわたしの内うちにとけて流ながれ、悩なやみの日ひはわたしを捕とらえた。30:17 夜よるはわたしの骨ほねを激はげしく悩なやまし、わたしをかむ苦くるしみは、やむことがない。30:18 それは暴力ぼうりょくをもって、わたしの着物きものを捕とらえ、はだ着ぎのえりのように、わたしをしめつける。30:19 神かみがわたしを泥どろの中なかに投なげ入いれられたので、わたしはちり灰はいのようになった。30:20 わたしがあなたにむかって呼よばわっても、あなたは答こたえられない。わたしが立たっていても、あなたは顧かえりみられない。30:21 あなたは変かわって、わたしに無情むじょうな者ものとなり、み手ての力ちからをもってわたしを攻せめ悩なやまされる。30:22 あなたはわたしを揚あげて風かぜの上うえに乗のせ、大風おおかぜのうなり声こえの中なかに、もませられる。30:23 わたしは知しっている、あなたはわたしを死しに帰かえらせ、すべての生いき物ものの集あつまる家いえに帰かえらせられることを。 30:24 さりながら荒塚あらつかの中なかにある者ものは、手てを伸のべないであろうか、災わざわいの中なかにある者ものは助たすけを呼よび求もとめないであろうか。30:25 わたしは苦くるしい日ひを送おくる者もののために泣なかなかったか。わたしの魂たましいは貧まずしい人ひとのために悲かなしまなかったか。30:26 しかしわたしが幸さいわいを望のぞんだのに災わざわいが来きた。光ひかりを待まち望のぞんだのにやみが来きた。30:27 わたしのはらわたは沸わきかえって、静しずまらない。悩なやみの日ひがわたしに近ちかづいた。30:28 わたしは日ひの光ひかりによらずに黒くろくなって歩あるき、公会こうかいの中なかに立たって助たすけを呼よび求もとめる。30:29 わたしは山犬やまいぬの兄弟きょうだいとなり、だちょうの友ともとなった。30:30 わたしの皮膚ひふは黒くろくなって、はげ落おち、わたしの骨ほねは熱あつさによって燃もえ、30:31 わたしの琴ことは悲かなしみの音ねとなり、わたしの笛ふえは泣なく者ものの声こえとなった。 第31章 31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。 第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
24:1 なにゆえ、全能者ぜんのうしゃはさばきの時ときを定さだめておかれないのか。なにゆえ、彼かれを知しる者ものがその日ひを見みないのか。
24:2 世よには地境じざかいを移うつす者もの、群むれを奪うばってそれを飼かう者もの、
24:3 みなしごのろばを追おいやる者もの、やもめの牛うしを質しちに取とる者もの、
24:4 貧まずしい者ものを道みちから押おしのける者ものがある。世よの弱よわい者ものは皆みな彼かれらをさけて身みをかくす。
24:5 見みよ、彼かれらは荒野あらのにおる野のろばのように出でて働はたらき、野ので獲物えものを求もとめて、その子こらの食物しょくもつとする。
24:6 彼かれらは畑はたけでそのまぐさを刈かり、また悪人あくにんのぶどう畑はたけで拾ひろい集あつめる。
24:7 彼かれらは着きる物ものがなく、裸はだかで夜よるを過すごし、寒さむさに身みをおおうべき物ものもない。
24:8 彼かれらは山やまの雨あめにぬれ、しのぎ場ばもなく岩いわにすがる。
24:9 (みなしごをその母ははのふところから奪うばい、貧まずしい者ものの幼おさな子ごを質しちにとる者ものがある。)
24:10 彼かれらは着きる物ものがなく、裸はだかで歩あるき、飢うえつつ麦むぎ束たばを運はこび、
24:11 悪人あくにんのオリブ並み木きの中なかで油あぶらをしぼり、酒さかぶねを踏ふんでも、かわきを覚おぼえる。
24:12 町まちの中なかから死しのうめきが起おこり、傷きずついた者ものの魂たましいが助たすけを呼よび求もとめる。しかし神かみは彼かれらの祈いのりを顧かえりみられない。
24:13 光ひかりにそむく者ものたちがある。彼かれらは光ひかりの道みちを知しらず、光ひかりの道みちにとどまらない。
24:14 人ひとを殺ころす者ものは暗くらいうちに起おき出でて弱よわい者ものと貧まずしい者ものを殺ころし、夜よるは盗ぬすびととなる。
24:15 姦淫かんいんする者ものの目めはたそがれを待まって、『だれもわたしを見みていないだろう』と言いい、顔かおにおおう物ものを当あてる。
24:16 彼かれらは暗くらやみで家いえをうがち、昼ひるは閉とじこもって光ひかりを知しらない。
24:17 彼かれらには暗黒あんこくは朝あさである。彼かれらは暗黒あんこくの恐おそれを友ともとするからだ。
24:18 あなたがたは言いう、『彼かれらは水みずのおもてにすみやかに流ながれ去さり、その受うける分ぶんは地ちでのろわれ、酒さかぶねを踏ふむ者ものはだれも彼かれらのぶどう畑はたけの道みちに行いかない。
24:19 ひでりと熱あつさは雪ゆき水みずを奪うばい去さる、陰府よみが罪つみを犯おかした者ものに対たいするも、これと同様どうようだ。
24:20 町まちの広場ひろばは彼かれらを忘わすれ、彼かれらの名なは覚おぼえられることなく、不義ふぎは木きの折おられるように折おられる』と。
24:21 彼かれらは子こを産うまぬうまずめをくらい、やもめをあわれむことをしない。
24:22 しかし神かみはその力ちからをもって、強つよい人々ひとびとを生いきながらえさせられる。彼かれらは生いきる望のぞみのない時ときにも起おきあがる。
24:23 神かみが彼かれらに安全あんぜんを与あたえられるので、彼かれらは安やすらかである。神かみの目めは彼かれらの道みちの上うえにある。
24:24 彼かれらはしばし高たかめられて、いなくなり、ぜにあおいのように枯かれて消きえうせ、麦むぎの穂先ほさきのように切きり取とられる。
24:25 もし、そうでないなら、だれがわたしにその偽いつわりを証明しょうめいし、わが言葉ことばのむなしいことを示しめしうるだろうか」。
第25章 25:1 そこでシュヒびとビルダデは答こたえて言いった、 25:2 「大権たいけんと恐おそれとは神かみと共ともにある。彼かれは高たかき所ところで平和へいわを施ほどこされる。25:3 その軍勢ぐんぜいは数かぞえることができるか。何なに物ものかその光ひかりに浴よくさないものがあるか。25:4 それで人ひとはどうして神かみの前まえに正ただしくありえようか。女おんなから生うまれた者ものがどうして清きよくありえようか。25:5 見みよ、月つきさえも輝かがやかず、星ほしも彼かれの目めには清きよくない。25:6 うじのような人ひと、虫むしのような人ひとの子こはなおさらである」。 第26章 26:1 そこでヨブは答こたえて言いった、 26:2 「あなたは力ちからのない者ものをどれほど助たすけたかしれない。気力きりょくのない腕うでをどれほど救すくったかしれない。26:3 知恵ちえのない者ものをどれほど教おしえたかしれない。悟さとりをどれほど多おおく示しめしたかしれない。26:4 あなたはだれの助たすけによって言葉ことばをだしたのか。あなたから出でたのはだれの霊れいなのか。26:5 亡霊ぼうれいは水みずおよびその中なかに住すむものの下したに震ふるう。26:6 神かみの前まえでは陰府よみも裸はだかである。滅ほろびの穴あなもおおい隠かくすものはない。26:7 彼かれは北きたの天てんを空間くうかんに張はり、地ちを何なにもない所ところに掛かけられる。26:8 彼かれは水みずを濃こい雲くもの中なかに包つつまれるが、その下したの雲くもは裂さけない。26:9 彼かれは月つきのおもてをおおい隠かくして、雲くもをその上うえにのべ、26:10 水みずのおもてに円えんを描えがいて、光ひかりとやみとの境さかいとされた。26:11 彼かれが戒いましめると、天てんの柱はしらは震ふるい、かつ驚おどろく。26:12 彼かれはその力ちからをもって海うみを静しずめ、その知恵ちえをもってラハブを打うち砕くだき、26:13 その息いきをもって天てんを晴はれわたらせ、その手てをもって逃にげるへびを突つき通とおされる。26:14 見みよ、これらはただ彼かれの道みちの端はしにすぎない。われわれが彼かれについて聞きく所ところはいかにかすかなささやきであろう。しかし、その力ちからのとどろきに至いたっては、だれが悟さとることができるか」。 第27章 27:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 27:2 「神かみは生いきておられる。彼かれはわたしの義ぎを奪うばい去さられた。全能者ぜんのうしゃはわたしの魂たましいを悩なやまされた。27:3 わたしの息いきがわたしのうちにあり、神かみの息いきがわたしの鼻はなにある間あいだ、27:4 わたしのくちびるは不義ふぎを言いわない、わたしの舌したは偽いつわりを語かたらない。27:5 わたしは断だんじて、あなたがたを正ただしいとは認みとめない。わたしは死しぬまで、潔白けっぱくを主張しゅちょうしてやめない。27:6 わたしは堅かたくわが義ぎを保たもって捨すてない。わたしは今いままで一日にちも心こころに責せめられた事ことがない。 27:7 どうか、わたしの敵てきは悪人あくにんのようになり、わたしに逆さからう者ものは不義ふぎなる者もののようになるように。27:8 神かみが彼かれを断たち、その魂たましいを抜ぬきとられるとき、神かみを信しんじない者ものになんの望のぞみがあろう。27:9 災わざわいが彼かれに臨のぞむとき、神かみはその叫さけびを聞きかれるであろうか。27:10 彼かれは全能者ぜんのうしゃを喜よろこぶであろうか、常つねに神かみを呼よぶであろうか。 27:11 わたしは神かみのみ手てについてあなたがたに教おしえ、全能者ぜんのうしゃと共ともにあるものを隠かくすことをしない。27:12 見みよ、あなたがたは皆みなみずからこれを見みた、それなのに、どうしてむなしい者ものとなったのか。 27:13 これは悪人あくにんの神かみから受うける分ぶん、圧制者あっせいしゃの全能者ぜんのうしゃから受うける嗣し業ぎょうである。27:14 その子こらがふえればつるぎに渡わたされ、その子孫しそんは食物しょくもつに飽あきることがない。27:15 その生いき残のこった者ものは疫病えきびょうで死しんで埋うめられ、そのやもめらは泣なき悲かなしむことをしない。27:16 たとい彼かれは銀ぎんをちりのように積つみ、衣服いふくを土つちのように備そなえても、27:17 その備そなえるものは正ただしい人ひとがこれを着き、その銀ぎんは罪つみなき者ものが分わかち取とるであろう。27:18 彼かれの建たてる家いえは、くもの巣すのようであり、番人ばんにんの つくる小屋こやのようである。27:19 彼かれは富とめる身みで寝ねても、再ふたたび富とむことがなく、目めを開ひらけばその富とみはない。27:20 恐おそろしい事ことが大水おおみずのように彼かれを襲おそい、夜よるはつむじ風かぜが彼かれを奪うばい去さる。27:21 東風ひがしかぜが彼かれを揚あげると、彼かれは去さり、彼かれをその所ところから吹ふき払はらう。27:22 それは彼かれを投なげつけて、あわれむことなく、彼かれはその力ちからからのがれようと、もがく。27:23 それは彼かれに向むかって手てを鳴ならし、あざけり笑わらって、その所ところから出でて行いかせる。 第28章 28:1 しろがねには掘ほり出だす穴あながあり、精錬せいれんするこがねには出でどころがある。28:2 くろがねは土つちから取とり、あかがねは石いしから溶とかして取とる。28:3 人ひとは暗くらやみを破やぶり、いやはてまでも尋たずねきわめて、暗くらやみおよび暗黒あんこくの中なかから鉱石こうせきを取とる。28:4 彼かれらは人ひとの住すむ所ところを離はなれて縦穴たてあなをうがち、道行みちゆく人ひとに忘わすれられ、人ひとを離はなれて身みをつりさげ、揺ゆれ動うごく。28:5 地ちはそこから食物しょくもつを出だす。その下したは火ひでくつがえされるようにくつがえる。28:6 その石いしはサファイヤのある所ところ、そこにはまた金塊きんかいがある。28:7 その道みちは猛禽もうきんも知しらず、たかの目めもこれを見みず、28:8 猛獣もうじゅうもこれを踏ふまず、ししもこれを通とおらなかった。28:9 人ひとは堅かたい岩いわに手てをくだして、山やまを根元ねもとからくつがえす。28:10 彼かれは岩いわに坑道こうどうを掘ほり、その目めはもろもろの尊たっとい物ものを見みる。28:11 彼かれは水路すいろをふさいで、漏もれないようにし、隠かくれた物ものを光ひかりに取とり出だす。 28:12 しかし知恵ちえはどこに見みいだされるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:13 人ひとはそこに至いたる道みちを知しらない、また生いける者ものの地ちでそれを獲えることができない。28:14 淵ふちは言いう、『それはわたしのうちにない』と。また海うみは言いう、『わたしのもとにない』と。28:15 精せい金きんもこれと換かえることはできない。銀ぎんも量はかってその価あたいとすることはできない。28:16 オフルの金きんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。尊たっとい縞しまめのうも、サファイヤも同様どうようである。28:17 こがねも、玻璃はりもこれに並ならぶことができない。また精せい金きんの器物うつわものもこれと換かえることができない。28:18 さんごも水晶すいしょうも言いうに足たりない。知恵ちえを得えるのは真珠しんじゅを得えるのにまさる。28:19 エチオピヤのトパズもこれに並ならぶことができない。純金じゅんきんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。28:20 それでは知恵ちえはどこから来くるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:21 これはすべての生いき物ものの目めに隠かくされ、空そらの鳥とりにも隠かくされている。28:22 滅ほろびも死しも言いう、『われわれはそのうわさを耳みみに聞きいただけだ』。28:23 神かみはこれに至いたる道みちを悟さとっておられる、彼かれはそのある所ところを知しっておられる。28:24 彼かれは地ちの果はてまでもみそなわし、天あめが下したを見みきわめられるからだ。28:25 彼かれが風かぜに重おもさを与あたえ、水みずをますで量はかられたとき、28:26 彼かれが雨あめのために規定きていを設もうけ、雷かみなりのひらめきのために道みちを設もうけられたとき、28:27 彼かれは知恵ちえを見みて、これをあらわし、これを確たしかめ、これをきわめられた。28:28 そして人ひとに言いわれた、『見みよ、主しゅを恐おそれることは知恵ちえである、悪あくを離はなれることは悟さとりである』と」。 第29章 29:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 29:2 「ああ過すぎた年月としつきのようであったらよいのだが、神かみがわたしを守まもってくださった日ひのようであったらよいのだが。29:3 あの時ときには、彼かれのともしびがわたしの頭あたまの上うえに輝かがやき、彼かれの光ひかりによってわたしは暗くらやみを歩あゆんだ。29:4 わたしの盛さかんな時ときのようであったならよいのだが。あの時ときには、神かみの親したしみがわたしの天幕てんまくの上うえにあった。29:5 あの時ときには、全能者ぜんのうしゃがなおわたしと共ともにいまし、わたしの子供こどもたちもわたしの周囲しゅういにいた。29:6 あの時とき、わたしの足跡あしあとは乳ちちで洗あらわれ、岩いわもわたしのために油あぶらの流ながれを注そそぎだした。29:7 あの時ときには、わたしは町まちの門もんに出でて行いき、わたしの座ざを広場ひろばに設もうけた。29:8 若わかい者ものはわたしを見みてしりぞき、老おいた者ものは身みをおこして立たち、29:9 君きみたる者ものも物言ものいうことをやめて、その口くちに手てを当あて、29:10 尊たっとい者ものも声こえをおさめて、その舌したを上うえあごにつけた。29:11 耳みみに聞きいた者ものはわたしを祝福しゅくふくされた者ものとなし、目めに見みた者ものはこれをあかしした。29:12 これは助たすけを求もとめる貧まずしい者ものを救すくい、また、みなしごおよび助たすける人ひとのない者ものを救すくったからである。29:13 今いまにも滅ほろびようとした者ものの祝福しゅくふくがわたしに来きた。わたしはまたやもめの心こころをして喜よろこび歌うたわせた。29:14 わたしは正義せいぎを着き、正義せいぎはわたしをおおった。わたしの公義こうぎは上着うわぎのごとく、また冠かんむりのようであった。29:15 わたしは目めしいの目めとなり、足あしなえの足あしとなり、29:16 貧まずしい者ものの父ちちとなり、知しらない人ひとの訴うったえの理由りゆうを調しらべてやった。29:17 わたしはまた悪あしき者もののきばを折おり、その歯はの間あいだから獲物えものを引ひき出だした。29:18 その時とき、わたしは言いった、『わたしは自分じぶんの巣すの中なかで死しに、わたしの日ひは砂すなのように多おおくなるであろう。29:19 わたしの根ねは水みずのほとりにはびこり、露つゆは夜よもすがらわたしの枝えだにおくであろう。29:20 わたしの栄さかえはわたしと共ともに新あたらしく、わたしの弓ゆみはわたしの手てにいつも強つよい』と。 29:21 人々ひとびとはわたしに聞きいて待まち、黙もくして、わたしの教おしえに従したがった。29:22 わたしが言いった後のちは彼かれらは再ふたたび言いわなかった。わたしの言葉ことばは彼かれらの上うえに雨あめのように降ふりそそいだ。29:23 彼かれらは雨あめを待まつように、わたしを待まち望のぞみ、春はるの雨あめを仰あおぐように口くちを開ひらいて仰あおいだ。29:24 彼かれらが希望きぼうを失うしなった時ときにも、わたしは彼かれらにむかってほほえんだ。彼かれらはわたしの顔かおの光ひかりを除のぞくことができなかった。29:25 わたしは彼かれらのために道みちを選えらび、そのかしらとして座ざし、軍中ぐんちゅうの王おうのようにしており、嘆なげく者ものを慰なぐさめる人ひとのようであった。 第30章 30:1 しかし今いまはわたしよりも年とし若わかい者ものが、かえってわたしをあざ笑わらう。彼かれらの父ちちはわたしが卑いやしめて、群むれの犬いぬと一緒いっしょにさえしなかった者ものだ。30:2 彼かれらの手ての力ちからからわたしは何なにを得えるであろうか、彼かれらはその気力きりょくがすでに衰おとろえた人々ひとびとだ。