口語訳聖書(振り仮名付き)

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ルカによる福音ふくいんしょ

第9章    Lk-Audio 

9:1 それからイエスは十二弟子でしあつめて、かれらにすべての悪霊あくれいせいし、病気びょうきをいやすちから権威けんいとをおさづけになった。

9:2 またかみくにつたえ、かつ病気びょうきをなおすためにつかわして

9:3 われた、「たびのためになにたずさえるな。つえもふくろもパンもぜにたず、また下着したぎも二まいつな。

9:4 また、どこかのいえにはいったら、そこにとどまっておれ。そしてそこからかけることにしなさい。

9:5 だれもあなたがたをむかえるものがいなかったら、そのまちくとき、かれらにたいする抗議こうぎのしるしに、あしからちりをはらおとしなさい」。

9:6 弟子でしたちはって、村々むらむらめぐあるき、いたるところ福音ふくいんつたえ、また病気びょうきをいやした。

9:7 さて、領主りょうしゅヘロデはいろいろな出来事できごとみみにして、あわてまどっていた。それは、あるひとたちは、ヨハネが死人しにんなかからよみがえったとい、

9:8 またあるひとたちは、エリヤがあらわれたとい、またほかのひとたちは、むかし預言者よげんしゃのひとりが復活ふっかつしたのだとっていたからである。

9:9 そこでヘロデがった、「ヨハネはわたしがすでにくびったのだが、こうしてうわさされているこのひとは、いったい、だれなのだろう」。そしてイエスにってみようとおもっていた。

9:10 使徒しとたちはかえってきて、自分じぶんたちのしたことをすべてイエスにはなした。それからイエスはかれらをれて、ベツサイダというまちへひそかに退しりぞかれた。

9:11 ところが群衆ぐんしゅうがそれとって、ついてきたので、これをむかえてかみくにのことをかたかせ、また治療ちりょうようするひとたちをいやされた。

9:12 それからかたむきかけたので、十二弟子でしがイエスのもとにきてった、「群衆ぐんしゅう解散かいさんして、まわりの村々むらむら部落ぶらくって宿やどり、食物しょくもつにいれるようにさせてください。わたしたちはこんなさびしいところにきているのですから」。

9:13 しかしイエスはわれた、「あなたがたの食物しょくもつをやりなさい」。かれらはった、「わたしたちにはパン五つとうお二ひきしかありません、このおおぜいのひとのために食物しょくもついにくかしなければ」。

9:14 というのは、おとこが五千にんばかりもいたからである。しかしイエスは弟子でしたちにわれた、「人々ひとびとをおおよそ五十にんずつのくみにして、すわらせなさい」。

9:15 かれらはそのとおりにして、みんなをすわらせた。

9:16 イエスは五つのパンと二ひきのうおとをり、てんあおいでそれを祝福しゅくふくしてさき、弟子でしたちにわたして群衆ぐんしゅうくばらせた。

9:17 みんなのものべて満腹まんぷくした。そして、そのあまりくずをあつめたら、十二かごあった。

9:18 イエスがひとりでいのっておられたとき、弟子でしたちがちかくにいたので、かれらにたずねてわれた、「群衆ぐんしゅうはわたしをだれとっているか」。

9:19 かれらはこたえてった、「バプテスマのヨハネだと、っています。しかしほかのひとたちは、エリヤだとい、またむかし預言者よげんしゃのひとりが復活ふっかつしたのだと、っているものもあります」。

9:20 かれらにわれた、「それでは、あなたがたはわたしをだれとうか」。ペテロがこたえてった、「かみのキリストです」。

9:21 イエスはかれらをいましめ、このことをだれにもうなとめいじ、そしてわれた、

9:22 「ひとかならおおくのくるしみをけ、長老ちょうろう祭司長さいしちょう律法りっぽう学者がくしゃたちにてられ、またころされ、そして三によみがえる」。

9:23 それから、みんなのものわれた、「だれでもわたしについてきたいとおもうなら、自分じぶんて、日々ひび自分じぶん十字架じゅうじかうて、わたしにしたがってきなさい。

9:24 自分じぶんいのちすくおうとおもものはそれをうしない、わたしのために自分じぶんいのちうしなものは、それをすくうであろう。

9:25 ひとぜん世界せかいをもうけても、自分じぶん自身じしんうしないまたはそんしたら、なんのとくになろうか。

9:26 わたしとわたしの言葉ことばとをじるものたいしては、ひともまた、自分じぶん栄光えいこうと、ちちせいなる御使みつかいとの栄光えいこうのうちにあらわれてるとき、そのものじるであろう。

