文語訳舊約聖書(1953年版)(振り仮名付き)

章: 1  2  3  4

ルツ記

  第1章

1:1 士師さばきづかさををさむるときにあたりてくに饑饉ききんたありければ一箇ひとりひとそのつま二人ふたり男子むすこをひきつれてベテレヘムユダをりモアブのにゆきて寄寓とどま

1:2 そのひとはエリメレクそのつまはナオミその二人ふたり男子むすこはマロンおよびキリオンといふベテレヘムユダのエフラテびとなり 彼等かれらモアブのにいたりて其處そこにをりしが

1:3 ナオミのをつとエリメレクしにてナオミとその二人ふたり男子むすこのこさる

1:4 彼等かれらおのおのモアブの婦人をんなつまにめとる その一人ひとりはオルパといひ一人ひとりはルツといふ 彼處かしこにすむこと十ねんばかりにして

1:5 マロンとキリオンの二人ふたりもまたしねかくナオミは二人ふたり男子むすこをつとおくれしが

1:6 モアブのにてかれヱホバそのたみかへりみて食物しよくもつこれにたまふとききければその?よめとともにたちちてモアブのよりかへらんとし

1:7 そのをるところをいでたりその 二人ふたり?よめこれとともにあり 彼等かれらユダのにかへらんとみちにすすむ

1:8 ここにナオミその二人ふたり?よめにいひけるはなんぢらはゆきておのおのははいへにかへれ なんぢらがかのしにたるものわれとをあつかひしごとくにねがはくはヱホバまたなんぢらをくあつかひたまへ

1:9 ねがはくはヱホバなんぢらをして各々おのおのそのをつといへにて安身處おちつきどころをえせしめたまへと すなはちかれらに接吻くちつけしければ彼等かれらこゑをあげて

1:10 これにいひけるはわれなんぢとともになんぢたみにかへらんと

1:11 ナオミいひけるは女子むすめかへなんぢらなんぞわれともにゆくべけんや なんぢらのをつととなるべきなほわがはらにあらんや

1:12 女子むすめよかへりゆけ われおいたればをつとをもつをえざるなり 假設よしやわれ指望のぞみありといふとも今夜こよひをつとつともしかしてまたむとも

1:13 汝等なんぢらこれがためにその生長ひととなるまでまちをるべけんや これがためにをつとをもたずしてひきこもりをるべけんや 女子むすめしかすべきにあらず われはヱホバのののぞみてわれをせめしことをなんぢらのためにいたくうれふるなり

1:14 彼等かれらまたこゑをあげてしかしてオルパはそのしうとめ接吻くちつけせしがルツはこれはなれず

1:15 これによりてナオミまたいひけるはなんぢ??あひよめはそのたみとそのかみにかへりなんぢ??あひよめにしたがひてかへるべし

1:16 ルツいひけるはなんぢなんぢをはなれてかへることをわれうながすなかれわれなんぢのゆくところになんぢ宿やどるところにやどらん なんぢたみはわがたみなんぢかみはわがかみなり

1:17 なんぢしぬるところにわれしに其處そこはうむらるべし もし死別しにわかれにあらずしてわれなんぢとわかれなばヱホバわれにかくなしまたかさねてかくなしたまへ

1:18 かれ?よめかたこころをさだめておのれとともにきたらんとするをしかばこれものいふことをやめたり

1:19 かくて彼等かれら二人ふたりゆきてつひにベテレヘムにいたりしがベテレヘムにいたれるときまちこぞりてこれがためにさわぎたち婦女をんなどもこれはナオミなるやといふ

1:20 ナオミかれらにいひけるはわれをナオミ(たのし)とよぶなかれ マラ(くるし)とよぶべし 全能者ぜんのうしやいたわれくるしたまひたればなり

1:21 われ盈足みちたりいでたるにヱホバわれをしてむなしくなりてかえらしめたまふ ヱホバわれ全能者ぜんのうしやわれをなやましたまふに汝等なんぢらなんぞわれをナオミとよぶ