30:3 彼かれらは乏とぼしさと激はげしい飢うえとによって、かわいた荒あれ地ちをかむ。30:4 彼かれらは、ぜにあおいおよび灌木かんぼくの葉はを摘つみ、れだまの根ねをもって身みを暖あたためる。30:5 彼かれらは人々ひとびとの中なかから追おいだされ、盗ぬすびとを追おうように、人々ひとびとは彼かれらを追おい呼よばわる。30:6 彼かれらは急流きゅうりゅうの谷間たにまに住すみ、土つちの穴あなまたは岩いわの穴あなにおり、30:7 灌木かんぼくの中なかにいななき、いらくさの下したに押おし合あう。30:8 彼かれらは愚おろかな者ものの子こ、また卑いやしい者ものの子こであって、国くにから追おいだされた者ものだ。 30:9 それなのに、わたしは今いま彼かれらの歌うたとなり、彼かれらの笑わらい草ぐさとなった。30:10 彼かれらはわたしをいとい、遠とおくわたしをはなれ、わたしの顔かおにつばきすることも、ためらわない。30:11 神かみがわたしの綱つなを解といて、わたしを卑いやしめられたので、彼かれらもわたしの前まえに慎つつしみを捨すてた。30:12 このともがらはわたしの右みぎに立たち上あがり、わたしを追おいのけ、わたしにむかって滅ほろびの道みちを築きずく。30:13 彼かれらはわたしの道みちをこわし、わたしの災わざわいを促うながす。これをさし止とめる者ものはない。30:14 彼かれらは広ひろい破やぶれ口くちからはいるように進すすみきたり、破壊はかいの中なかをおし寄よせる。30:15 恐おそろしい事ことはわたしに臨のぞみ、わたしの誉ほまれは風かぜのように吹ふき払はらわれ、わたしの繁栄はんえいは雲くものように消きえうせた。 30:16 今いまは、わたしの魂たましいはわたしの内うちにとけて流ながれ、悩なやみの日ひはわたしを捕とらえた。30:17 夜よるはわたしの骨ほねを激はげしく悩なやまし、わたしをかむ苦くるしみは、やむことがない。30:18 それは暴力ぼうりょくをもって、わたしの着物きものを捕とらえ、はだ着ぎのえりのように、わたしをしめつける。30:19 神かみがわたしを泥どろの中なかに投なげ入いれられたので、わたしはちり灰はいのようになった。30:20 わたしがあなたにむかって呼よばわっても、あなたは答こたえられない。わたしが立たっていても、あなたは顧かえりみられない。30:21 あなたは変かわって、わたしに無情むじょうな者ものとなり、み手ての力ちからをもってわたしを攻せめ悩なやまされる。30:22 あなたはわたしを揚あげて風かぜの上うえに乗のせ、大風おおかぜのうなり声こえの中なかに、もませられる。30:23 わたしは知しっている、あなたはわたしを死しに帰かえらせ、すべての生いき物ものの集あつまる家いえに帰かえらせられることを。 30:24 さりながら荒塚あらつかの中なかにある者ものは、手てを伸のべないであろうか、災わざわいの中なかにある者ものは助たすけを呼よび求もとめないであろうか。30:25 わたしは苦くるしい日ひを送おくる者もののために泣なかなかったか。わたしの魂たましいは貧まずしい人ひとのために悲かなしまなかったか。30:26 しかしわたしが幸さいわいを望のぞんだのに災わざわいが来きた。光ひかりを待まち望のぞんだのにやみが来きた。30:27 わたしのはらわたは沸わきかえって、静しずまらない。悩なやみの日ひがわたしに近ちかづいた。30:28 わたしは日ひの光ひかりによらずに黒くろくなって歩あるき、公会こうかいの中なかに立たって助たすけを呼よび求もとめる。30:29 わたしは山犬やまいぬの兄弟きょうだいとなり、だちょうの友ともとなった。30:30 わたしの皮膚ひふは黒くろくなって、はげ落おち、わたしの骨ほねは熱あつさによって燃もえ、30:31 わたしの琴ことは悲かなしみの音ねとなり、わたしの笛ふえは泣なく者ものの声こえとなった。 第31章 31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。 第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
25:1 そこでシュヒびとビルダデは答こたえて言いった、
25:2 「大権たいけんと恐おそれとは神かみと共ともにある。彼かれは高たかき所ところで平和へいわを施ほどこされる。
25:3 その軍勢ぐんぜいは数かぞえることができるか。何なに物ものかその光ひかりに浴よくさないものがあるか。
25:4 それで人ひとはどうして神かみの前まえに正ただしくありえようか。女おんなから生うまれた者ものがどうして清きよくありえようか。
25:5 見みよ、月つきさえも輝かがやかず、星ほしも彼かれの目めには清きよくない。
25:6 うじのような人ひと、虫むしのような人ひとの子こはなおさらである」。
第26章 26:1 そこでヨブは答こたえて言いった、 26:2 「あなたは力ちからのない者ものをどれほど助たすけたかしれない。気力きりょくのない腕うでをどれほど救すくったかしれない。26:3 知恵ちえのない者ものをどれほど教おしえたかしれない。悟さとりをどれほど多おおく示しめしたかしれない。26:4 あなたはだれの助たすけによって言葉ことばをだしたのか。あなたから出でたのはだれの霊れいなのか。26:5 亡霊ぼうれいは水みずおよびその中なかに住すむものの下したに震ふるう。26:6 神かみの前まえでは陰府よみも裸はだかである。滅ほろびの穴あなもおおい隠かくすものはない。26:7 彼かれは北きたの天てんを空間くうかんに張はり、地ちを何なにもない所ところに掛かけられる。26:8 彼かれは水みずを濃こい雲くもの中なかに包つつまれるが、その下したの雲くもは裂さけない。26:9 彼かれは月つきのおもてをおおい隠かくして、雲くもをその上うえにのべ、26:10 水みずのおもてに円えんを描えがいて、光ひかりとやみとの境さかいとされた。26:11 彼かれが戒いましめると、天てんの柱はしらは震ふるい、かつ驚おどろく。26:12 彼かれはその力ちからをもって海うみを静しずめ、その知恵ちえをもってラハブを打うち砕くだき、26:13 その息いきをもって天てんを晴はれわたらせ、その手てをもって逃にげるへびを突つき通とおされる。26:14 見みよ、これらはただ彼かれの道みちの端はしにすぎない。われわれが彼かれについて聞きく所ところはいかにかすかなささやきであろう。しかし、その力ちからのとどろきに至いたっては、だれが悟さとることができるか」。 第27章 27:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 27:2 「神かみは生いきておられる。彼かれはわたしの義ぎを奪うばい去さられた。全能者ぜんのうしゃはわたしの魂たましいを悩なやまされた。27:3 わたしの息いきがわたしのうちにあり、神かみの息いきがわたしの鼻はなにある間あいだ、27:4 わたしのくちびるは不義ふぎを言いわない、わたしの舌したは偽いつわりを語かたらない。27:5 わたしは断だんじて、あなたがたを正ただしいとは認みとめない。わたしは死しぬまで、潔白けっぱくを主張しゅちょうしてやめない。27:6 わたしは堅かたくわが義ぎを保たもって捨すてない。わたしは今いままで一日にちも心こころに責せめられた事ことがない。 27:7 どうか、わたしの敵てきは悪人あくにんのようになり、わたしに逆さからう者ものは不義ふぎなる者もののようになるように。27:8 神かみが彼かれを断たち、その魂たましいを抜ぬきとられるとき、神かみを信しんじない者ものになんの望のぞみがあろう。27:9 災わざわいが彼かれに臨のぞむとき、神かみはその叫さけびを聞きかれるであろうか。27:10 彼かれは全能者ぜんのうしゃを喜よろこぶであろうか、常つねに神かみを呼よぶであろうか。 27:11 わたしは神かみのみ手てについてあなたがたに教おしえ、全能者ぜんのうしゃと共ともにあるものを隠かくすことをしない。27:12 見みよ、あなたがたは皆みなみずからこれを見みた、それなのに、どうしてむなしい者ものとなったのか。 27:13 これは悪人あくにんの神かみから受うける分ぶん、圧制者あっせいしゃの全能者ぜんのうしゃから受うける嗣し業ぎょうである。27:14 その子こらがふえればつるぎに渡わたされ、その子孫しそんは食物しょくもつに飽あきることがない。27:15 その生いき残のこった者ものは疫病えきびょうで死しんで埋うめられ、そのやもめらは泣なき悲かなしむことをしない。27:16 たとい彼かれは銀ぎんをちりのように積つみ、衣服いふくを土つちのように備そなえても、27:17 その備そなえるものは正ただしい人ひとがこれを着き、その銀ぎんは罪つみなき者ものが分わかち取とるであろう。27:18 彼かれの建たてる家いえは、くもの巣すのようであり、番人ばんにんの つくる小屋こやのようである。27:19 彼かれは富とめる身みで寝ねても、再ふたたび富とむことがなく、目めを開ひらけばその富とみはない。27:20 恐おそろしい事ことが大水おおみずのように彼かれを襲おそい、夜よるはつむじ風かぜが彼かれを奪うばい去さる。27:21 東風ひがしかぜが彼かれを揚あげると、彼かれは去さり、彼かれをその所ところから吹ふき払はらう。27:22 それは彼かれを投なげつけて、あわれむことなく、彼かれはその力ちからからのがれようと、もがく。27:23 それは彼かれに向むかって手てを鳴ならし、あざけり笑わらって、その所ところから出でて行いかせる。 第28章 28:1 しろがねには掘ほり出だす穴あながあり、精錬せいれんするこがねには出でどころがある。28:2 くろがねは土つちから取とり、あかがねは石いしから溶とかして取とる。28:3 人ひとは暗くらやみを破やぶり、いやはてまでも尋たずねきわめて、暗くらやみおよび暗黒あんこくの中なかから鉱石こうせきを取とる。28:4 彼かれらは人ひとの住すむ所ところを離はなれて縦穴たてあなをうがち、道行みちゆく人ひとに忘わすれられ、人ひとを離はなれて身みをつりさげ、揺ゆれ動うごく。28:5 地ちはそこから食物しょくもつを出だす。その下したは火ひでくつがえされるようにくつがえる。28:6 その石いしはサファイヤのある所ところ、そこにはまた金塊きんかいがある。28:7 その道みちは猛禽もうきんも知しらず、たかの目めもこれを見みず、28:8 猛獣もうじゅうもこれを踏ふまず、ししもこれを通とおらなかった。28:9 人ひとは堅かたい岩いわに手てをくだして、山やまを根元ねもとからくつがえす。28:10 彼かれは岩いわに坑道こうどうを掘ほり、その目めはもろもろの尊たっとい物ものを見みる。28:11 彼かれは水路すいろをふさいで、漏もれないようにし、隠かくれた物ものを光ひかりに取とり出だす。 28:12 しかし知恵ちえはどこに見みいだされるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:13 人ひとはそこに至いたる道みちを知しらない、また生いける者ものの地ちでそれを獲えることができない。28:14 淵ふちは言いう、『それはわたしのうちにない』と。また海うみは言いう、『わたしのもとにない』と。28:15 精せい金きんもこれと換かえることはできない。銀ぎんも量はかってその価あたいとすることはできない。28:16 オフルの金きんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。尊たっとい縞しまめのうも、サファイヤも同様どうようである。28:17 こがねも、玻璃はりもこれに並ならぶことができない。また精せい金きんの器物うつわものもこれと換かえることができない。28:18 さんごも水晶すいしょうも言いうに足たりない。知恵ちえを得えるのは真珠しんじゅを得えるのにまさる。28:19 エチオピヤのトパズもこれに並ならぶことができない。純金じゅんきんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。28:20 それでは知恵ちえはどこから来くるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:21 これはすべての生いき物ものの目めに隠かくされ、空そらの鳥とりにも隠かくされている。28:22 滅ほろびも死しも言いう、『われわれはそのうわさを耳みみに聞きいただけだ』。28:23 神かみはこれに至いたる道みちを悟さとっておられる、彼かれはそのある所ところを知しっておられる。28:24 彼かれは地ちの果はてまでもみそなわし、天あめが下したを見みきわめられるからだ。28:25 彼かれが風かぜに重おもさを与あたえ、水みずをますで量はかられたとき、28:26 彼かれが雨あめのために規定きていを設もうけ、雷かみなりのひらめきのために道みちを設もうけられたとき、28:27 彼かれは知恵ちえを見みて、これをあらわし、これを確たしかめ、これをきわめられた。28:28 そして人ひとに言いわれた、『見みよ、主しゅを恐おそれることは知恵ちえである、悪あくを離はなれることは悟さとりである』と」。 第29章 29:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 29:2 「ああ過すぎた年月としつきのようであったらよいのだが、神かみがわたしを守まもってくださった日ひのようであったらよいのだが。29:3 あの時ときには、彼かれのともしびがわたしの頭あたまの上うえに輝かがやき、彼かれの光ひかりによってわたしは暗くらやみを歩あゆんだ。29:4 わたしの盛さかんな時ときのようであったならよいのだが。あの時ときには、神かみの親したしみがわたしの天幕てんまくの上うえにあった。29:5 あの時ときには、全能者ぜんのうしゃがなおわたしと共ともにいまし、わたしの子供こどもたちもわたしの周囲しゅういにいた。29:6 あの時とき、わたしの足跡あしあとは乳ちちで洗あらわれ、岩いわもわたしのために油あぶらの流ながれを注そそぎだした。29:7 あの時ときには、わたしは町まちの門もんに出でて行いき、わたしの座ざを広場ひろばに設もうけた。29:8 若わかい者ものはわたしを見みてしりぞき、老おいた者ものは身みをおこして立たち、29:9 君きみたる者ものも物言ものいうことをやめて、その口くちに手てを当あて、29:10 尊たっとい者ものも声こえをおさめて、その舌したを上うえあごにつけた。29:11 耳みみに聞きいた者ものはわたしを祝福しゅくふくされた者ものとなし、目めに見みた者ものはこれをあかしした。29:12 これは助たすけを求もとめる貧まずしい者ものを救すくい、また、みなしごおよび助たすける人ひとのない者ものを救すくったからである。29:13 今いまにも滅ほろびようとした者ものの祝福しゅくふくがわたしに来きた。わたしはまたやもめの心こころをして喜よろこび歌うたわせた。29:14 わたしは正義せいぎを着き、正義せいぎはわたしをおおった。わたしの公義こうぎは上着うわぎのごとく、また冠かんむりのようであった。29:15 わたしは目めしいの目めとなり、足あしなえの足あしとなり、29:16 貧まずしい者ものの父ちちとなり、知しらない人ひとの訴うったえの理由りゆうを調しらべてやった。29:17 わたしはまた悪あしき者もののきばを折おり、その歯はの間あいだから獲物えものを引ひき出だした。29:18 その時とき、わたしは言いった、『わたしは自分じぶんの巣すの中なかで死しに、わたしの日ひは砂すなのように多おおくなるであろう。29:19 わたしの根ねは水みずのほとりにはびこり、露つゆは夜よもすがらわたしの枝えだにおくであろう。29:20 わたしの栄さかえはわたしと共ともに新あたらしく、わたしの弓ゆみはわたしの手てにいつも強つよい』と。 29:21 人々ひとびとはわたしに聞きいて待まち、黙もくして、わたしの教おしえに従したがった。29:22 わたしが言いった後のちは彼かれらは再ふたたび言いわなかった。わたしの言葉ことばは彼かれらの上うえに雨あめのように降ふりそそいだ。29:23 彼かれらは雨あめを待まつように、わたしを待まち望のぞみ、春はるの雨あめを仰あおぐように口くちを開ひらいて仰あおいだ。29:24 彼かれらが希望きぼうを失うしなった時ときにも、わたしは彼かれらにむかってほほえんだ。彼かれらはわたしの顔かおの光ひかりを除のぞくことができなかった。29:25 わたしは彼かれらのために道みちを選えらび、そのかしらとして座ざし、軍中ぐんちゅうの王おうのようにしており、嘆なげく者ものを慰なぐさめる人ひとのようであった。 第30章 30:1 しかし今いまはわたしよりも年とし若わかい者ものが、かえってわたしをあざ笑わらう。彼かれらの父ちちはわたしが卑いやしめて、群むれの犬いぬと一緒いっしょにさえしなかった者ものだ。30:2 彼かれらの手ての力ちからからわたしは何なにを得えるであろうか、彼かれらはその気力きりょくがすでに衰おとろえた人々ひとびとだ。30:3 彼かれらは乏とぼしさと激はげしい飢うえとによって、かわいた荒あれ地ちをかむ。30:4 彼かれらは、ぜにあおいおよび灌木かんぼくの葉はを摘つみ、れだまの根ねをもって身みを暖あたためる。30:5 彼かれらは人々ひとびとの中なかから追おいだされ、盗ぬすびとを追おうように、人々ひとびとは彼かれらを追おい呼よばわる。30:6 彼かれらは急流きゅうりゅうの谷間たにまに住すみ、土つちの穴あなまたは岩いわの穴あなにおり、30:7 灌木かんぼくの中なかにいななき、いらくさの下したに押おし合あう。30:8 彼かれらは愚おろかな者ものの子こ、また卑いやしい者ものの子こであって、国くにから追おいだされた者ものだ。 30:9 それなのに、わたしは今いま彼かれらの歌うたとなり、彼かれらの笑わらい草ぐさとなった。30:10 彼かれらはわたしをいとい、遠とおくわたしをはなれ、わたしの顔かおにつばきすることも、ためらわない。30:11 神かみがわたしの綱つなを解といて、わたしを卑いやしめられたので、彼かれらもわたしの前まえに慎つつしみを捨すてた。30:12 このともがらはわたしの右みぎに立たち上あがり、わたしを追おいのけ、わたしにむかって滅ほろびの道みちを築きずく。30:13 彼かれらはわたしの道みちをこわし、わたしの災わざわいを促うながす。これをさし止とめる者ものはない。30:14 彼かれらは広ひろい破やぶれ口くちからはいるように進すすみきたり、破壊はかいの中なかをおし寄よせる。30:15 恐おそろしい事ことはわたしに臨のぞみ、わたしの誉ほまれは風かぜのように吹ふき払はらわれ、わたしの繁栄はんえいは雲くものように消きえうせた。 30:16 今いまは、わたしの魂たましいはわたしの内うちにとけて流ながれ、悩なやみの日ひはわたしを捕とらえた。30:17 夜よるはわたしの骨ほねを激はげしく悩なやまし、わたしをかむ苦くるしみは、やむことがない。30:18 それは暴力ぼうりょくをもって、わたしの着物きものを捕とらえ、はだ着ぎのえりのように、わたしをしめつける。30:19 神かみがわたしを泥どろの中なかに投なげ入いれられたので、わたしはちり灰はいのようになった。30:20 わたしがあなたにむかって呼よばわっても、あなたは答こたえられない。わたしが立たっていても、あなたは顧かえりみられない。30:21 あなたは変かわって、わたしに無情むじょうな者ものとなり、み手ての力ちからをもってわたしを攻せめ悩なやまされる。30:22 あなたはわたしを揚あげて風かぜの上うえに乗のせ、大風おおかぜのうなり声こえの中なかに、もませられる。30:23 わたしは知しっている、あなたはわたしを死しに帰かえらせ、すべての生いき物ものの集あつまる家いえに帰かえらせられることを。 30:24 さりながら荒塚あらつかの中なかにある者ものは、手てを伸のべないであろうか、災わざわいの中なかにある者ものは助たすけを呼よび求もとめないであろうか。30:25 わたしは苦くるしい日ひを送おくる者もののために泣なかなかったか。わたしの魂たましいは貧まずしい人ひとのために悲かなしまなかったか。30:26 しかしわたしが幸さいわいを望のぞんだのに災わざわいが来きた。光ひかりを待まち望のぞんだのにやみが来きた。30:27 わたしのはらわたは沸わきかえって、静しずまらない。悩なやみの日ひがわたしに近ちかづいた。30:28 わたしは日ひの光ひかりによらずに黒くろくなって歩あるき、公会こうかいの中なかに立たって助たすけを呼よび求もとめる。30:29 わたしは山犬やまいぬの兄弟きょうだいとなり、だちょうの友ともとなった。30:30 わたしの皮膚ひふは黒くろくなって、はげ落おち、わたしの骨ほねは熱あつさによって燃もえ、30:31 わたしの琴ことは悲かなしみの音ねとなり、わたしの笛ふえは泣なく者ものの声こえとなった。 第31章 31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。 第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