9:27 よくいておくがよい、かみくにるまでは、あじわわないものが、ここにっているものなかにいる」。

9:28 これらのことをはなされたのち、八ほどたってから、イエスはペテロ、ヨハネ、ヤコブをれて、いのるためにやまのぼられた。

9:29 いのっておられるあいだに、みかおさまかわり、みころもがまばゆいほどにしろかがやいた。

9:30 するとよ、ふたりのひとがイエスとかたっていた。それはモーセとエリヤであったが、

9:31 栄光えいこうなかあらわれて、イエスがエルサレムでげようとする最後さいごのことについてはなしていたのである。

9:32 ペテロとその仲間なかまものたちとは熟睡じゅくすいしていたが、をさますと、イエスの栄光えいこう姿すがたと、ともっているふたりのひととをた。

9:33 このふたりがイエスをはなろうとしたとき、ペテロは自分じぶんなにっているのかわからないで、イエスにった、「先生せんせい、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋こやを三つてましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。

9:34 かれがこうっているあいだに、くもがわきおこってかれらをおおいはじめた。そしてそのくもかこまれたとき、かれらはおそれた。

9:35 するとくもなかからこえがあった、「これはわたしの、わたしのえらんだものである。これにけ」。

9:36 そしてこえんだとき、イエスがひとりだけになっておられた。弟子でしたちは沈黙ちんもくまもって、自分じぶんたちがたことについては、そのころだれにもはなさなかった。

9:37 翌日よくじつ一同いちどうやまりてると、おおぜいの群衆ぐんしゅうがイエスを出迎でむかえた。

9:38 すると突然とつぜん、あるひと群衆ぐんしゅうなかから大声おおごえをあげてった、「先生せんせい、おねがいです。わたしのむすこをてやってください。このはわたしのひとりむすこですが、

9:39 れいりつきますと、かれきゅうさけすのです。それから、れいかれをひきつけさせて、あわをかせ、かれよわてさせて、なかなかかないのです。

9:40 それで、お弟子でしたちに、このれいしてくださるようにねがいましたが、できませんでした」。

9:41 イエスはこたえてわれた、「ああ、なんという信仰しんこうな、まがった時代じだいであろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒いっしょにおられようか、またあなたがたに我慢がまんができようか。あなたのをここにれてきなさい」。

9:42 ところが、そのがイエスのところにときにも、悪霊あくれいかれたおして、きつけさせた。イエスはこのけがれたれいをしかりつけ、その子供こどもをいやして、父親ちちおやにおわたしになった。

9:43 人々ひとびとはみな、かみ偉大いだいちから非常ひじょうおどろいた。

みんなのものがイエスのしておられた数々かずかずこと不思議ふしぎおもっていると、弟子でしたちにわれた、

9:44 「あなたがたはこの言葉ことばみみにおさめてきなさい。ひと人々ひとびとわたされようとしている」。

9:45 しかし、かれらはなんのことかわからなかった。それがかれらにかくされていて、さとることができなかったのである。またかれらはそのことについてたずねるのをおそれていた。

9:46 弟子でしたちのあいだに、かれらのうちでだれがいちばんえらいだろうかということで、議論ぎろんがはじまった。

9:47 イエスはかれらのこころおもいを見抜みぬき、ひとりのおさりあげて自分じぶんのそばにたせ、かれらにわれた、

9:48 「だれでもこのおさをわたしののゆえにけいれるものは、わたしをけいれるのである。そしてわたしをけいれるものは、わたしをおつかわしになったかたをけいれるのである。あなたがたみんなのなかでいちばんちいさいものこそ、おおきいのである」。

9:49 するとヨハネがこたえてった、「先生せんせい、わたしたちはあるひとがあなたの使つかって悪霊あくれいしているのをましたが、そのひとはわたしたちの仲間なかまでないので、やめさせました」。

9:50 イエスはかれわれた、「やめさせないがよい。あなたがたに反対はんたいしないものは、あなたがたの味方みかたなのである」。

9:51 さて、イエスがてんげられるちかづいたので、エルサレムへこうと決意けついして、そのほうかおをむけられ、

9:52 自分じぶん先立さきだって使者ししゃたちをおつかわしになった。そしてかれらがサマリヤびとむらへはいってき、イエスのために準備じゅんびをしようとしたところ、