1:22 かくナオミそのモアブのよりかへれる ?よめモアブのをんなルツとともにかへきたれり すなはかれ大麥刈おほむぎかりはじめにベテレヘムにいたる

  第2章

2:1 ナオミにそのをつと知己しるひとあり すなはちエリメレクのやからにしておほいなるちからひとなり そのをボアズといふ

2:2 ここにモアブのをんなルツ、ナオミにいひけるはふわれをしてはたけにゆかしめよ われ何人なにびとかののまへにめぐみをうることあらばそのひとあとにしたがひてひろはんと ナオミかれ女子むすめゆくべしといひければ

2:3 すなはつひいたりて刈者かるものうしろにしたがひはたけにてひろかれおもはずもエリメレクのやからなるボアズのはたけうちにいたれり

2:4 ときにボアズ、ベテレヘムよりきたり その刈者等かるものども刈者等かるものどもふ ねがはくはヱホバ汝等なんぢらとともにいませと 彼等かれらすなはちこたへてねがはくはヱホバなんぢめぐみたまへといふ

2:5 ボアズその刈者かるものみまはしもべにいひけるはこれたれむすめなるや

2:6 刈者かるものみまはひとこたへてこれはモアブのをんなにしてモアブのよりナオミとともにかへりしものなるが

2:7 いふわれをして刈者かるものうしろにしたがひて禾束たばあひだをひろひあつめしめよと しかしてきたりてあさよりいまにいたるまでここにあり そのいへにやすみし暫時しばしのみ

2:8 ボアズ、ルツにいひけるは女子むすめほかはたけをひろひにゆくなかれ またここよりいづるなかれわがしもめはなれずしてここにをるべし

2:9 人々ひとびとかるところのはたけをとめてそのうしろにしたがひゆけ われ少者わかものなんぢにさはるなかれとめいぜしにあらずや なんぢかわときうつはところにゆきて少者わかものくめるをめと

2:10 かれすなはちふしはいこれにいひけるはわれ如何いかにしてなんぢまへ恩惠めぐみたるか なんぢ異邦人ことくにびとなるわれかへりみると

2:11 ボアズこたへてかれにいひけるはなんぢをつとしにたるより巳來このかたしうとめつくしたることなんぢがその父母ちちははおよびうまれたるくにはなれてしらずのたみきたりしことみなわれにきこえたり

2:12 ねがはくはヱホバなんぢ行爲わざむくいたまへ ねがはくはイスラエルのかみヱホバすなはなんぢがそのつばさしたよせんとてきたれるものなんぢ十分じふぶん報施むくいをたまはんことを

2:13 かれいひけるはしゆわれをしてなんぢまへめぐみをえせしめたまへ われなんぢ仕女つかへめ一人ひとりにもおよばざるになんぢかくわれなぐさかく仕女つかへめ懇切ねんごろかたりたまふ

2:14 ボアズかれにいひけるは食事しよくじときここにきたりてこのパンをくらかつなんぢ食物くひものをこのひたせよと かれすなはち刈者かるものかたはらしければボアズ?麥やきむぎをかれにあたかれくらひてそののこりをさ

2:15 かくてかれまたをひろはんとておきあがりければボアズその少者わかものめいじていふ かれをして禾束たばあひだにてもをひろはしめよ かれをはぢしむるなかれ

2:16 かつことさらかれがために抽落ぬきおとしおきてかれひろはしめよ しかるなかれ

2:17 かれかく薄暮よひまではたけをひろひてそのひろひしものうちしにおほむぎばかりありき

2:18 かれすなはちこれたづさへてまちにいりしうとめにそのひろひしものかつそのあきたるのちをさめおきたるものとりいだしてこれにあたふ

2:19 しうとめかれにいひけるはなんぢ今日けふ何處いづくにてをひろひしや いづれところにて工作はたらきしや ねがはくはなんぢ眷顧かへりみたるもの福祉さいはひあれ かれすなはちしうとめにそのたれところ工作はたらきしかをつげていふ 今日けふわれに工作はたらきをなさしめたるひとはボアズといふ