26:1 そこでヨブは答こたえて言いった、
26:2 「あなたは力ちからのない者ものをどれほど助たすけたかしれない。気力きりょくのない腕うでをどれほど救すくったかしれない。
26:3 知恵ちえのない者ものをどれほど教おしえたかしれない。悟さとりをどれほど多おおく示しめしたかしれない。
26:4 あなたはだれの助たすけによって言葉ことばをだしたのか。あなたから出でたのはだれの霊れいなのか。
26:5 亡霊ぼうれいは水みずおよびその中なかに住すむものの下したに震ふるう。
26:6 神かみの前まえでは陰府よみも裸はだかである。滅ほろびの穴あなもおおい隠かくすものはない。
26:7 彼かれは北きたの天てんを空間くうかんに張はり、地ちを何なにもない所ところに掛かけられる。
26:8 彼かれは水みずを濃こい雲くもの中なかに包つつまれるが、その下したの雲くもは裂さけない。
26:9 彼かれは月つきのおもてをおおい隠かくして、雲くもをその上うえにのべ、
26:10 水みずのおもてに円えんを描えがいて、光ひかりとやみとの境さかいとされた。
26:11 彼かれが戒いましめると、天てんの柱はしらは震ふるい、かつ驚おどろく。
26:12 彼かれはその力ちからをもって海うみを静しずめ、その知恵ちえをもってラハブを打うち砕くだき、
26:13 その息いきをもって天てんを晴はれわたらせ、その手てをもって逃にげるへびを突つき通とおされる。
26:14 見みよ、これらはただ彼かれの道みちの端はしにすぎない。われわれが彼かれについて聞きく所ところはいかにかすかなささやきであろう。しかし、その力ちからのとどろきに至いたっては、だれが悟さとることができるか」。
第27章 27:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 27:2 「神かみは生いきておられる。彼かれはわたしの義ぎを奪うばい去さられた。全能者ぜんのうしゃはわたしの魂たましいを悩なやまされた。27:3 わたしの息いきがわたしのうちにあり、神かみの息いきがわたしの鼻はなにある間あいだ、27:4 わたしのくちびるは不義ふぎを言いわない、わたしの舌したは偽いつわりを語かたらない。27:5 わたしは断だんじて、あなたがたを正ただしいとは認みとめない。わたしは死しぬまで、潔白けっぱくを主張しゅちょうしてやめない。27:6 わたしは堅かたくわが義ぎを保たもって捨すてない。わたしは今いままで一日にちも心こころに責せめられた事ことがない。 27:7 どうか、わたしの敵てきは悪人あくにんのようになり、わたしに逆さからう者ものは不義ふぎなる者もののようになるように。27:8 神かみが彼かれを断たち、その魂たましいを抜ぬきとられるとき、神かみを信しんじない者ものになんの望のぞみがあろう。27:9 災わざわいが彼かれに臨のぞむとき、神かみはその叫さけびを聞きかれるであろうか。27:10 彼かれは全能者ぜんのうしゃを喜よろこぶであろうか、常つねに神かみを呼よぶであろうか。 27:11 わたしは神かみのみ手てについてあなたがたに教おしえ、全能者ぜんのうしゃと共ともにあるものを隠かくすことをしない。27:12 見みよ、あなたがたは皆みなみずからこれを見みた、それなのに、どうしてむなしい者ものとなったのか。 27:13 これは悪人あくにんの神かみから受うける分ぶん、圧制者あっせいしゃの全能者ぜんのうしゃから受うける嗣し業ぎょうである。27:14 その子こらがふえればつるぎに渡わたされ、その子孫しそんは食物しょくもつに飽あきることがない。27:15 その生いき残のこった者ものは疫病えきびょうで死しんで埋うめられ、そのやもめらは泣なき悲かなしむことをしない。27:16 たとい彼かれは銀ぎんをちりのように積つみ、衣服いふくを土つちのように備そなえても、27:17 その備そなえるものは正ただしい人ひとがこれを着き、その銀ぎんは罪つみなき者ものが分わかち取とるであろう。27:18 彼かれの建たてる家いえは、くもの巣すのようであり、番人ばんにんの つくる小屋こやのようである。27:19 彼かれは富とめる身みで寝ねても、再ふたたび富とむことがなく、目めを開ひらけばその富とみはない。27:20 恐おそろしい事ことが大水おおみずのように彼かれを襲おそい、夜よるはつむじ風かぜが彼かれを奪うばい去さる。27:21 東風ひがしかぜが彼かれを揚あげると、彼かれは去さり、彼かれをその所ところから吹ふき払はらう。27:22 それは彼かれを投なげつけて、あわれむことなく、彼かれはその力ちからからのがれようと、もがく。27:23 それは彼かれに向むかって手てを鳴ならし、あざけり笑わらって、その所ところから出でて行いかせる。 第28章 28:1 しろがねには掘ほり出だす穴あながあり、精錬せいれんするこがねには出でどころがある。28:2 くろがねは土つちから取とり、あかがねは石いしから溶とかして取とる。28:3 人ひとは暗くらやみを破やぶり、いやはてまでも尋たずねきわめて、暗くらやみおよび暗黒あんこくの中なかから鉱石こうせきを取とる。28:4 彼かれらは人ひとの住すむ所ところを離はなれて縦穴たてあなをうがち、道行みちゆく人ひとに忘わすれられ、人ひとを離はなれて身みをつりさげ、揺ゆれ動うごく。28:5 地ちはそこから食物しょくもつを出だす。その下したは火ひでくつがえされるようにくつがえる。28:6 その石いしはサファイヤのある所ところ、そこにはまた金塊きんかいがある。28:7 その道みちは猛禽もうきんも知しらず、たかの目めもこれを見みず、28:8 猛獣もうじゅうもこれを踏ふまず、ししもこれを通とおらなかった。28:9 人ひとは堅かたい岩いわに手てをくだして、山やまを根元ねもとからくつがえす。28:10 彼かれは岩いわに坑道こうどうを掘ほり、その目めはもろもろの尊たっとい物ものを見みる。28:11 彼かれは水路すいろをふさいで、漏もれないようにし、隠かくれた物ものを光ひかりに取とり出だす。 28:12 しかし知恵ちえはどこに見みいだされるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:13 人ひとはそこに至いたる道みちを知しらない、また生いける者ものの地ちでそれを獲えることができない。28:14 淵ふちは言いう、『それはわたしのうちにない』と。また海うみは言いう、『わたしのもとにない』と。28:15 精せい金きんもこれと換かえることはできない。銀ぎんも量はかってその価あたいとすることはできない。28:16 オフルの金きんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。尊たっとい縞しまめのうも、サファイヤも同様どうようである。28:17 こがねも、玻璃はりもこれに並ならぶことができない。また精せい金きんの器物うつわものもこれと換かえることができない。28:18 さんごも水晶すいしょうも言いうに足たりない。知恵ちえを得えるのは真珠しんじゅを得えるのにまさる。28:19 エチオピヤのトパズもこれに並ならぶことができない。純金じゅんきんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。28:20 それでは知恵ちえはどこから来くるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:21 これはすべての生いき物ものの目めに隠かくされ、空そらの鳥とりにも隠かくされている。28:22 滅ほろびも死しも言いう、『われわれはそのうわさを耳みみに聞きいただけだ』。28:23 神かみはこれに至いたる道みちを悟さとっておられる、彼かれはそのある所ところを知しっておられる。28:24 彼かれは地ちの果はてまでもみそなわし、天あめが下したを見みきわめられるからだ。28:25 彼かれが風かぜに重おもさを与あたえ、水みずをますで量はかられたとき、28:26 彼かれが雨あめのために規定きていを設もうけ、雷かみなりのひらめきのために道みちを設もうけられたとき、28:27 彼かれは知恵ちえを見みて、これをあらわし、これを確たしかめ、これをきわめられた。28:28 そして人ひとに言いわれた、『見みよ、主しゅを恐おそれることは知恵ちえである、悪あくを離はなれることは悟さとりである』と」。 第29章 29:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 29:2 「ああ過すぎた年月としつきのようであったらよいのだが、神かみがわたしを守まもってくださった日ひのようであったらよいのだが。29:3 あの時ときには、彼かれのともしびがわたしの頭あたまの上うえに輝かがやき、彼かれの光ひかりによってわたしは暗くらやみを歩あゆんだ。29:4 わたしの盛さかんな時ときのようであったならよいのだが。あの時ときには、神かみの親したしみがわたしの天幕てんまくの上うえにあった。29:5 あの時ときには、全能者ぜんのうしゃがなおわたしと共ともにいまし、わたしの子供こどもたちもわたしの周囲しゅういにいた。29:6 あの時とき、わたしの足跡あしあとは乳ちちで洗あらわれ、岩いわもわたしのために油あぶらの流ながれを注そそぎだした。29:7 あの時ときには、わたしは町まちの門もんに出でて行いき、わたしの座ざを広場ひろばに設もうけた。29:8 若わかい者ものはわたしを見みてしりぞき、老おいた者ものは身みをおこして立たち、29:9 君きみたる者ものも物言ものいうことをやめて、その口くちに手てを当あて、29:10 尊たっとい者ものも声こえをおさめて、その舌したを上うえあごにつけた。29:11 耳みみに聞きいた者ものはわたしを祝福しゅくふくされた者ものとなし、目めに見みた者ものはこれをあかしした。29:12 これは助たすけを求もとめる貧まずしい者ものを救すくい、また、みなしごおよび助たすける人ひとのない者ものを救すくったからである。29:13 今いまにも滅ほろびようとした者ものの祝福しゅくふくがわたしに来きた。わたしはまたやもめの心こころをして喜よろこび歌うたわせた。29:14 わたしは正義せいぎを着き、正義せいぎはわたしをおおった。わたしの公義こうぎは上着うわぎのごとく、また冠かんむりのようであった。29:15 わたしは目めしいの目めとなり、足あしなえの足あしとなり、29:16 貧まずしい者ものの父ちちとなり、知しらない人ひとの訴うったえの理由りゆうを調しらべてやった。29:17 わたしはまた悪あしき者もののきばを折おり、その歯はの間あいだから獲物えものを引ひき出だした。29:18 その時とき、わたしは言いった、『わたしは自分じぶんの巣すの中なかで死しに、わたしの日ひは砂すなのように多おおくなるであろう。29:19 わたしの根ねは水みずのほとりにはびこり、露つゆは夜よもすがらわたしの枝えだにおくであろう。29:20 わたしの栄さかえはわたしと共ともに新あたらしく、わたしの弓ゆみはわたしの手てにいつも強つよい』と。 29:21 人々ひとびとはわたしに聞きいて待まち、黙もくして、わたしの教おしえに従したがった。29:22 わたしが言いった後のちは彼かれらは再ふたたび言いわなかった。わたしの言葉ことばは彼かれらの上うえに雨あめのように降ふりそそいだ。29:23 彼かれらは雨あめを待まつように、わたしを待まち望のぞみ、春はるの雨あめを仰あおぐように口くちを開ひらいて仰あおいだ。29:24 彼かれらが希望きぼうを失うしなった時ときにも、わたしは彼かれらにむかってほほえんだ。彼かれらはわたしの顔かおの光ひかりを除のぞくことができなかった。29:25 わたしは彼かれらのために道みちを選えらび、そのかしらとして座ざし、軍中ぐんちゅうの王おうのようにしており、嘆なげく者ものを慰なぐさめる人ひとのようであった。 第30章 30:1 しかし今いまはわたしよりも年とし若わかい者ものが、かえってわたしをあざ笑わらう。彼かれらの父ちちはわたしが卑いやしめて、群むれの犬いぬと一緒いっしょにさえしなかった者ものだ。30:2 彼かれらの手ての力ちからからわたしは何なにを得えるであろうか、彼かれらはその気力きりょくがすでに衰おとろえた人々ひとびとだ。30:3 彼かれらは乏とぼしさと激はげしい飢うえとによって、かわいた荒あれ地ちをかむ。30:4 彼かれらは、ぜにあおいおよび灌木かんぼくの葉はを摘つみ、れだまの根ねをもって身みを暖あたためる。30:5 彼かれらは人々ひとびとの中なかから追おいだされ、盗ぬすびとを追おうように、人々ひとびとは彼かれらを追おい呼よばわる。30:6 彼かれらは急流きゅうりゅうの谷間たにまに住すみ、土つちの穴あなまたは岩いわの穴あなにおり、30:7 灌木かんぼくの中なかにいななき、いらくさの下したに押おし合あう。30:8 彼かれらは愚おろかな者ものの子こ、また卑いやしい者ものの子こであって、国くにから追おいだされた者ものだ。 30:9 それなのに、わたしは今いま彼かれらの歌うたとなり、彼かれらの笑わらい草ぐさとなった。30:10 彼かれらはわたしをいとい、遠とおくわたしをはなれ、わたしの顔かおにつばきすることも、ためらわない。30:11 神かみがわたしの綱つなを解といて、わたしを卑いやしめられたので、彼かれらもわたしの前まえに慎つつしみを捨すてた。30:12 このともがらはわたしの右みぎに立たち上あがり、わたしを追おいのけ、わたしにむかって滅ほろびの道みちを築きずく。30:13 彼かれらはわたしの道みちをこわし、わたしの災わざわいを促うながす。これをさし止とめる者ものはない。30:14 彼かれらは広ひろい破やぶれ口くちからはいるように進すすみきたり、破壊はかいの中なかをおし寄よせる。30:15 恐おそろしい事ことはわたしに臨のぞみ、わたしの誉ほまれは風かぜのように吹ふき払はらわれ、わたしの繁栄はんえいは雲くものように消きえうせた。 30:16 今いまは、わたしの魂たましいはわたしの内うちにとけて流ながれ、悩なやみの日ひはわたしを捕とらえた。30:17 夜よるはわたしの骨ほねを激はげしく悩なやまし、わたしをかむ苦くるしみは、やむことがない。30:18 それは暴力ぼうりょくをもって、わたしの着物きものを捕とらえ、はだ着ぎのえりのように、わたしをしめつける。30:19 神かみがわたしを泥どろの中なかに投なげ入いれられたので、わたしはちり灰はいのようになった。30:20 わたしがあなたにむかって呼よばわっても、あなたは答こたえられない。わたしが立たっていても、あなたは顧かえりみられない。30:21 あなたは変かわって、わたしに無情むじょうな者ものとなり、み手ての力ちからをもってわたしを攻せめ悩なやまされる。30:22 あなたはわたしを揚あげて風かぜの上うえに乗のせ、大風おおかぜのうなり声こえの中なかに、もませられる。30:23 わたしは知しっている、あなたはわたしを死しに帰かえらせ、すべての生いき物ものの集あつまる家いえに帰かえらせられることを。 30:24 さりながら荒塚あらつかの中なかにある者ものは、手てを伸のべないであろうか、災わざわいの中なかにある者ものは助たすけを呼よび求もとめないであろうか。30:25 わたしは苦くるしい日ひを送おくる者もののために泣なかなかったか。わたしの魂たましいは貧まずしい人ひとのために悲かなしまなかったか。30:26 しかしわたしが幸さいわいを望のぞんだのに災わざわいが来きた。光ひかりを待まち望のぞんだのにやみが来きた。30:27 わたしのはらわたは沸わきかえって、静しずまらない。悩なやみの日ひがわたしに近ちかづいた。30:28 わたしは日ひの光ひかりによらずに黒くろくなって歩あるき、公会こうかいの中なかに立たって助たすけを呼よび求もとめる。30:29 わたしは山犬やまいぬの兄弟きょうだいとなり、だちょうの友ともとなった。30:30 わたしの皮膚ひふは黒くろくなって、はげ落おち、わたしの骨ほねは熱あつさによって燃もえ、30:31 わたしの琴ことは悲かなしみの音ねとなり、わたしの笛ふえは泣なく者ものの声こえとなった。 第31章 31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。 第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
27:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、
27:2 「神かみは生いきておられる。彼かれはわたしの義ぎを奪うばい去さられた。全能者ぜんのうしゃはわたしの魂たましいを悩なやまされた。