9:53 村人むらびとは、エルサレムへむかってすすんでかれるというので、イエスを歓迎かんげいしようとはしなかった。

9:54 弟子でしのヤコブとヨハネとはそれをった、「しゅよ、いかがでしょう。かれらをはらってしまうように、てんからをよびもとめましょうか」。

9:55 イエスはりかえって、かれらをおしかりになった。

9:56 そして一同いちどうはほかのむらった。

9:57 みちすすんでくと、あるひとがイエスにった、「あなたがおいでになるところならどこへでもしたがってまいります」。

9:58 イエスはそのひとわれた、「きつねにはあながあり、そらとりにはがある。しかし、ひとにはまくらするところがない」。

9:59 またほかのひとに、「わたしにしたがってきなさい」とわれた。するとそのひとった、「まず、ちちほうむりにかせてください」。

9:60 かれわれた、「その死人しにんほうむることは、死人しにんまかせておくがよい。あなたは、ってかみくにげひろめなさい」。

9:61 またほかのひとった、「しゅよ、したがってまいりますが、まずいえものわかれをいにかせてください」。

9:62 イエスはわれた、「をすきにかけてから、うしろをものは、かみくににふさわしくないものである」。 

第10章 

10:1 そののちしゅべつに七十二にんえらび、こうとしておられたすべてのまちむらへ、ふたりずつさきにおつかわしになった。

10:2 そのとき、かれらにわれた、「収穫しゅうかくおおいが、はたらびとすくない。だから、収穫しゅうかくしゅねがって、その収穫しゅうかくのためにはたらびとおくすようにしてもらいなさい。

10:3 さあ、きなさい。わたしがあなたがたをつかわすのは、小羊こひつじをおおかみのなかおくるようなものである。

10:4 財布さいふふくろもくつもってくな。だれにもみちであいさつするな。

10:5 どこかのいえにはいったら、まず『平安へいあんがこのいえにあるように』といなさい。

10:6 もし平安へいあんがそこにおれば、あなたがたのいの平安へいあんはそのひとうえにとどまるであろう。もしそうでなかったら、それはあなたがたのうえかえってるであろう。

10:7 それで、そのおないえとどまっていて、いえひとしてくれるものをいしなさい。はたらびとがそのむくいをるのは当然とうぜんである。いえからいえへとわたあるくな。

10:8 どのまちへはいっても、人々ひとびとがあなたがたをむかえてくれるなら、まえされるものをべなさい。

10:9 そして、そのまちにいる病人びょうにんをいやしてやり、『かみくにはあなたがたにちかづいた』といなさい。

10:10 しかし、どのまちへはいっても、人々ひとびとがあなたがたをむかえない場合ばあいには、大通おおどおりにっていなさい、

10:11 『わたしたちのあしについているこのまちのちりも、ぬぐいててく。しかし、かみくにちかづいたことは、承知しょうちしているがよい』。

10:12 あなたがたにっておく。そのには、このまちよりもソドムのほうえやすいであろう。

10:13 わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちのなかでなされたちからあるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、かれらはとうのむかしに、荒布あらぬのをまといはいなかにすわって、あらためたであろう。

10:14 しかし、さばきのには、ツロとシドンのほうがおまえたちよりも、えやすいであろう。

10:15 ああ、カペナウムよ、おまえはてんにまでげられようとでもいうのか。黄泉よみにまでおとされるであろう。

10:16 あなたがたにしたがものは、わたしにしたがうのであり、あなたがたをこばものは、わたしをこばむのである。そしてわたしをこばものは、わたしをおつかわしになったかたをこばむのである」。

10:17 七十二にんよろこんでかえってきてった、「しゅよ、あなたのによっていたしますと、悪霊あくれいまでがわたしたちに服従ふくじゅうします」。

10:18 かれらにわれた、「わたしはサタンが電光でんこうのようにてんからちるのをた。

10:19 わたしはあなたがたに、へびやさそりをみつけ、てきのあらゆるちから権威けんいさづけた。だから、あなたがたにがいをおよぼすものはまったくいであろう。

10:20 しかし、れいがあなたがたに服従ふくじゅうすることをよろこぶな。むしろ、あなたがたのてんにしるされていることをよろこびなさい」。

10:21 そのとき、イエスは聖霊せいれいによってよろこびあふれてわれた、「天地てんちしゅなるちちよ。あなたをほめたたえます。これらのこと知恵ちえのあるものかしこものかくして、おさにあらわしてくださいました。ちちよ、これはまことに、みこころにかなったことでした。