2:20 ナオミ?よめにいひけるはねがはくはヱホバのめぐみかれにいたかれいけものしねものとをすてずしてめぐみをほどこす ナオミまたかれにいひけるは其人そのひと我等われらちなみあるものにして我等われら贖業者あがなひびと一人ひとりなり

2:21 モアブのをんなルツいひけるはかれまたわれにかたりてなんぢわが穫刈かりいれことごとをはるまでわが少者わかものかたはらをはなるるなかれといへりと

2:22 ナオミその?よめルツにいひけるは女子むすめなんぢかれのしもめとともにいづるはさすればほかはたけにてひとらるることをまぬかれん

2:23 これによりてかれボアズのしもめかたはらはなれずしてをひろひ大麥刈おほむぎかり小麥刈こむぎかりをはりにまでおよぶ かれそのしうとめとともにをる

  第3章

3:1 ここしうとめナオミかれにいひけるは女子むすめわれなんぢ安身所おちつきどころもとめてなんぢさいはひならしむべきにあらずや

3:2 それなんぢともにありししもめもてかれボアズは我等われら知己しるひとなるにあらずや かれ今夜こよひ禾塲うちばにておほむぎ

3:3 されなんぢあらひあぶらをぬり衣服ころもをまとひて禾塲うちばくだなんぢをそのひとにしらせずしてその食飮くひのみをふるを

3:4 しかしかれときなんぢそのところとめおきいりてそのあし掀開まくりて其處そこせよ かれなんぢのなすべきことをなんぢにつげんと

3:5 ルツしうとめにいひけるはなんぢわれいふところはわれみななすべしと

3:6 すなはち禾塲うちばくだすべてそのしうとめめいぜしごとくなせり

3:7 さてボアズは食飮くひのみをなしてそのこころをたのしませゆきむぎつめところかたはらここおいかれひそかにゆきそのあし掀開まくり其處そこ

3:8 夜半よなかにおよびて其人そのひと畏懼おそれをおこしおきかへりてるに一人ひとりをんなそのあしかたふしゐたれば

3:9 なんぢたれなるやといふにをんなこたへてわれなんぢしもめルツなり なんぢすそをもてしもめおほひたまへ なんぢ贖業者あがなひびとなればなり

3:10 ボアズいひけるは女子むすめよねがはくはヱホバの恩典めぐみなんぢにいたれ なんぢのち誠實まことさきのよりもまさなんぢまづしきととめるとをいはわかひとしたがふことをせざればなり

3:11 されば女子むすめおそるるなかれ なんぢふところのことみなわれなんぢのためになすべし はわがまちひとみななんぢのかしこをんななるをしればなり

3:12 われはまことに贖業者あがなひびとなりといへどわれよりもちか贖業者あがなひびとあり

3:13 今夜こんやここ住宿とどまあしたにおよびてかれもしなんぢのためにあがなふならばかれあがなはしめよ されかれもしなんぢのためにあがなふことをこのまずばヱホバはわれなんぢのためにあがなはん あさまでここせよと