27:3 わたしの息いきがわたしのうちにあり、神かみの息いきがわたしの鼻はなにある間あいだ、
27:4 わたしのくちびるは不義ふぎを言いわない、わたしの舌したは偽いつわりを語かたらない。
27:5 わたしは断だんじて、あなたがたを正ただしいとは認みとめない。わたしは死しぬまで、潔白けっぱくを主張しゅちょうしてやめない。
27:6 わたしは堅かたくわが義ぎを保たもって捨すてない。わたしは今いままで一日にちも心こころに責せめられた事ことがない。
27:7 どうか、わたしの敵てきは悪人あくにんのようになり、わたしに逆さからう者ものは不義ふぎなる者もののようになるように。
27:8 神かみが彼かれを断たち、その魂たましいを抜ぬきとられるとき、神かみを信しんじない者ものになんの望のぞみがあろう。
27:9 災わざわいが彼かれに臨のぞむとき、神かみはその叫さけびを聞きかれるであろうか。
27:10 彼かれは全能者ぜんのうしゃを喜よろこぶであろうか、常つねに神かみを呼よぶであろうか。
27:11 わたしは神かみのみ手てについてあなたがたに教おしえ、全能者ぜんのうしゃと共ともにあるものを隠かくすことをしない。
27:12 見みよ、あなたがたは皆みなみずからこれを見みた、それなのに、どうしてむなしい者ものとなったのか。
27:13 これは悪人あくにんの神かみから受うける分ぶん、圧制者あっせいしゃの全能者ぜんのうしゃから受うける嗣し業ぎょうである。
27:14 その子こらがふえればつるぎに渡わたされ、その子孫しそんは食物しょくもつに飽あきることがない。
27:15 その生いき残のこった者ものは疫病えきびょうで死しんで埋うめられ、そのやもめらは泣なき悲かなしむことをしない。
27:16 たとい彼かれは銀ぎんをちりのように積つみ、衣服いふくを土つちのように備そなえても、
27:17 その備そなえるものは正ただしい人ひとがこれを着き、その銀ぎんは罪つみなき者ものが分わかち取とるであろう。
27:18 彼かれの建たてる家いえは、くもの巣すのようであり、番人ばんにんの つくる小屋こやのようである。
27:19 彼かれは富とめる身みで寝ねても、再ふたたび富とむことがなく、目めを開ひらけばその富とみはない。
27:20 恐おそろしい事ことが大水おおみずのように彼かれを襲おそい、夜よるはつむじ風かぜが彼かれを奪うばい去さる。
27:21 東風ひがしかぜが彼かれを揚あげると、彼かれは去さり、彼かれをその所ところから吹ふき払はらう。
27:22 それは彼かれを投なげつけて、あわれむことなく、彼かれはその力ちからからのがれようと、もがく。
27:23 それは彼かれに向むかって手てを鳴ならし、あざけり笑わらって、その所ところから出でて行いかせる。
第28章 28:1 しろがねには掘ほり出だす穴あながあり、精錬せいれんするこがねには出でどころがある。28:2 くろがねは土つちから取とり、あかがねは石いしから溶とかして取とる。28:3 人ひとは暗くらやみを破やぶり、いやはてまでも尋たずねきわめて、暗くらやみおよび暗黒あんこくの中なかから鉱石こうせきを取とる。28:4 彼かれらは人ひとの住すむ所ところを離はなれて縦穴たてあなをうがち、道行みちゆく人ひとに忘わすれられ、人ひとを離はなれて身みをつりさげ、揺ゆれ動うごく。28:5 地ちはそこから食物しょくもつを出だす。その下したは火ひでくつがえされるようにくつがえる。28:6 その石いしはサファイヤのある所ところ、そこにはまた金塊きんかいがある。28:7 その道みちは猛禽もうきんも知しらず、たかの目めもこれを見みず、28:8 猛獣もうじゅうもこれを踏ふまず、ししもこれを通とおらなかった。28:9 人ひとは堅かたい岩いわに手てをくだして、山やまを根元ねもとからくつがえす。28:10 彼かれは岩いわに坑道こうどうを掘ほり、その目めはもろもろの尊たっとい物ものを見みる。28:11 彼かれは水路すいろをふさいで、漏もれないようにし、隠かくれた物ものを光ひかりに取とり出だす。 28:12 しかし知恵ちえはどこに見みいだされるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:13 人ひとはそこに至いたる道みちを知しらない、また生いける者ものの地ちでそれを獲えることができない。28:14 淵ふちは言いう、『それはわたしのうちにない』と。また海うみは言いう、『わたしのもとにない』と。28:15 精せい金きんもこれと換かえることはできない。銀ぎんも量はかってその価あたいとすることはできない。28:16 オフルの金きんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。尊たっとい縞しまめのうも、サファイヤも同様どうようである。28:17 こがねも、玻璃はりもこれに並ならぶことができない。また精せい金きんの器物うつわものもこれと換かえることができない。28:18 さんごも水晶すいしょうも言いうに足たりない。知恵ちえを得えるのは真珠しんじゅを得えるのにまさる。28:19 エチオピヤのトパズもこれに並ならぶことができない。純金じゅんきんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。28:20 それでは知恵ちえはどこから来くるか。悟さとりのある所ところはどこか。28:21 これはすべての生いき物ものの目めに隠かくされ、空そらの鳥とりにも隠かくされている。28:22 滅ほろびも死しも言いう、『われわれはそのうわさを耳みみに聞きいただけだ』。28:23 神かみはこれに至いたる道みちを悟さとっておられる、彼かれはそのある所ところを知しっておられる。28:24 彼かれは地ちの果はてまでもみそなわし、天あめが下したを見みきわめられるからだ。28:25 彼かれが風かぜに重おもさを与あたえ、水みずをますで量はかられたとき、28:26 彼かれが雨あめのために規定きていを設もうけ、雷かみなりのひらめきのために道みちを設もうけられたとき、28:27 彼かれは知恵ちえを見みて、これをあらわし、これを確たしかめ、これをきわめられた。28:28 そして人ひとに言いわれた、『見みよ、主しゅを恐おそれることは知恵ちえである、悪あくを離はなれることは悟さとりである』と」。 第29章 29:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 29:2 「ああ過すぎた年月としつきのようであったらよいのだが、神かみがわたしを守まもってくださった日ひのようであったらよいのだが。29:3 あの時ときには、彼かれのともしびがわたしの頭あたまの上うえに輝かがやき、彼かれの光ひかりによってわたしは暗くらやみを歩あゆんだ。29:4 わたしの盛さかんな時ときのようであったならよいのだが。あの時ときには、神かみの親したしみがわたしの天幕てんまくの上うえにあった。29:5 あの時ときには、全能者ぜんのうしゃがなおわたしと共ともにいまし、わたしの子供こどもたちもわたしの周囲しゅういにいた。29:6 あの時とき、わたしの足跡あしあとは乳ちちで洗あらわれ、岩いわもわたしのために油あぶらの流ながれを注そそぎだした。29:7 あの時ときには、わたしは町まちの門もんに出でて行いき、わたしの座ざを広場ひろばに設もうけた。29:8 若わかい者ものはわたしを見みてしりぞき、老おいた者ものは身みをおこして立たち、29:9 君きみたる者ものも物言ものいうことをやめて、その口くちに手てを当あて、29:10 尊たっとい者ものも声こえをおさめて、その舌したを上うえあごにつけた。29:11 耳みみに聞きいた者ものはわたしを祝福しゅくふくされた者ものとなし、目めに見みた者ものはこれをあかしした。29:12 これは助たすけを求もとめる貧まずしい者ものを救すくい、また、みなしごおよび助たすける人ひとのない者ものを救すくったからである。29:13 今いまにも滅ほろびようとした者ものの祝福しゅくふくがわたしに来きた。わたしはまたやもめの心こころをして喜よろこび歌うたわせた。29:14 わたしは正義せいぎを着き、正義せいぎはわたしをおおった。わたしの公義こうぎは上着うわぎのごとく、また冠かんむりのようであった。29:15 わたしは目めしいの目めとなり、足あしなえの足あしとなり、29:16 貧まずしい者ものの父ちちとなり、知しらない人ひとの訴うったえの理由りゆうを調しらべてやった。29:17 わたしはまた悪あしき者もののきばを折おり、その歯はの間あいだから獲物えものを引ひき出だした。29:18 その時とき、わたしは言いった、『わたしは自分じぶんの巣すの中なかで死しに、わたしの日ひは砂すなのように多おおくなるであろう。29:19 わたしの根ねは水みずのほとりにはびこり、露つゆは夜よもすがらわたしの枝えだにおくであろう。29:20 わたしの栄さかえはわたしと共ともに新あたらしく、わたしの弓ゆみはわたしの手てにいつも強つよい』と。 29:21 人々ひとびとはわたしに聞きいて待まち、黙もくして、わたしの教おしえに従したがった。29:22 わたしが言いった後のちは彼かれらは再ふたたび言いわなかった。わたしの言葉ことばは彼かれらの上うえに雨あめのように降ふりそそいだ。29:23 彼かれらは雨あめを待まつように、わたしを待まち望のぞみ、春はるの雨あめを仰あおぐように口くちを開ひらいて仰あおいだ。29:24 彼かれらが希望きぼうを失うしなった時ときにも、わたしは彼かれらにむかってほほえんだ。彼かれらはわたしの顔かおの光ひかりを除のぞくことができなかった。29:25 わたしは彼かれらのために道みちを選えらび、そのかしらとして座ざし、軍中ぐんちゅうの王おうのようにしており、嘆なげく者ものを慰なぐさめる人ひとのようであった。 第30章 30:1 しかし今いまはわたしよりも年とし若わかい者ものが、かえってわたしをあざ笑わらう。彼かれらの父ちちはわたしが卑いやしめて、群むれの犬いぬと一緒いっしょにさえしなかった者ものだ。30:2 彼かれらの手ての力ちからからわたしは何なにを得えるであろうか、彼かれらはその気力きりょくがすでに衰おとろえた人々ひとびとだ。30:3 彼かれらは乏とぼしさと激はげしい飢うえとによって、かわいた荒あれ地ちをかむ。30:4 彼かれらは、ぜにあおいおよび灌木かんぼくの葉はを摘つみ、れだまの根ねをもって身みを暖あたためる。30:5 彼かれらは人々ひとびとの中なかから追おいだされ、盗ぬすびとを追おうように、人々ひとびとは彼かれらを追おい呼よばわる。30:6 彼かれらは急流きゅうりゅうの谷間たにまに住すみ、土つちの穴あなまたは岩いわの穴あなにおり、30:7 灌木かんぼくの中なかにいななき、いらくさの下したに押おし合あう。30:8 彼かれらは愚おろかな者ものの子こ、また卑いやしい者ものの子こであって、国くにから追おいだされた者ものだ。 30:9 それなのに、わたしは今いま彼かれらの歌うたとなり、彼かれらの笑わらい草ぐさとなった。30:10 彼かれらはわたしをいとい、遠とおくわたしをはなれ、わたしの顔かおにつばきすることも、ためらわない。30:11 神かみがわたしの綱つなを解といて、わたしを卑いやしめられたので、彼かれらもわたしの前まえに慎つつしみを捨すてた。30:12 このともがらはわたしの右みぎに立たち上あがり、わたしを追おいのけ、わたしにむかって滅ほろびの道みちを築きずく。30:13 彼かれらはわたしの道みちをこわし、わたしの災わざわいを促うながす。これをさし止とめる者ものはない。30:14 彼かれらは広ひろい破やぶれ口くちからはいるように進すすみきたり、破壊はかいの中なかをおし寄よせる。30:15 恐おそろしい事ことはわたしに臨のぞみ、わたしの誉ほまれは風かぜのように吹ふき払はらわれ、わたしの繁栄はんえいは雲くものように消きえうせた。 30:16 今いまは、わたしの魂たましいはわたしの内うちにとけて流ながれ、悩なやみの日ひはわたしを捕とらえた。30:17 夜よるはわたしの骨ほねを激はげしく悩なやまし、わたしをかむ苦くるしみは、やむことがない。30:18 それは暴力ぼうりょくをもって、わたしの着物きものを捕とらえ、はだ着ぎのえりのように、わたしをしめつける。30:19 神かみがわたしを泥どろの中なかに投なげ入いれられたので、わたしはちり灰はいのようになった。30:20 わたしがあなたにむかって呼よばわっても、あなたは答こたえられない。わたしが立たっていても、あなたは顧かえりみられない。30:21 あなたは変かわって、わたしに無情むじょうな者ものとなり、み手ての力ちからをもってわたしを攻せめ悩なやまされる。30:22 あなたはわたしを揚あげて風かぜの上うえに乗のせ、大風おおかぜのうなり声こえの中なかに、もませられる。30:23 わたしは知しっている、あなたはわたしを死しに帰かえらせ、すべての生いき物ものの集あつまる家いえに帰かえらせられることを。 30:24 さりながら荒塚あらつかの中なかにある者ものは、手てを伸のべないであろうか、災わざわいの中なかにある者ものは助たすけを呼よび求もとめないであろうか。30:25 わたしは苦くるしい日ひを送おくる者もののために泣なかなかったか。わたしの魂たましいは貧まずしい人ひとのために悲かなしまなかったか。30:26 しかしわたしが幸さいわいを望のぞんだのに災わざわいが来きた。光ひかりを待まち望のぞんだのにやみが来きた。30:27 わたしのはらわたは沸わきかえって、静しずまらない。悩なやみの日ひがわたしに近ちかづいた。30:28 わたしは日ひの光ひかりによらずに黒くろくなって歩あるき、公会こうかいの中なかに立たって助たすけを呼よび求もとめる。30:29 わたしは山犬やまいぬの兄弟きょうだいとなり、だちょうの友ともとなった。30:30 わたしの皮膚ひふは黒くろくなって、はげ落おち、わたしの骨ほねは熱あつさによって燃もえ、30:31 わたしの琴ことは悲かなしみの音ねとなり、わたしの笛ふえは泣なく者ものの声こえとなった。 第31章 31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。 第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
28:1 しろがねには掘ほり出だす穴あながあり、精錬せいれんするこがねには出でどころがある。
28:2 くろがねは土つちから取とり、あかがねは石いしから溶とかして取とる。
28:3 人ひとは暗くらやみを破やぶり、いやはてまでも尋たずねきわめて、暗くらやみおよび暗黒あんこくの中なかから鉱石こうせきを取とる。
28:4 彼かれらは人ひとの住すむ所ところを離はなれて縦穴たてあなをうがち、道行みちゆく人ひとに忘わすれられ、人ひとを離はなれて身みをつりさげ、揺ゆれ動うごく。
28:5 地ちはそこから食物しょくもつを出だす。その下したは火ひでくつがえされるようにくつがえる。
28:6 その石いしはサファイヤのある所ところ、そこにはまた金塊きんかいがある。
28:7 その道みちは猛禽もうきんも知しらず、たかの目めもこれを見みず、
28:8 猛獣もうじゅうもこれを踏ふまず、ししもこれを通とおらなかった。
28:9 人ひとは堅かたい岩いわに手てをくだして、山やまを根元ねもとからくつがえす。
28:10 彼かれは岩いわに坑道こうどうを掘ほり、その目めはもろもろの尊たっとい物ものを見みる。
28:11 彼かれは水路すいろをふさいで、漏もれないようにし、隠かくれた物ものを光ひかりに取とり出だす。
28:12 しかし知恵ちえはどこに見みいだされるか。悟さとりのある所ところはどこか。
28:13 人ひとはそこに至いたる道みちを知しらない、また生いける者ものの地ちでそれを獲えることができない。
28:14 淵ふちは言いう、『それはわたしのうちにない』と。また海うみは言いう、『わたしのもとにない』と。
28:15 精せい金きんもこれと換かえることはできない。銀ぎんも量はかってその価あたいとすることはできない。
28:16 オフルの金きんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。尊たっとい縞しまめのうも、サファイヤも同様どうようである。
28:17 こがねも、玻璃はりもこれに並ならぶことができない。また精せい金きんの器物うつわものもこれと換かえることができない。
28:18 さんごも水晶すいしょうも言いうに足たりない。知恵ちえを得えるのは真珠しんじゅを得えるのにまさる。
28:19 エチオピヤのトパズもこれに並ならぶことができない。純金じゅんきんをもってしても、その価あたいを量はかることはできない。
28:20 それでは知恵ちえはどこから来くるか。悟さとりのある所ところはどこか。
28:21 これはすべての生いき物ものの目めに隠かくされ、空そらの鳥とりにも隠かくされている。
28:22 滅ほろびも死しも言いう、『われわれはそのうわさを耳みみに聞きいただけだ』。
28:23 神かみはこれに至いたる道みちを悟さとっておられる、彼かれはそのある所ところを知しっておられる。
28:24 彼かれは地ちの果はてまでもみそなわし、天あめが下したを見みきわめられるからだ。
28:25 彼かれが風かぜに重おもさを与あたえ、水みずをますで量はかられたとき、
28:26 彼かれが雨あめのために規定きていを設もうけ、雷かみなりのひらめきのために道みちを設もうけられたとき、
28:27 彼かれは知恵ちえを見みて、これをあらわし、これを確たしかめ、これをきわめられた。
28:28 そして人ひとに言いわれた、『見みよ、主しゅを恐おそれることは知恵ちえである、悪あくを離はなれることは悟さとりである』と」。
第29章 29:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、 29:2 「ああ過すぎた年月としつきのようであったらよいのだが、神かみがわたしを守まもってくださった日ひのようであったらよいのだが。29:3 あの時ときには、彼かれのともしびがわたしの頭あたまの上うえに輝かがやき、彼かれの光ひかりによってわたしは暗くらやみを歩あゆんだ。29:4 わたしの盛さかんな時ときのようであったならよいのだが。あの時ときには、神かみの親したしみがわたしの天幕てんまくの上うえにあった。29:5 あの時ときには、全能者ぜんのうしゃがなおわたしと共ともにいまし、わたしの子供こどもたちもわたしの周囲しゅういにいた。29:6 あの時とき、わたしの足跡あしあとは乳ちちで洗あらわれ、岩いわもわたしのために油あぶらの流ながれを注そそぎだした。29:7 あの時ときには、わたしは町まちの門もんに出でて行いき、わたしの座ざを広場ひろばに設もうけた。29:8 若わかい者ものはわたしを見みてしりぞき、老おいた者ものは身みをおこして立たち、29:9 君きみたる者ものも物言ものいうことをやめて、その口くちに手てを当あて、29:10 尊たっとい者ものも声こえをおさめて、その舌したを上うえあごにつけた。29:11 耳みみに聞きいた者ものはわたしを祝福しゅくふくされた者ものとなし、目めに見みた者ものはこれをあかしした。29:12 これは助たすけを求もとめる貧まずしい者ものを救すくい、また、みなしごおよび助たすける人ひとのない者ものを救すくったからである。29:13 今いまにも滅ほろびようとした者ものの祝福しゅくふくがわたしに来きた。わたしはまたやもめの心こころをして喜よろこび歌うたわせた。29:14 わたしは正義せいぎを着き、正義せいぎはわたしをおおった。わたしの公義こうぎは上着うわぎのごとく、また冠かんむりのようであった。29:15 わたしは目めしいの目めとなり、足あしなえの足あしとなり、29:16 貧まずしい者ものの父ちちとなり、知しらない人ひとの訴うったえの理由りゆうを調しらべてやった。29:17 わたしはまた悪あしき者もののきばを折おり、その歯はの間あいだから獲物えものを引ひき出だした。29:18 その時とき、わたしは言いった、『わたしは自分じぶんの巣すの中なかで死しに、わたしの日ひは砂すなのように多おおくなるであろう。29:19 わたしの根ねは水みずのほとりにはびこり、露つゆは夜よもすがらわたしの枝えだにおくであろう。29:20 わたしの栄さかえはわたしと共ともに新あたらしく、わたしの弓ゆみはわたしの手てにいつも強つよい』と。 29:21 人々ひとびとはわたしに聞きいて待まち、黙もくして、わたしの教おしえに従したがった。29:22 わたしが言いった後のちは彼かれらは再ふたたび言いわなかった。わたしの言葉ことばは彼かれらの上うえに雨あめのように降ふりそそいだ。29:23 彼かれらは雨あめを待まつように、わたしを待まち望のぞみ、春はるの雨あめを仰あおぐように口くちを開ひらいて仰あおいだ。29:24 彼かれらが希望きぼうを失うしなった時ときにも、わたしは彼かれらにむかってほほえんだ。彼かれらはわたしの顔かおの光ひかりを除のぞくことができなかった。29:25 わたしは彼かれらのために道みちを選えらび、そのかしらとして座ざし、軍中ぐんちゅうの王おうのようにしており、嘆なげく者ものを慰なぐさめる人ひとのようであった。 第30章 30:1 しかし今いまはわたしよりも年とし若わかい者ものが、かえってわたしをあざ笑わらう。彼かれらの父ちちはわたしが卑いやしめて、群むれの犬いぬと一緒いっしょにさえしなかった者ものだ。30:2 彼かれらの手ての力ちからからわたしは何なにを得えるであろうか、彼かれらはその気力きりょくがすでに衰おとろえた人々ひとびとだ。30:3 彼かれらは乏とぼしさと激はげしい飢うえとによって、かわいた荒あれ地ちをかむ。30:4 彼かれらは、ぜにあおいおよび灌木かんぼくの葉はを摘つみ、れだまの根ねをもって身みを暖あたためる。30:5 彼かれらは人々ひとびとの中なかから追おいだされ、盗ぬすびとを追おうように、人々ひとびとは彼かれらを追おい呼よばわる。30:6 彼かれらは急流きゅうりゅうの谷間たにまに住すみ、土つちの穴あなまたは岩いわの穴あなにおり、30:7 灌木かんぼくの中なかにいななき、いらくさの下したに押おし合あう。30:8 彼かれらは愚おろかな者ものの子こ、また卑いやしい者ものの子こであって、国くにから追おいだされた者ものだ。 30:9 それなのに、わたしは今いま彼かれらの歌うたとなり、彼かれらの笑わらい草ぐさとなった。30:10 彼かれらはわたしをいとい、遠とおくわたしをはなれ、わたしの顔かおにつばきすることも、ためらわない。30:11 神かみがわたしの綱つなを解といて、わたしを卑いやしめられたので、彼かれらもわたしの前まえに慎つつしみを捨すてた。30:12 このともがらはわたしの右みぎに立たち上あがり、わたしを追おいのけ、わたしにむかって滅ほろびの道みちを築きずく。30:13 彼かれらはわたしの道みちをこわし、わたしの災わざわいを促うながす。これをさし止とめる者ものはない。30:14 彼かれらは広ひろい破やぶれ口くちからはいるように進すすみきたり、破壊はかいの中なかをおし寄よせる。30:15 恐おそろしい事ことはわたしに臨のぞみ、わたしの誉ほまれは風かぜのように吹ふき払はらわれ、わたしの繁栄はんえいは雲くものように消きえうせた。 30:16 今いまは、わたしの魂たましいはわたしの内うちにとけて流ながれ、悩なやみの日ひはわたしを捕とらえた。30:17 夜よるはわたしの骨ほねを激はげしく悩なやまし、わたしをかむ苦くるしみは、やむことがない。30:18 それは暴力ぼうりょくをもって、わたしの着物きものを捕とらえ、はだ着ぎのえりのように、わたしをしめつける。30:19 神かみがわたしを泥どろの中なかに投なげ入いれられたので、わたしはちり灰はいのようになった。30:20 わたしがあなたにむかって呼よばわっても、あなたは答こたえられない。わたしが立たっていても、あなたは顧かえりみられない。30:21 あなたは変かわって、わたしに無情むじょうな者ものとなり、み手ての力ちからをもってわたしを攻せめ悩なやまされる。30:22 あなたはわたしを揚あげて風かぜの上うえに乗のせ、大風おおかぜのうなり声こえの中なかに、もませられる。30:23 わたしは知しっている、あなたはわたしを死しに帰かえらせ、すべての生いき物ものの集あつまる家いえに帰かえらせられることを。 30:24 さりながら荒塚あらつかの中なかにある者ものは、手てを伸のべないであろうか、災わざわいの中なかにある者ものは助たすけを呼よび求もとめないであろうか。30:25 わたしは苦くるしい日ひを送おくる者もののために泣なかなかったか。わたしの魂たましいは貧まずしい人ひとのために悲かなしまなかったか。30:26 しかしわたしが幸さいわいを望のぞんだのに災わざわいが来きた。光ひかりを待まち望のぞんだのにやみが来きた。30:27 わたしのはらわたは沸わきかえって、静しずまらない。悩なやみの日ひがわたしに近ちかづいた。30:28 わたしは日ひの光ひかりによらずに黒くろくなって歩あるき、公会こうかいの中なかに立たって助たすけを呼よび求もとめる。30:29 わたしは山犬やまいぬの兄弟きょうだいとなり、だちょうの友ともとなった。30:30 わたしの皮膚ひふは黒くろくなって、はげ落おち、わたしの骨ほねは熱あつさによって燃もえ、30:31 わたしの琴ことは悲かなしみの音ねとなり、わたしの笛ふえは泣なく者ものの声こえとなった。 第31章 31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。 第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
29:1 ヨブはまた言葉ことばをついで言いった、
29:2 「ああ過すぎた年月としつきのようであったらよいのだが、神かみがわたしを守まもってくださった日ひのようであったらよいのだが。
29:3 あの時ときには、彼かれのともしびがわたしの頭あたまの上うえに輝かがやき、彼かれの光ひかりによってわたしは暗くらやみを歩あゆんだ。
29:4 わたしの盛さかんな時ときのようであったならよいのだが。あの時ときには、神かみの親したしみがわたしの天幕てんまくの上うえにあった。
29:5 あの時ときには、全能者ぜんのうしゃがなおわたしと共ともにいまし、わたしの子供こどもたちもわたしの周囲しゅういにいた。
29:6 あの時とき、わたしの足跡あしあとは乳ちちで洗あらわれ、岩いわもわたしのために油あぶらの流ながれを注そそぎだした。
29:7 あの時ときには、わたしは町まちの門もんに出でて行いき、わたしの座ざを広場ひろばに設もうけた。
29:8 若わかい者ものはわたしを見みてしりぞき、老おいた者ものは身みをおこして立たち、
29:9 君きみたる者ものも物言ものいうことをやめて、その口くちに手てを当あて、
29:10 尊たっとい者ものも声こえをおさめて、その舌したを上うえあごにつけた。
29:11 耳みみに聞きいた者ものはわたしを祝福しゅくふくされた者ものとなし、目めに見みた者ものはこれをあかしした。
29:12 これは助たすけを求もとめる貧まずしい者ものを救すくい、また、みなしごおよび助たすける人ひとのない者ものを救すくったからである。
29:13 今いまにも滅ほろびようとした者ものの祝福しゅくふくがわたしに来きた。わたしはまたやもめの心こころをして喜よろこび歌うたわせた。
29:14 わたしは正義せいぎを着き、正義せいぎはわたしをおおった。わたしの公義こうぎは上着うわぎのごとく、また冠かんむりのようであった。
29:15 わたしは目めしいの目めとなり、足あしなえの足あしとなり、
29:16 貧まずしい者ものの父ちちとなり、知しらない人ひとの訴うったえの理由りゆうを調しらべてやった。
29:17 わたしはまた悪あしき者もののきばを折おり、その歯はの間あいだから獲物えものを引ひき出だした。
29:18 その時とき、わたしは言いった、『わたしは自分じぶんの巣すの中なかで死しに、わたしの日ひは砂すなのように多おおくなるであろう。
29:19 わたしの根ねは水みずのほとりにはびこり、露つゆは夜よもすがらわたしの枝えだにおくであろう。
29:20 わたしの栄さかえはわたしと共ともに新あたらしく、わたしの弓ゆみはわたしの手てにいつも強つよい』と。
29:21 人々ひとびとはわたしに聞きいて待まち、黙もくして、わたしの教おしえに従したがった。
29:22 わたしが言いった後のちは彼かれらは再ふたたび言いわなかった。わたしの言葉ことばは彼かれらの上うえに雨あめのように降ふりそそいだ。
29:23 彼かれらは雨あめを待まつように、わたしを待まち望のぞみ、春はるの雨あめを仰あおぐように口くちを開ひらいて仰あおいだ。
29:24 彼かれらが希望きぼうを失うしなった時ときにも、わたしは彼かれらにむかってほほえんだ。彼かれらはわたしの顔かおの光ひかりを除のぞくことができなかった。
29:25 わたしは彼かれらのために道みちを選えらび、そのかしらとして座ざし、軍中ぐんちゅうの王おうのようにしており、嘆なげく者ものを慰なぐさめる人ひとのようであった。
第30章 30:1 しかし今いまはわたしよりも年とし若わかい者ものが、かえってわたしをあざ笑わらう。彼かれらの父ちちはわたしが卑いやしめて、群むれの犬いぬと一緒いっしょにさえしなかった者ものだ。30:2 彼かれらの手ての力ちからからわたしは何なにを得えるであろうか、彼かれらはその気力きりょくがすでに衰おとろえた人々ひとびとだ。30:3 彼かれらは乏とぼしさと激はげしい飢うえとによって、かわいた荒あれ地ちをかむ。30:4 彼かれらは、ぜにあおいおよび灌木かんぼくの葉はを摘つみ、れだまの根ねをもって身みを暖あたためる。30:5 彼かれらは人々ひとびとの中なかから追おいだされ、盗ぬすびとを追おうように、人々ひとびとは彼かれらを追おい呼よばわる。30:6 彼かれらは急流きゅうりゅうの谷間たにまに住すみ、土つちの穴あなまたは岩いわの穴あなにおり、30:7 灌木かんぼくの中なかにいななき、いらくさの下したに押おし合あう。30:8 彼かれらは愚おろかな者ものの子こ、また卑いやしい者ものの子こであって、国くにから追おいだされた者ものだ。 30:9 それなのに、わたしは今いま彼かれらの歌うたとなり、彼かれらの笑わらい草ぐさとなった。30:10 彼かれらはわたしをいとい、遠とおくわたしをはなれ、わたしの顔かおにつばきすることも、ためらわない。30:11 神かみがわたしの綱つなを解といて、わたしを卑いやしめられたので、彼かれらもわたしの前まえに慎つつしみを捨すてた。30:12 このともがらはわたしの右みぎに立たち上あがり、わたしを追おいのけ、わたしにむかって滅ほろびの道みちを築きずく。30:13 彼かれらはわたしの道みちをこわし、わたしの災わざわいを促うながす。これをさし止とめる者ものはない。30:14 彼かれらは広ひろい破やぶれ口くちからはいるように進すすみきたり、破壊はかいの中なかをおし寄よせる。30:15 恐おそろしい事ことはわたしに臨のぞみ、わたしの誉ほまれは風かぜのように吹ふき払はらわれ、わたしの繁栄はんえいは雲くものように消きえうせた。 30:16 今いまは、わたしの魂たましいはわたしの内うちにとけて流ながれ、悩なやみの日ひはわたしを捕とらえた。30:17 夜よるはわたしの骨ほねを激はげしく悩なやまし、わたしをかむ苦くるしみは、やむことがない。30:18 それは暴力ぼうりょくをもって、わたしの着物きものを捕とらえ、はだ着ぎのえりのように、わたしをしめつける。30:19 神かみがわたしを泥どろの中なかに投なげ入いれられたので、わたしはちり灰はいのようになった。30:20 わたしがあなたにむかって呼よばわっても、あなたは答こたえられない。わたしが立たっていても、あなたは顧かえりみられない。30:21 あなたは変かわって、わたしに無情むじょうな者ものとなり、み手ての力ちからをもってわたしを攻せめ悩なやまされる。30:22 あなたはわたしを揚あげて風かぜの上うえに乗のせ、大風おおかぜのうなり声こえの中なかに、もませられる。30:23 わたしは知しっている、あなたはわたしを死しに帰かえらせ、すべての生いき物ものの集あつまる家いえに帰かえらせられることを。 30:24 さりながら荒塚あらつかの中なかにある者ものは、手てを伸のべないであろうか、災わざわいの中なかにある者ものは助たすけを呼よび求もとめないであろうか。30:25 わたしは苦くるしい日ひを送おくる者もののために泣なかなかったか。わたしの魂たましいは貧まずしい人ひとのために悲かなしまなかったか。30:26 しかしわたしが幸さいわいを望のぞんだのに災わざわいが来きた。光ひかりを待まち望のぞんだのにやみが来きた。30:27 わたしのはらわたは沸わきかえって、静しずまらない。悩なやみの日ひがわたしに近ちかづいた。30:28 わたしは日ひの光ひかりによらずに黒くろくなって歩あるき、公会こうかいの中なかに立たって助たすけを呼よび求もとめる。30:29 わたしは山犬やまいぬの兄弟きょうだいとなり、だちょうの友ともとなった。30:30 わたしの皮膚ひふは黒くろくなって、はげ落おち、わたしの骨ほねは熱あつさによって燃もえ、30:31 わたしの琴ことは悲かなしみの音ねとなり、わたしの笛ふえは泣なく者ものの声こえとなった。 第31章 31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。 第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
30:1 しかし今いまはわたしよりも年とし若わかい者ものが、かえってわたしをあざ笑わらう。彼かれらの父ちちはわたしが卑いやしめて、群むれの犬いぬと一緒いっしょにさえしなかった者ものだ。
30:2 彼かれらの手ての力ちからからわたしは何なにを得えるであろうか、彼かれらはその気力きりょくがすでに衰おとろえた人々ひとびとだ。
30:3 彼かれらは乏とぼしさと激はげしい飢うえとによって、かわいた荒あれ地ちをかむ。
30:4 彼かれらは、ぜにあおいおよび灌木かんぼくの葉はを摘つみ、れだまの根ねをもって身みを暖あたためる。
30:5 彼かれらは人々ひとびとの中なかから追おいだされ、盗ぬすびとを追おうように、人々ひとびとは彼かれらを追おい呼よばわる。
30:6 彼かれらは急流きゅうりゅうの谷間たにまに住すみ、土つちの穴あなまたは岩いわの穴あなにおり、
30:7 灌木かんぼくの中なかにいななき、いらくさの下したに押おし合あう。
30:8 彼かれらは愚おろかな者ものの子こ、また卑いやしい者ものの子こであって、国くにから追おいだされた者ものだ。
30:9 それなのに、わたしは今いま彼かれらの歌うたとなり、彼かれらの笑わらい草ぐさとなった。
30:10 彼かれらはわたしをいとい、遠とおくわたしをはなれ、わたしの顔かおにつばきすることも、ためらわない。
30:11 神かみがわたしの綱つなを解といて、わたしを卑いやしめられたので、彼かれらもわたしの前まえに慎つつしみを捨すてた。
30:12 このともがらはわたしの右みぎに立たち上あがり、わたしを追おいのけ、わたしにむかって滅ほろびの道みちを築きずく。
30:13 彼かれらはわたしの道みちをこわし、わたしの災わざわいを促うながす。これをさし止とめる者ものはない。
30:14 彼かれらは広ひろい破やぶれ口くちからはいるように進すすみきたり、破壊はかいの中なかをおし寄よせる。
30:15 恐おそろしい事ことはわたしに臨のぞみ、わたしの誉ほまれは風かぜのように吹ふき払はらわれ、わたしの繁栄はんえいは雲くものように消きえうせた。
30:16 今いまは、わたしの魂たましいはわたしの内うちにとけて流ながれ、悩なやみの日ひはわたしを捕とらえた。
30:17 夜よるはわたしの骨ほねを激はげしく悩なやまし、わたしをかむ苦くるしみは、やむことがない。
30:18 それは暴力ぼうりょくをもって、わたしの着物きものを捕とらえ、はだ着ぎのえりのように、わたしをしめつける。
30:19 神かみがわたしを泥どろの中なかに投なげ入いれられたので、わたしはちり灰はいのようになった。
30:20 わたしがあなたにむかって呼よばわっても、あなたは答こたえられない。わたしが立たっていても、あなたは顧かえりみられない。
30:21 あなたは変かわって、わたしに無情むじょうな者ものとなり、み手ての力ちからをもってわたしを攻せめ悩なやまされる。
30:22 あなたはわたしを揚あげて風かぜの上うえに乗のせ、大風おおかぜのうなり声こえの中なかに、もませられる。
30:23 わたしは知しっている、あなたはわたしを死しに帰かえらせ、すべての生いき物ものの集あつまる家いえに帰かえらせられることを。
30:24 さりながら荒塚あらつかの中なかにある者ものは、手てを伸のべないであろうか、災わざわいの中なかにある者ものは助たすけを呼よび求もとめないであろうか。
30:25 わたしは苦くるしい日ひを送おくる者もののために泣なかなかったか。わたしの魂たましいは貧まずしい人ひとのために悲かなしまなかったか。
30:26 しかしわたしが幸さいわいを望のぞんだのに災わざわいが来きた。光ひかりを待まち望のぞんだのにやみが来きた。
30:27 わたしのはらわたは沸わきかえって、静しずまらない。悩なやみの日ひがわたしに近ちかづいた。
30:28 わたしは日ひの光ひかりによらずに黒くろくなって歩あるき、公会こうかいの中なかに立たって助たすけを呼よび求もとめる。
30:29 わたしは山犬やまいぬの兄弟きょうだいとなり、だちょうの友ともとなった。