3:14 ルツあさまでそのあしかたふし誰彼たれかれわきがたきころおきあがる ボアズこのをんな禾塲うちばきたりしことをひとにしらしむべからずといへり

3:15 しかしていひけるはなんぢ袿衣うちきとりきたりてそれひろげよと すなはひろげければおほむぎ六升むますはかりてこれおはせたり かくしてかれまちにいたりぬ

3:16 ここにルツそのしうとめもといたるにしうとめいふ 女子むすめ如何いかがありしやと かれすなはち其人そのひとおのれになしたることをことごとくこれにつげて

3:17 しかしていひけるはかれ空手むなしでにてなんぢしうとめもとくなかれといひてこれ六升むますおほむぎわれにあたへたり

3:18 しうとめいひけるは女子むすめしてこと如何いかになりゆくかを彼人かのひと今日けふそのこと爲終なしをへずばやすんぜざるべければなり

  第4章

4:1 ここにボアズもんところにのぼりゆき其處そこしけるにさきにボアズのいひたる贖業者あがなひびとよぎりければこれなにがしきたりてここせよと すなはきたりて

4:2 ボアズまたまち長老としよりにんまね汝等なんぢらここせよといひければすなは

4:3 ときかれその贖業人あがなひびとにいひけるはモアブのよりかへりしナオミ我等われら兄弟きやうだいエリメレクの

4:4 われなんぢにつげしらせてここする人々ひとびとまへわがたみ長老としよりまへにてこれへといはんとおもへり なんぢもしこれあがなはんとおもはばあがなふべし されどもしこれあがなはずばわれつげてしらしめよ なんぢほかあがなものなければなり われはなんぢのつぎなりとかれわれこれをあがなはんといひければ

4:5 ボアズいふ なんぢナオミのよりそのにはしねものつまなりし モアブのをんなルツをもかひしねものをその?業さんげふのこすべきなり

4:6 贖業人あがなひびといひけるはわれはみづからあがなふあたはず おそらくはわが?業さんげふそこなはん なんぢみづからわれにかはりてあがなへ われあがなふことあたはざればなりと

4:7 むかしイスラエルにてものあがなあるひ交易かへんとすることにつきて萬事ばんじさだめたる慣例ならはしかくのごとし すなは此人このひとくつぬぎ彼人かのひとにわたせり これイスラエルのうちあかしなりき

4:8 ここによりてその贖業人あがなひびとボアズにむかひなんぢみづからふべしといひてそのくつぬぎたり

4:9 ボアズ長老としよりおよびすべてたみにいひけるは汝等なんぢら今日けふ見證あかしをなす われエリメレクのすべて所有ものおよびキリオンとマロンのすべて所有ものをナオミのよりかひたり

4:10 われまたマロンのつまなりしモアブのをんなルツをかひつまとなしかのしねものをその?業さんげふのこすべし これかのしねものその兄弟きやうだいうちとそのところもんたえざらしめんためなり 汝等なんぢら今日けふあかしをなす

4:11 もんにをる人々ひとびとおよび長老としよりたちいひけるはわれらあかしをなす ねがはくはヱホバなんぢいへにいるところの婦人をんなをしてかのイスラエルのいへつくりなしたるラケルとレアの二人ふたりのごとくならしめたまはんことを ねがはくはなんぢエフラタにてちからベテレヘムにてをあげよ

4:12 ねがはくはヱホバがこのわかをんなよりしてなんぢにたまはんところのよりなんぢいへかのタマルがユダにうみたるペレズのいへのごとくなるにいたれ

4:13 かくてボアズ、ルツをめとりてつまとなしかれところにいりければヱホバかれはらましめたまひてかれ男子なんしうめ

4:14 婦女をんなどもナオミにいひけるはヱホバはほむべきかな なんぢすてずして今日けふなんぢ贖業人あがなひびとあらしめたまふ そのイスラエルにあが

4:15 かれなんぢこころをなぐさむるものなんぢおいやしなものとならん なんぢあいするなんぢ?よめすなはち七にんよりもなんぢよきものこれをうみたり

4:16 ナオミそのをとりてこれふところこれ養育者もりとなる

4:17 その隣人となりびとなる婦女をんなたちこれにをつけてふ ナオミに男子をのこうまれたりと そのをオベデとよべかれはダビデのちちなるヱサイのちちなり

4:18 さてペレヅの系圖けいづのごとし ペレヅ、ヘヅロンを

4:19 ヘヅロン、ラムをみ ラム、アミナダブを

4:20 アミナダブ、ナシヨンをみ ナシヨン、サルモンを

4:21 サルモン、ボアズをみ ボアズ、オベデを

4:22 オベデ、ヱサイをみ ヱサイ、ダビデをうめり