30:30 わたしの皮膚ひふは黒くろくなって、はげ落おち、わたしの骨ほねは熱あつさによって燃もえ、
30:31 わたしの琴ことは悲かなしみの音ねとなり、わたしの笛ふえは泣なく者ものの声こえとなった。
第31章 31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。 第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
31:1 わたしは、わたしの目めと契約けいやくを結むすんだ、どうして、おとめを慕したうことができようか。
31:2 もしそうすれば上うえから神かみの下くだされる分ぶんはどんなであろうか。高たかき所ところから全能者ぜんのうしゃの与あたえられる嗣し業ぎょうはどんなであろうか。
31:3 不義ふぎなる者ものには災わざわいが下くだらないであろうか。悪あくをなす者ものには災難さいなんが臨のぞまないであろうか。
31:4 彼かれはわたしの道みちをみそなわし、わたしの歩あゆみをことごとく数かぞえられぬであろうか。
31:5 もし、わたしがうそと共ともに歩あゆみ、わたしの足あしが偽いつわりにむかって急いそいだことがあるなら、
31:6 (正ただしいはかりをもってわたしを量はかれ、そうすれば神かみはわたしの潔白けっぱくを知しられるであろう。)
31:7 もしわたしの歩あゆみが、道みちをはなれ、わたしの心こころがわたしの目めにしたがって歩あゆみ、わたしの手てに汚けがれがついていたなら、
31:8 わたしのまいたのを他たの人ひとが食たべ、わたしのために成長せいちょうするものが、抜ぬき取とられてもかまわない。
31:9 もし、わたしの心こころが、女おんなに迷まよったことがあるか、またわたしが隣となり人びとの門もんで待まち伏ぶせしたことがあるなら、
31:10 わたしの妻つまが他たの人ひとのためにうすをひき、他たの人ひとが彼女かのじょの上うえに寝ねてもかまわない。
31:11 これは重おもい罪つみであって、さばきびとに罰ばっせられるべき悪事あくじだからである。
31:12 これは滅ほろびに至いたるまでも焼やきつくす火ひであって、わたしのすべての産業さんぎょうを根ねこそぎ焼やくであろう。
31:13 わたしのしもべ、また、はしためがわたしと言いい争あらそったときに、わたしがもしその言いい分ぶんを退しりぞけたことがあるなら、
31:14 神かみが立たち上あがられるとき、わたしはどうしようか、神かみが尋たずねられるとき、なんとお答こたえしようか。
31:15 わたしを胎内たいないに造つくられた者ものは、彼かれをも造つくられたのではないか。われわれを腹はらの内うちに形かたち造つくられた者ものは、ただひとりではないか。
31:16 わたしがもし貧まずしい者ものの願ねがいを退しりぞけ、やもめの目めを衰おとろえさせ、
31:17 あるいはわたしひとりで食物しょくもつを食たべて、みなしごに食たべさせなかったことがあるなら、
31:18 (わたしは彼かれの幼おさない時ときから父ちちのように彼かれを育そだて、またその母ははの胎たいを出でたときから彼かれを導みちびいた。)
31:19 もし着物きものがないために死しのうとする者ものや、身みをおおう物もののない貧まずしい人ひとをわたしが見みた時ときに、
31:20 その腰こしがわたしを祝福しゅくふくせず、また彼かれがわたしの羊ひつじの毛けで暖あたたまらなかったことがあるなら、
31:21 もしわたしを助たすける者ものが門もんにおるのを見みて、みなしごにむかってわたしの手てを振ふり上あげたことがあるなら、
31:22 わたしの肩かた骨ほねが、肩かたから落おち、わたしの腕うでが、つけ根ねから折おれてもかまわない。
31:23 わたしは神かみから出でる災わざわいを恐おそれる、その威光いこうの前まえには何事なにごともなすことはできない。
31:24 わたしがもし金きんをわが望のぞみとし、精せい金きんをわが頼たのみと言いったことがあるなら、
31:25 わたしがもしわが富とみの大おおいなる事ことと、わたしの手てに多おおくの物ものを獲えた事こととを喜よろこんだことがあるなら、
31:26 わたしがもし日ひの輝かがやくのを見み、または月つきの照てりわたって動うごくのを見みた時とき、
31:27 心こころひそかに迷まよって、手てに口くちづけしたことがあるなら、
31:28 これもまたさばきびとに罰ばっせらるべき悪事あくじだ。わたしは上うえなる神かみを欺あざむいたからである。
31:29 わたしがもしわたしを憎にくむ者ものの滅ほろびるのを喜よろこび、または災わざわいが彼かれに臨のぞんだとき、勝かち誇ほこったことがあるなら、
31:30 (わたしはわが口くちに罪つみを犯おかさせず、のろいをもって彼かれの命いのちを求もとめたことはなかった。)
31:31 もし、わたしの天幕てんまくの人々ひとびとで、『だれか彼かれの肉にくに飽あきなかった者ものがあるか』と、言いわなかったことがあるなら、
31:32 (他国たこく人じんはちまたに宿やどらず、わたしはわが門もんを旅たびびとに開ひらいた。)
31:33 わたしがもし人々ひとびとの前まえにわたしのとがをおおい、わたしの悪事あくじを胸むねの中なかに隠かくしたことがあるなら、
31:34 わたしが大衆たいしゅうを恐おそれ、宗族そうぞくの侮あなどりにおぢて、口くちを閉とじ、門もんを出でなかったことがあるなら、
31:35 ああ、わたしに聞きいてくれる者ものがあればよいのだが、(わたしのかきはんがここにある。どうか、全能者ぜんのうしゃがわたしに答こたえられるように。)ああ、わたしの敵てきの書かいた告訴こくそ状じょうがあればよいのだが。
31:36 わたしは必かならずこれを肩かたに負おい、冠かんむりのようにこれをわが身みに結むすび、
31:37 わが歩あゆみの数かずを彼かれに述のべ、君きみたる者もののようにして、彼かれに近ちかづくであろう。
31:38 もしわが田畑たはたがわたしに向むかって呼よばわり、そのうねみぞが共ともに泣なき叫さけんだことがあるなら、
31:39 もしわたしが金きんを払はらわないでその産物さんぶつを食たべ、その持もち主ぬしを死しなせたことがあるなら、
31:40 小麦こむぎの代かわりに、いばらがはえ、大麦おおむぎの代かわりに雑草ざっそうがはえてもかまわない」。ヨブの言葉ことばは終おわった。
第32章 32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。 32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。 32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。 第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
32:1 このようにヨブが自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうしたので、これら三人にんの者ものはヨブに答こたえるのをやめた。
32:2 その時ときラム族ぞくのブズびとバラケルの子こエリフは怒いかりを起おこした。すなわちヨブが神かみよりも自分じぶんの正ただしいことを主張しゅちょうするので、彼かれはヨブに向むかって怒いかりを起おこした。
32:3 またヨブの三人にんの友ともがヨブを罪つみありとしながら、答こたえる言葉ことばがなかったので、エリフは彼かれらにむかっても怒いかりを起おこした。
32:4 エリフは彼かれらが皆みな、自分じぶんよりも年長者ねんちょうしゃであったので、ヨブに物言ものいうことをひかえて待まっていたが、
32:5 ここにエリフは三人にんの口くちに答こたえる言葉ことばのないのを見みて怒いかりを起おこした。
32:6 ブズびとバラケルの子こエリフは答こたえて言いった、 「わたしは年とし若わかく、あなたがたは年老としおいている。それゆえ、わたしははばかって、わたしの意見いけんを述のべることをあえてしなかった。
32:7 わたしは思おもった、『日ひを重かさねた者ものが語かたるべきだ、年としを積つんだ者ものが知恵ちえを教おしえるべきだ』と。
32:8 しかし人ひとのうちには霊れいがあり、全能者ぜんのうしゃの息いきが人ひとに悟さとりを与あたえる。
32:9 老おいた者もの、必かならずしも知恵ちえがあるのではなく、年としとった者もの、必かならずしも道理どうりをわきまえるのではない。
32:10 ゆえにわたしは言いう、『わたしに聞きけ、わたしもまたわが意見いけんを述のべよう』。
32:11 見みよ、わたしはあなたがたの言葉ことばに期待きたいし、その知恵ちえある言葉ことばに耳みみを傾かたむけ、あなたがたが言いうべき言葉ことばを捜さがし出だすのを待まっていた。
32:12 わたしはあなたがたに心こころをとめたが、あなたがたのうちにヨブを言いいふせる者ものはひとりもなく、また彼かれの言葉ことばに答こたえる者ものはひとりもなかった。
32:13 おそらくあなたがたは言いうだろう、『われわれは知恵ちえを見みいだした、彼かれに勝かつことのできるのは神かみだけで、人ひとにはできない』と。
32:14 彼かれはその言葉ことばをわたしに向むけて言いわなかった。わたしはあなたがたの言葉ことばをもって彼かれに答こたえることはしない。
32:15 彼かれらは驚おどろいて、もはや答こたえることをせず、彼かれらには、もはや言いうべき言葉ことばがない。
32:16 彼かれらは物言ものいわず、立たちとどまって、もはや答こたえるところがないので、わたしはこれ以上いじょう待まつ必要ひつようがあろうか。
32:17 わたしもまたわたしの分ぶんを答こたえ、わたしの意見いけんを述のべよう。
32:18 わたしには言葉ことばが満みち、わたしのうちの霊れいがわたしに迫せまるからだ。
32:19 見みよ、わたしの心こころは口くちを開ひらかないぶどう酒しゅのように、新あたらしいぶどう酒しゅの皮かわ袋ぶくろのように、今いまにも張はりさけようとしている。
32:20 わたしは語かたって、気きを晴はらし、くちびるを開ひらいて答こたえよう。
32:21 わたしはだれをもかたより見みることなく、また何人なにびとにもへつらうことをしない。
32:22 わたしはへつらうことを知しらないからだ。もしへつらうならば、わたしの造つくり主ぬしは直ただちにわたしを滅ほろぼされるであろう。
第33章 33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。 33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。 33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。 33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。 第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
33:1 だから、ヨブよ、今いまわたしの言いうことを聞きけ、わたしのすべての言葉ことばに耳みみを傾かたむけよ。
33:2 見みよ、わたしは口くちを開ひらき、口くちの中なかの舌したは物言ものいう。
33:3 わたしの言葉ことばはわが心こころの正ただしきを語かたり、わたしのくちびるは真実しんじつをもってその知識ちしきを語かたる。
33:4 神かみの霊れいはわたしを造つくり、全能者ぜんのうしゃの息いきはわたしを生いかす。
33:5 あなたがもしできるなら、わたしに答こたえよ、わたしの前まえに言葉ことばを整ととのえて、立たて。
33:6 見みよ、神かみに対たいしては、わたしもあなたと同様どうようであり、わたしもまた土つちから取とって つくられた者ものだ。
33:7 見みよ、わたしの威厳いげんはあなたを恐おそれさせない、わたしの勢いきおいはあなたを圧あっしない。
33:8 確たしかに、あなたはわたしの聞きくところで言いった、わたしはあなたの言葉ことばの声こえを聞きいた。
33:9 あなたは言いう、『わたしはいさぎよく、とがはない。わたしは清きよく、不義ふぎはない。
33:10 見みよ、彼かれはわたしを攻せめる口実こうじつを見みつけ、わたしを自分じぶんの敵てきとみなし、
33:11 わたしの足あしをかせにはめ、わたしのすべての行おこないに目めをとめられる』と。
33:12 見みよ、わたしはあなたに答こたえる、あなたはこの事ことにおいて正ただしくない。神かみは人ひとよりも大おおいなる者ものだ。
33:13 あなたが『彼かれはわたしの言葉ことばに少すこしも答こたえられない』といって、彼かれに向むかって言いい争あらそうのは、どういうわけであるか。
33:14 神かみは一つの方法ほうほうによって語かたられ、また二つの方法ほうほうによって語かたられるのだが、人ひとはそれを悟さとらないのだ。
33:15 人々ひとびとが熟睡じゅくすいするとき、または床とこにまどろむとき、夢ゆめあるいは夜よるの幻まぼろしのうちで、
33:16 彼かれは人々ひとびとの耳みみを開ひらき、警告けいこくをもって彼かれらを恐おそれさせ、
33:17 こうして人ひとにその悪あしきわざを離はなれさせ、高たかぶりを人ひとから除のぞき、
33:18 その魂たましいを守まもって、墓はかに至いたらせず、その命いのちを守まもって、つるぎに滅ほろびないようにされる。
33:19 人ひとはまたその床とこの上うえで痛いたみによって懲こらされ、その骨ほねに戦たたかいが絶たえることなく、
33:20 その命いのちは、食物しょくもつをいとい、その食欲しょくよくは、おいしい食物しょくもつをきらう。
33:21 その肉にくはやせ落おちて見みえず、その骨ほねは見みえなかったものまでもあらわになり、
33:22 その魂たましいは墓はかに近ちかづき、その命いのちは滅ほろぼす者ものに近ちかづく。
33:23 もしそこに彼かれのためにひとりの天使てんしがあり、千のうちのひとりであって、仲保ちゅうほとなり、人ひとにその正ただしい道みちを示しめすならば、
33:24 神かみは彼かれをあわれんで言いわれる、『彼かれを救すくって、墓はかに下くだることを免まぬかれさせよ、わたしはすでにあがないしろを得えた。
33:25 彼かれの肉にくを幼おさな子ごの肉にくよりもみずみずしくならせ、彼かれを若わかい時ときの元気げんきに帰かえらせよ』と。
33:26 その時とき、彼かれが神かみに祈いのるならば、神かみは彼かれを顧かえりみ、喜よろこびをもって、み前まえにいたらせ、その救すくいを人ひとに告つげ知しらせられる。
33:27 彼かれは人々ひとびとの前まえに歌うたって言いう、『わたしは罪つみを犯おかし、正ただしい事ことを曲まげた。しかしわたしに報復ほうふくがなかった。
33:28 彼かれはわたしの魂たましいをあがなって、墓はかに下くだらせられなかった。わたしの命いのちは光ひかりを見みることができる』と。
33:29 見みよ、神かみはこれらすべての事ことをふたたび、みたび人ひとに行おこない、
33:30 その魂たましいを墓はかから引ひき返かえし、彼かれに命いのちの光ひかりを見みさせられる。
33:31 ヨブよ、耳みみを傾かたむけてわたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしは語かたろう。
33:32 あなたがもし言いうべきことがあるなら、わたしに答こたえよ、語かたれ、わたしはあなたを正ただしい者ものにしようと望のぞむからだ。
33:33 もし語かたることがないなら、わたしに聞きけ、黙もくせよ、わたしはあなたに知恵ちえを教おしえよう」。
第34章 34:1 エリフはまた答こたえて言いった、 34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。 34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。 34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。 34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。 第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
34:1 エリフはまた答こたえて言いった、
34:2 「あなたがた知恵ちえある人々ひとびとよ、わたしの言葉ことばを聞きけ、あなたがた知識ちしきある人々ひとびとよ、わたしに耳みみを傾かたむけよ。
34:3 口くちが食物しょくもつを味あじわうように、耳みみは言葉ことばをわきまえるからだ。
34:4 われわれは正ただしい事ことを選えらび、われわれの間あいだに良よい事ことの何なにであるかを明あきらかにしよう。
34:5 ヨブは言いった、『わたしは正ただしい、神かみはわたしの公義こうぎを奪うばわれた。
34:6 わたしは正ただしいにもかかわらず、偽いつわる者ものとされた。わたしにはとががないけれども、わたしの矢や傷きずはいえない』と。
34:7 だれかヨブのような人ひとがあろう。彼かれはあざけりを水みずのように飲のみ、
34:8 悪あくをなす者ものどもと交まじわり、悪人あくにんと共ともに歩あゆむ。
34:9 彼かれは言いった、『人ひとは神かみと親したしんでも、なんの益えきもない』と。
34:10 それであなたがた理解りかいある人々ひとびとよ、わたしに聞きけ、神かみは断だんじて悪あくを行おこなうことなく、全能者ぜんのうしゃは断だんじて不義ふぎを行おこなうことはない。
34:11 神かみは人ひとのわざにしたがってその身みに報むくい、おのおのの道みちにしたがって、その身みに振ふりかからせられる。
34:12 まことに神かみは悪あしき事ことを行おこなわれない。全能者ぜんのうしゃはさばきをまげられない。
34:13 だれかこの地ちを彼かれにゆだねた者ものがあるか。だれか全ぜん世界せかいを彼かれに負おわせた者ものがあるか。
34:14 神かみがもしその霊れいをご自分じぶんに取とりもどし、その息いきをご自分じぶんに取とりあつめられるならば、
34:15 すべての肉にくは共ともに滅ほろび、人ひとはちりに帰かえるであろう。
34:16 もし、あなたに悟さとりがあるならば、これを聞きけ、わたしの言いうところに耳みみを傾かたむけよ。
34:17 公義こうぎを憎にくむ者ものは世よを治おさめることができようか。正ただしく力ちからある者ものを、あなたは非難ひなんするであろうか。
34:18 王おうたる者ものに向むかって『よこしまな者もの』と言いい、つかさたる者ものに向むかって、『悪あしき者もの』と言いうことができるであろうか。
34:19 神かみは君くんたる者ものをもかたより見みられることなく、富とめる者ものを貧まずしき者ものにまさって顧かえりみられることはない。彼かれらは皆みなみ手てのわざだからである。
34:20 彼かれらはまたたく間まに死しに、民たみは夜よるの間あいだに振ふわれて、消きえうせ、力ちからある者ものも人手ひとでによらずに除のぞかれる。
34:21 神かみの目めが人ひとの道みちの上うえにあって、そのすべての歩あゆみを見みられるからだ。
34:22 悪あくを行おこなう者ものには身みを隠かくすべき暗くらやみもなく、暗黒あんこくもない。
34:23 人ひとがさばきのために神かみの前まえに出でるとき、神かみは人ひとのために時ときを定さだめておかれない。
34:24 彼かれは力ちからある者ものをも調しらべることなく打うち滅ほろぼし、他たの人々ひとびとを立たてて、これに替かえられる。
34:25 このように、神かみは彼かれらのわざを知しり、夜よの間まに彼かれらをくつがえされるので、彼かれらはやがて滅ほろびる。
34:26 彼かれは人々ひとびとの見みる所ところで、彼かれらをその悪あくのために撃うたれる。
34:27 これは彼かれらがそむいて彼かれに従したがわず、その道みちを全まったく顧かえりみないからだ。
34:28 こうして彼かれらは貧まずしき者ものの叫さけびを彼かれのもとにいたらせ、悩なやめる者ものの叫さけびを彼かれに聞きかせる。
34:29 彼かれが黙だまっておられるとき、だれが非難ひなんすることができようか。彼かれが顔かおを隠かくされるとき、だれが彼かれを見みることができようか。一国こくの上うえにも、一人にんの上うえにも同様どうようだ。
34:30 これは神かみを信しんじない者ものが世よを治おさめることがなく、民たみをわなにかける事ことのないようにするためである。
34:31 だれが神かみに向むかって言いったか、『わたしは罪つみを犯おかさないのに、懲こらしめられた。
34:32 わたしの見みないものをわたしに教おしえられたい。もしわたしが悪わるい事ことをしたなら、重かさねてこれをしない』と。
34:33 あなたが拒こばむゆえに、彼かれはあなたの好このむように報むくいをされるであろうか。あなたみずから選えらぶがよい、わたしはしない。あなたの知しるところを言いいなさい。
34:34 悟さとりある人々ひとびとはわたしに言いうだろう、わたしに聞きくところの知恵ちえある人ひとは言いうだろう、
34:35 『ヨブの言いうところは知識ちしきがなく、その言葉ことばは悟さとりがない』と。
34:36 どうかヨブが終おわりまで試こころみられるように、彼かれは悪人あくにんのように答こたえるからである。
34:37 彼かれは自分じぶんの罪つみに、とがを加くわえ、われわれの中なかにあって手てをうち、神かみに逆さからって、その言葉ことばをしげくする」。
第35章 35:1 エリフはまた答こたえて言いった、 35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。 第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
35:1 エリフはまた答こたえて言いった、
35:2 「あなたはこれを正ただしいと思おもうのか、あなたは『神かみの前まえに自分じぶんは正ただしい』と言いうのか。
35:3 あなたは言いう、『これはわたしになんの益えきがあるか、罪つみを犯おかしたのとくらべてなんのまさるところがあるか』と。
35:4 わたしはあなたおよび、あなたと共ともにいるあなたの友人ゆうじんたちに答こたえよう。
35:5 天てんを仰あおぎ見みよ、あなたの上うえなる高たかき空そらを望のぞみ見みよ。
35:6 あなたが罪つみを犯おかしても、彼かれになんのさしさわりがあるか。あなたのとがが多おおくても、彼かれに何なにをなし得えようか。
35:7 またあなたは正ただしくても、彼かれに何なにを与あたえ得えようか。彼かれはあなたの手てから何なにを受うけられるであろうか。
35:8 あなたの悪あくはただあなたのような人ひとにかかわり、あなたの義ぎはただ人ひとの子こにかかわるのみだ。
35:9 しえたげの多おおいために叫さけび、力ちからある者ものの腕うでのゆえに呼よばわる人々ひとびとがある。
35:10 しかし、ひとりとして言いう者ものはない、『わが つくり主ぬしなる神かみはどこにおられるか、彼かれは夜よの間まに歌うたを与あたえ、
35:11 地ちの獣けものよりも多おおく、われわれを教おしえ、空そらの鳥とりよりも、われわれを賢かしこくされる方かたである』と。
35:12 彼かれらが叫さけんでも答こたえられないのは、悪あしき者ものの高たかぶりによる。
35:13 まことに神かみはむなしい叫さけびを聞きかれない。また全能者ぜんのうしゃはこれを顧かえりみられない。
35:14 あなたが彼かれを見みないと言いう時ときはなおさらだ。さばきは神かみの前まえにある。あなたは彼かれを待まつべきである。
35:15 今いま彼かれが怒いかりをもって罰ばっせず、罪つみとがを深ふかく心こころにとめられないゆえに
35:16 ヨブは口くちを開ひらいてむなしい事ことを述のべ、無知むちの言葉ことばをしげくする」。
第36章 36:1 エリフは重かさねて言いった、 36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。 36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。 36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。 36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。 第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
36:1 エリフは重かさねて言いった、
36:2 「しばらく待まて、わたしはあなたに示しめすことがある。なお神かみのために言いうべき事ことがある。
36:3 わたしは遠とおくからわが知識ちしきを取とり、わが造つくり主ぬしに正義せいぎを帰きする。
36:4 まことにわたしの言葉ことばは偽いつわらない。知識ちしきの全まったき者ものがあなたと共ともにいる。
36:5 見みよ、神かみは力ちからある者ものであるが、何なにをも卑いやしめられない、その悟さとりの力ちからは大おおきい。
36:6 彼かれは悪あしき者ものを生いかしておかれない、苦くるしむ者もののためにさばきを行おこなわれる。
36:7 彼かれは正ただしい者ものから目めを離はなさず、位くらいにある王おうたちと共ともに、とこしえに、彼かれらをすわらせて、尊たっとくされる。
36:8 もし彼かれらが足あしかせにつながれ、悩なやみのなわに捕とらえられる時ときは、
36:9 彼かれらの行おこないと、とがと、その高たかぶったふるまいを彼かれらに示しめし、
36:10 彼かれらの耳みみを開ひらいて、教おしえを聞きかせ、悪あくを離はなれて帰かえることを命めいじられる。
36:11 もし彼かれらが聞きいて彼かれに仕つかえるならば、彼かれらはその日ひを幸福こうふくに過すごし、その年としを楽たのしく送おくるであろう。
36:12 しかし彼かれらが聞きかないならば、つるぎによって滅ほろび、知識ちしきを得えないで死しぬであろう。
36:13 心こころに神かみを信しんじない者ものどもは怒いかりをたくわえ、神かみに縛しばられる時ときも、助たすけを呼よび求もとめることをしない。
36:14 彼かれらは年とし若わかくして死しに、その命いのちは恥はじのうちに終おわる。
36:15 神かみは苦くるしむ者ものをその苦くるしみによって救すくい、彼かれらの耳みみを逆境ぎゃっきょうによって開ひらかれる。
36:16 神かみはまたあなたを悩なやみから、束縛そくばくのない広ひろい所ところに誘さそい出だされた。そしてあなたの食卓しょくたくに置おかれた物ものはすべて肥こえた物ものであった。
36:17 しかしあなたは悪人あくにんのうくべきさばきをおのれに満みたし、さばきと公義こうぎはあなたを捕とらえている。
36:18 あなたは怒いかりに誘さそわれて、あざけりに陥おちいらぬように心こころせよ。あがないしろの大おおいなるがために、おのれを誤あやまるな。
36:19 あなたの叫さけびはあなたを守まもって、悩なやみを免まぬかれさせるであろうか、いかに力ちからをつくしても役やくに立たたない。
36:20 人々ひとびとがその所ところから断たたれるその夜よを慕したってはならない。
36:21 慎つつしんで悪あくに傾かたむいてはならない。あなたは悩なやみよりもむしろこれを選えらんだからだ。
36:22 見みよ、神かみはその力ちからをもってあがめられる。だれか彼かれのように教おしえる者ものがあるか。
36:23 だれか彼かれのためにその道みちを定さだめた者ものがあるか。だれか『あなたは悪わるい事ことをした』と言いいうる者ものがあるか。
36:24 神かみのみわざをほめたたえる事ことを忘わすれてはならない。これは人々ひとびとの歌うたいあがめるところである。
36:25 すべての人ひとはこれを仰あおぎ見みる。人ひとは遠とおくからこれを見みるにすぎない。
36:26 見みよ、神かみは大おおいなる者ものにいまして、われわれは彼かれを知しらない。その年としの数かずも計はかり知しることができない。
36:27 彼かれは水みずのしたたりを引ひきあげ、その霧きりをしたたらせて雨あめとされる。
36:28 空そらはこれを降ふらせて、人ひとの上うえに豊ゆたかに注そそぐ。
36:29 だれか雲くもの広ひろがるわけと、その幕屋まくやのとどろくわけとを悟さとることができようか。
36:30 見みよ、彼かれはその光ひかりをおのれのまわりにひろげ、また海うみの底そこをおおわれる。
36:31 彼かれはこれらをもって民たみをさばき、食物しょくもつを豊ゆたかに賜たまい、
36:32 いなずまをもってもろ手てを包つつみ、これに命めいじて敵てきを打うたせられる。
36:33 そのとどろきは、悪あくにむかって怒いかりに燃もえる彼かれを現あらわす。
第37章 37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。 37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。 37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。 第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
37:1 これがためにわが心こころもまたわななき、その所ところからとび離はなれる。
37:2 聞きけ、神かみの声こえのとどろきを、またその口くちから出でるささやきを。
37:3 彼かれはこれを天あめが下したに放はなち、その光ひかりを地ちのすみずみまで至いたらせられる。
37:4 その後のち、声こえとどろき、彼かれはそのいかめしい声こえをもって鳴なり渡わたられる。その声こえの聞きこえる時とき、彼かれはいなずまを引ひきとめられない。
37:5 神かみはその驚おどろくべき声こえをもって鳴なり渡わたり、われわれの悟さとりえない大おおいなる事ことを行おこなわれる。
37:6 彼かれは雪ゆきに向むかって『地ちに降ふれ』と命めいじ、夕立ゆうだちおよび雨あめに向むかって『強つよく降ふれ』と命めいじられる。
37:7 彼かれはすべての人ひとの手てを封ふうじられる。これはすべての人ひとにみわざを知しらせるためである。
37:8 その時とき、獣けものは穴あなに入はいり、そのほらにとどまる。
37:9 つむじ風かぜはそのへやから、寒さむさは北風きたかぜから来くる。
37:10 神かみのいぶきによって氷こおりが張はり、広々ひろびろとした水みずは凍こおる。
37:11 彼かれは濃こい雲くもに水気すいきを負おわせ、雲くもはそのいなずまを散ちらす。
37:12 これは彼かれの導みちびきによってめぐる。彼かれの命めいじるところをことごとく世界せかいのおもてに行おこなうためである。
37:13 神かみがこれらをこさせるのは、懲こらしめのため、あるいはその地ちのため、あるいはいつくしみのためである。
37:14 ヨブよ、これを聞きけ、立たって神かみのくすしきみわざを考かんがえよ。
37:15 あなたは知しっているか、神かみがいかにこれらに命めいじて、その雲くもの光ひかりを輝かがやかされるかを。
37:16 あなたは知しっているか、雲くものつりあいと、知識ちしきの全まったき者もののくすしきみわざを。
37:17 南風みなみかぜによって地ちが穏おだやかになる時とき、あなたの着物きものが熱あつくなることを。
37:18 あなたは鋳いた鏡かがみのように堅かたい大空おおぞらを、彼かれのように張はることができるか。
37:19 われわれが彼かれに言いうべき事ことをわれわれに教おしえよ、われわれは暗くらくて、言葉ことばをつらねることはできない。
37:20 わたしは語かたることがあると彼かれに告つげることができようか、人ひとは滅ほろぼされることを望のぞむであろうか。
37:21 光ひかりが空そらに輝かがやいているとき、風かぜ過すぎて空そらを清きよめると、人々ひとびとはその光ひかりを見みることができない。
37:22 北きたから黄金おうごんのような輝かがやきがでてくる。神かみには恐おそるべき威光いこうがある。
37:23 全能者ぜんのうしゃは――われわれはこれを見みいだすことができない。彼かれは力ちからと公義こうぎとにすぐれ、正義せいぎに満みちて、これを曲まげることはない。
37:24 それゆえ、人々ひとびとは彼かれを恐おそれる。彼かれはみずから賢かしこいと思おもう者ものを顧かえりみられない」。
第38章 38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。 38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。 38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。 38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。 38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。 38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。 38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。 38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。 38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。 第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
38:1 この時とき、主しゅはつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、
38:2 「無知むちの言葉ことばをもって、神かみの計はかりごとを暗くらくするこの者ものはだれか。
38:3 あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。
38:4 わたしが地ちの基もといをすえた時とき、どこにいたか。もしあなたが知しっているなら言いえ。
38:5 あなたがもし知しっているなら、だれがその度量どりょうを定さだめたか。だれが測はかりなわを地ちの上うえに張はったか。
38:6 その土台どだいは何なにの上うえに置おかれたか。その隅すみの石いしはだれがすえたか。
38:7 かの時ときには明あけの星ほしは相あい共ともに歌うたい、神かみの子こたちはみな喜よろこび呼よばわった。
38:8 海うみの水みずが流ながれいで、胎内たいないからわき出でたとき、だれが戸とをもって、これを閉とじこめたか。
38:9 あの時とき、わたしは雲くもをもって衣ころもとし、黒雲くろくもをもってむつきとし、
38:10 これがために境さかいを定さだめ、関かんおよび戸とを設もうけて、
38:11 言いった、『ここまで来きてもよい、越こえてはならぬ、おまえの高波たかなみはここにとどまるのだ』と。
38:12 あなたは生うまれた日ひからこのかた朝あさに命めいじ、夜明よあけにその所ところを知しらせ、
38:13 これに地ちの縁ふちをとらえさせ、悪人あくにんをその上うえから振ふり落おとさせたことがあるか。
38:14 地ちは印いんせられた土つちのように変かわり、衣ころものようにいろどられる。
38:15 悪人あくにんはその光ひかりを奪うばわれ、その高たかくあげた腕うでは折おられる。
38:16 あなたは海うみの源みなもとに行いったことがあるか。淵ふちの底そこを歩あるいたことがあるか。
38:17 死しの門もんはあなたのために開ひらかれたか。あなたは暗黒あんこくの門もんを見みたことがあるか。
38:18 あなたは地ちの広ひろさを見みきわめたか。もしこれをことごとく知しっているならば言いえ。
38:19 光ひかりのある所ところに至いたる道みちはいずれか。暗くらやみのある所ところはどこか。
38:20 あなたはこれをその境さかいに導みちびくことができるか。その家路いえじを知しっているか。
38:21 あなたは知しっているだろう、あなたはかの時ときすでに生うまれており、またあなたの日ひ数かずも多おおいのだから。
38:22 あなたは雪ゆきの倉くらにはいったことがあるか。ひょうの倉くらを見みたことがあるか。
38:23 これらは悩なやみの時ときのため、いくさと戦たたかいの日ひのため、わたしがたくわえて置おいたものだ。
38:24 光ひかりの広ひろがる道みちはどこか。東風ひがしかぜの地ちに吹ふき渡わたる道みちはどこか。
38:25 だれが大雨おおあめのために水路すいろを切きり開ひらき、いかずちの光ひかりのために道みちを開ひらき、
38:26 人ひとなき地ちにも、人ひとなき荒野あらのにも雨あめを降ふらせ、
38:27 荒あれすたれた地ちをあき足たらせ、これに若草わかくさをはえさせるか。
38:28 雨あめに父ちちがあるか。露つゆの玉たまはだれが生うんだか。
38:29 氷こおりはだれの胎たいから出でたか。空そらの霜しもはだれが生うんだか。
38:30 水みずは固かたまって石いしのようになり、淵ふちのおもては凍こおる。
38:31 あなたはプレアデスの鎖くさりを結むすぶことができるか。オリオンの綱つなを解とくことができるか。
38:32 あなたは十二宮きゅうをその時ときにしたがって引ひき出だすことができるか。北斗ほくととその子こ星ぼしを導みちびくことができるか。
38:33 あなたは天てんの法則ほうそくを知しっているか、そのおきてを地ちに施ほどこすことができるか。
38:34 あなたは声こえを雲くもにあげ、多おおくの水みずにあなたをおおわせることができるか。
38:35 あなたはいなずまをつかわして行いかせ、『われわれはここにいる』と、あなたに言いわせることができるか。
38:36 雲くもに知恵ちえを置おき、霧きりに悟さとりを与あたえたのはだれか。
38:37 だれが知恵ちえをもって雲くもを数かぞえることができるか。だれが天てんの皮かわ袋ぶくろを傾かたむけて、
38:38 ちりを一つに流ながれ合あわさせ、土つちくれを固かたまらせることができるか。
38:39 あなたはししのために食物しょくもつを狩かり、子こじしの食欲しょくよくを満みたすことができるか。
38:40 彼かれらがほら穴あなに伏ふし、林はやしのなかに待まち伏ぶせする時とき、あなたはこの事ことをなすことができるか。
38:41 からすの子こが神かみに向むかって呼よばわり、食物しょくもつがなくて、さまようとき、からすにえさを与あたえる者ものはだれか。
第39章 39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。 39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。 39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。 39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。 39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。 39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。 第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
39:1 あなたは岩間いわまのやぎが子こを産うむときを知しっているか。あなたは雌めじかが子こを産うむのを見みたことがあるか。
39:2 これらの妊娠にんしんの月つきを数かぞえることができるか。これらが産うむ時ときを知しっているか。
39:3 これらは身みをかがめて子こを産うみ、そのはらみ子こを産うみいだす。
39:4 その子こは強つよくなって、野のに育そだち、出でて行いって、その親おやのもとに帰かえらない。
39:5 だれが野のろばを放はなって、自由じゆうにしたか。だれが野のろばのつなぎを解といたか。
39:6 わたしは荒野あらのをその家いえとして与あたえ、荒あれ地ちをそのすみかとして与あたえた。
39:7 これは町まちの騒さわぎをいやしめ、御者ぎょしゃの呼よぶ声こえを聞ききいれず、
39:8 山やまを牧場まきばとしてはせまわり、もろもろの青物あおものを尋たずね求もとめる。
39:9 野牛やぎゅうは快こころよくあなたに仕つかえ、あなたの飼葉かいばおけのかたわらにとどまるだろうか。
39:10 あなたは野牛やぎゅうに手綱たづなをつけてうねを歩あるかせることができるか、これはあなたに従したがって谷たにを耕たがやすであろうか。
39:11 その力ちからが強つよいからとて、あなたはこれに頼たのむであろうか。またあなたの仕事しごとをこれに任まかせるであろうか。
39:12 あなたはこれにたよって、あなたの穀物こくもつを打うち場ばに運はこび帰かえらせるであろうか。
39:13 だちょうは威勢いせいよくその翼つばさをふるう。しかしこれにはきれいな羽はねと羽毛うもうがあるか。
39:14 これはその卵たまごを土つちの中なかに捨すて置おき、これを砂すなのなかで暖あたため、
39:15 足あしでつぶされることも、野のの獣けものに踏ふまれることも忘わすれている。
39:16 これはその子こに無情むじょうであって、あたかも自分じぶんの子こでないようにし、その苦労くろうのむなしくなるをも恐おそれない。
39:17 これは神かみがこれに知恵ちえを授さづけず、悟さとりを与あたえなかったゆえである。
39:18 これがその身みを起おこして走はしる時ときには、馬うまをも、その乗のり手てをもあざける。
39:19 あなたは馬うまにその力ちからを与あたえることができるか。力ちからをもってその首くびを装よそおうことができるか。
39:20 あなたはこれをいなごのように、とばせることができるか。その鼻はなあらしの威力いりょくは恐おそろしい。
39:21 これは谷たにであがき、その力ちからに誇ほこり、みずから出でていって武器ぶきに向むかう。
39:22 これは恐おそれをあざ笑わらって、驚おどろくことなく、つるぎをさけて退しりぞくことがない。
39:23 矢筒やづつはその上うえに鳴なり、やりと投なげやりと、あいきらめく。
39:24 これはたけりつ、狂くるいつ、地ちをひとのみにし、ラッパの音おとが鳴なり渡わたっても、立たちどまることがない。
39:25 これはラッパの鳴なるごとにハアハアと言いい、遠とおくから戦たたかいをかぎつけ、隊長たいちょうの大声おおごえおよびときの声こえを聞きき知しる。
39:26 たかが舞まいあがり、その翼つばさをのべて南みなみに向むかうのは、あなたの知恵ちえによるのか、
39:27 わしがかけのぼり、その巣すを高たかい所ところにつくるのは、あなたの命令めいれいによるのか。
39:28 これは岩いわの上うえにすみかを構かまえ、岩いわのとがり、または険けわしい所ところにおり、
39:29 そこから獲物えものをうかがう。その目めの及およぶところは遠とおい。
39:30 そのひなもまた血ちを吸すう。おおよそ殺ころされた者もののある所ところには、これもそこにいる」。
第40章 40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、 40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、 40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、 40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。 40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。 第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
40:1 主しゅはまたヨブに答こたえて言いわれた、
40:2 「非難ひなんする者ものが全能者ぜんのうしゃと争あらそおうとするのか、神かみと論ろんずる者ものはこれに答こたえよ」。
40:3 そこで、ヨブは主しゅに答こたえて言いった、
40:4 「見みよ、わたしはまことに卑いやしい者ものです、なんとあなたに答こたえましょうか。ただ手てを口くちに当あてるのみです。
40:5 わたしはすでに一度ど言いいました、また言いいません、すでに二度ど言いいました、重かさねて申もうしません」。
40:6 主しゅはまたつむじ風かぜの中なかからヨブに答こたえられた、
40:7 「あなたは腰こしに帯おびして、男おとこらしくせよ。わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ。
40:8 あなたはなお、わたしに責任せきにんを負おわそうとするのか。あなたはわたしを非ひとし、自分じぶんを是ぜとしようとするのか。
40:9 あなたは神かみのような腕うでを持もっているのか、神かみのような声こえでとどろきわたることができるか。
40:10 あなたは威光いこうと尊厳そんげんとをもってその身みを飾かざり、栄光えいこうと華麗かれいとをもってその身みを装よそおってみよ。
40:11 あなたのあふるる怒いかりを漏もらし、すべての高たかぶる者ものを見みて、これを低ひくくせよ。
40:12 すべての高たかぶる者ものを見みて、これをかがませ、また悪人あくにんをその所ところで踏ふみつけ、
40:13 彼かれらをともにちりの中なかにうずめ、その顔かおを隠かくれた所ところに閉とじこめよ。
40:14 そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、あなたの右みぎの手てはあなたを救すくうことができるとしよう。
40:15 河馬かばを見みよ、これはあなたと同様どうようにわたしが造つくったもので、牛うしのように草くさを食くう。
40:16 見みよ、その力ちからは腰こしにあり、その勢いきおいは腹はらの筋すじにある。
40:17 これはその尾おを香柏こうはくのように動うごかし、そのももの筋すじは互たがいにからみ合あう。
40:18 その骨ほねは青銅せいどうの管くだのようで、その肋骨ろっこつは鉄てつの棒ぼうのようだ。
40:19 これは神かみのわざの第だい一のものであって、これを造つくった者ものがこれにつるぎを授さづけた。
40:20 山やまもこれがために食物しょくもつをいだし、もろもろの野のの獣けものもそこに遊あそぶ。
40:21 これは酸棗さんそうの木きの下したに伏ふし、葦あしの茂しげみ、または沼ぬまに隠かくれている。
40:22 酸棗さんそうの木きはその陰かげでこれをおおい、川かわの柳やなぎはこれをめぐり囲かこむ。
40:23 見みよ、たとい川かわが荒あれても、これは驚おどろかない。ヨルダンがその口くちに注そそぎかかっても、これはあわてない。
40:24 だれが、かぎでこれを捕とらえることができるか。だれが、わなでその鼻はなを貫つらぬくことができるか。
第41章 41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。 41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。 第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
41:1 あなたはつり針ばりでわにをつり出だすことができるか。糸いとでその舌したを押おさえることができるか。
41:2 あなたは葦あしのなわをその鼻はなに通とおすことができるか。つり針ばりでそのあごを突つき通とおすことができるか。
41:3 これはしきりに、あなたに願ねがい求もとめるであろうか。柔やわらかな言葉ことばをあなたに語かたるであろうか。
41:4 これはあなたと契約けいやくを結むすぶであろうか。あなたはこれを取とって、ながくあなたのしもべとすることができるであろうか。
41:5 あなたは鳥とりと戯たわむれるようにこれと戯たわむれ、またあなたのおとめたちのために、これをつないでおくことができるであろうか。
41:6 商人しょうにんの仲間なかまはこれを商品しょうひんとして、小売こうり商人しょうにんの間あいだに分わけるであろうか。
41:7 あなたは、もりでその皮かわを満みたし、やすでその頭あたまを突つき通とおすことができるか。
41:8 あなたの手てをこれの上うえに置おけ、あなたは戦たたかいを思おもい出だして、再ふたたびこれをしないであろう。
41:9 見みよ、その望のぞみはむなしくなり、これを見みてすら倒たおれる。
41:10 あえてこれを激げきする勇気ゆうきのある者ものはひとりもない。それで、だれがわたしの前まえに立たつことができるか。
41:11 だれが先さきにわたしに与あたえたので、わたしはこれに報むくいるのか。天あめが下したにあるものは、ことごとくわたしのものだ。
41:12 わたしはこれが全身ぜんしんと、その著いちじるしい力ちからと、その美うつくしい構造こうぞうについて黙だまっていることはできない。
41:13 だれがその上着うわぎをはぐことができるか。だれがその二重ふたえのよろいの間あいだにはいることができるか。
41:14 だれがその顔かおの戸とを開ひらくことができるか。そのまわりの歯はは恐おそろしい。
41:15 その背せは盾たての列れつでできていて、その堅かたく閉とじたさまは密封みっぷうしたように、
41:16 相互そうごに密接みっせつして、風かぜもその間あいだに、はいることができず、
41:17 互たがいに相連あいつらなり、固かたく着ついて離はなすことができない。
41:18 これが、くしゃみすれば光ひかりを発はっし、その目めはあけぼののまぶたに似にている。
41:19 その口くちからは、たいまつが燃もえいで、火花ひばなをいだす。
41:20 その鼻はなの穴あなからは煙けむりが出でてきて、さながら煮にえ立たつなべの水煙みずけむりのごとく、燃もえる葦あしの煙けむりのようだ。
41:21 その息いきは炭火すみびをおこし、その口くちからは炎ほのおが出でる。
41:22 その首くびには力ちからが宿やどっていて、恐おそろしさが、その前まえに踊おどっている。
41:23 その肉片にくへんは密接みっせつに相連あいつらなり、固かたく身みに着ついて動うごかすことができない。
41:24 その心臓しんぞうは石いしのように堅かたく、うすの下した石いしのように堅かたい。
41:25 その身みを起おこすときは勇士ゆうしも恐おそれ、その衝撃しょうげきによってあわて惑まどう。
41:26 つるぎがこれを撃うっても、きかない、やりも、矢やも、もりも用ようをなさない。
41:27 これは鉄てつを見みること、わらのように、青銅せいどうを見みること朽くち木きのようである。
41:28 弓矢ゆみやもこれを逃がにがすことができない。石いし投なげの石いしもこれには、わらくずとなる。
41:29 こん棒ぼうもわらくずのようにみなされ、投なげやりの響ひびきを、これはあざ笑わらう。
41:30 その下腹かふくは鋭するどいかわらのかけらのようで、麦むぎこき板いたのようにその身みを泥どろの上うえに伸のばす。
41:31 これは淵ふちをかなえのように沸わきかえらせ、海うみを香油こうゆのなべのようにする。
41:32 これは自分じぶんのあとに光ひかる道みちを残のこし、淵ふちをしらがのように思おもわせる。
41:33 地ちの上うえにはこれと並ならぶものなく、これは恐おそれのない者ものに造つくられた。
41:34 これはすべての高たかき者ものをさげすみ、すべての誇ほこり高たかぶる者ものの王おうである」。
第42章 42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、 42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、 「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。 42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。 42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。 42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。
42:1 そこでヨブは主しゅに答こたえて言いった、
42:2 「わたしは知しります、あなたはすべての事ことをなすことができ、またいかなるおぼしめしでも、あなたにできないことはないことを。
42:3 『無知むちをもって神かみの計はかりごとをおおうこの者ものはだれか』。それゆえ、わたしはみずから悟さとらない事ことを言いい、みずから知しらない、測はかり難がたい事ことを述のべました。
42:4 『聞きけ、わたしは語かたろう、わたしはあなたに尋たずねる、わたしに答こたえよ』。
42:5 わたしはあなたの事ことを耳みみで聞きいていましたが、今いまはわたしの目めであなたを拝見はいけんいたします。
42:6 それでわたしはみずから恨うらみ、ちり灰はいの中なかで悔くいます」。
42:7 主しゅはこれらの言葉ことばをヨブに語かたられて後のち、テマンびとエリパズに言いわれた、
「わたしの怒いかりはあなたとあなたのふたりの友ともに向むかって燃もえる。あなたがたが、わたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである。
42:8 それで今いま、あなたがたは雄牛おうし七頭とう、雄羊おひつじ七頭とうを取とって、わたしのしもべヨブの所ところへ行いき、あなたがたのために燔祭はんさいをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈いのるであろう。わたしは彼かれの祈いのりを受うけいれるによって、あなたがたの愚おろかを罰ばっすることをしない。あなたがたはわたしのしもべヨブのように正ただしい事ことをわたしについて述のべなかったからである」。
42:9 そこでテマンびとエリパズ、シュヒびとビルダデ、ナアマびとゾパルは行いって、主しゅが彼かれらに命めいじられたようにしたので、主しゅはヨブの祈いのりを受うけいれられた。
42:10 ヨブがその友人ゆうじんたちのために祈いのったとき、主しゅはヨブの繁栄はんえいをもとにかえし、そして主しゅはヨブのすべての財産ざいさんを二倍ばいに増まされた。
42:11 そこで彼かれのすべての兄弟きょうだい、すべての姉妹しまい、および彼かれの旧知きゅうちの者ものどもことごとく彼かれのもとに来きて、彼かれと共ともにその家いえで飲のみ食くいし、かつ主しゅが彼かれにくだされたすべての災わざわいについて彼かれをいたわり、慰なぐさめ、おのおの銀ぎん一ケシタと金きんの輪わ一つを彼かれに贈おくった。
42:12 主しゅはヨブの終おわりを初はじめよりも多おおく恵めぐまれた。彼かれは羊ひつじ一万四千頭とう、らくだ六千頭とう、牛うし一千くびき、雌めろば一千頭とうをもった。
42:13 また彼かれは男おとこの子こ七人にん、女おんなの子こ三人にんをもった。
42:14 彼かれはその第だい一の娘むすめをエミマと名なづけ、第だい二をケジアと名なづけ、第だい三をケレン・ハップクと名なづけた。
42:15 全国ぜんこくのうちでヨブの娘むすめたちほど美うつくしい女おんなはなかった。父ちちはその兄弟きょうだいたちと同様どうように嗣し業ぎょうを彼かれらにも与あたえた。
42:16 この後のち、ヨブは百四十年ねん生いきながらえて、その子ことその孫まごと四代だいまでを見みた。
42:17 ヨブは年老としおい、日ひ満みちて死しんだ。