10:22 すべてのことちちからわたしにまかせられています。そして、がだれであるかは、ちちのほかっているものはありません。またちちがだれであるかは、と、ちちをあらわそうとしてえらんだものとのほか、だれもっているものはいません」。

10:23 それから弟子でしたちのほうりむいて、ひそかにわれた、「あなたがたがていることをは、さいわいである。

10:24 あなたがたにっておく。おおくの預言者よげんしゃおうたちも、あなたがたのていることをようとしたが、ることができず、あなたがたのいていることをこうとしたが、けなかったのである」。

10:25 するとそこへ、ある律法りっぽう学者がくしゃあらわれ、イエスをこころみようとしてった、「先生せんせいなにをしたら永遠えいえん生命せいめいけられましょうか」。

10:26 かれわれた、「律法りっぽうにはなんといてあるか。あなたはどうむか」。

10:27 かれこたえてった、「『こころをつくし、精神せいしんをつくし、ちからをつくし、おもいをつくして、しゅなるあなたのかみあいせよ』。また、『自分じぶんあいするように、あなたのとなびとあいせよ』とあります」。

10:28 かれわれた、「あなたのこたえただしい。そのとおりおこないなさい。そうすれば、いのちがられる」。

10:29 するとかれ自分じぶん立場たちば弁護べんごしようとおもって、イエスにった、「では、わたしのとなびととはだれのことですか」。

10:30 イエスがこたえてわれた、「あるひとがエルサレムからエリコにくだって途中とちゅう強盗ごうとうどもがかれおそい、その着物きものをはぎり、きずわせ、半殺はんごろしにしたまま、った。

10:31 するとたまたま、ひとりの祭司さいしがそのみちくだってきたが、このひとると、こうがわとおってった。

10:32 同様どうように、レビひともこの場所ばしょにさしかかってきたが、かれるとこうがわとおってった。

10:33 ところが、あるサマリヤびとたびをしてこのひとのところをとおりかかり、かれどくおもい、

10:34 近寄ちかよってきてそのきずにオリブとぶどうしゅとをそそいでほうたいをしてやり、自分じぶん家畜かちくせ、宿屋やどやれてって介抱かいほうした。

10:35 翌日よくじつ、デナリ二つをして宿屋やどや主人しゅじん手渡てわたし、『このひとてやってください。費用ひようがよけいにかかったら、かえりがけに、わたしが支払しはらいます』とった。

10:36 この三にんのうち、だれが強盗ごうとうおそわれたひととなびとになったとおもうか」。

10:37 かれった、「そのひと慈悲じひぶかおこないをしたひとです」。そこでイエスはわれた、「あなたもっておなじようにしなさい」。

10:38 一同いちどうたびつづけているうちに、イエスがあるむらへはいられた。するとマルタというおんながイエスをいえむかれた。

10:39 このおんなにマリヤといういもうとがいたが、しゅあしもとにすわって、御言みことばっていた。

10:40 ところが、マルタは接待せったいのことでいそがしくてこころをとりみだし、イエスのところにきてった、「しゅよ、いもうとがわたしだけに接待せったいをさせているのを、なんともおおもいになりませんか。わたしの手伝てつだいをするようにいもうとにおっしゃってください」。

10:41 しゅこたえてわれた、「マルタよ、マルタよ、あなたはおおくのことにこころくばっておもいわずらっている。

10:42 しかし、くてならぬものはおおくはない。いや、一つだけである。マリヤはそのほうえらんだのだ。そしてそれは、彼女かのじょからってはならないものである」。 

第11章 

11:1 また、イエスはあるところいのっておられたが、それがおわったとき、弟子でしのひとりがった、「しゅよ、ヨハネがその弟子でしたちにおしえたように、わたしたちにもいのることをおしえてください」。

11:2 そこでかれらにわれた、「いのるときには、こういなさい、『ちちよ、御名みながあがめられますように。御国みくにがきますように。

11:3 わたしたちのごとの食物しょくもつを、日々ひびあたえください。

11:4 わたしたちに負債ふさいのあるものみなゆるしますから、わたしたちのつみをもおゆるしください。わたしたちをこころみにわせないでください』」。

11:5 そしてかれらにわれた、「あなたがたのうちのだれかに、友人ゆうじんがあるとして、そのひとのところへ真夜中まよなかき、『ともよ、パンを三つしてください。

11:6 ともだちが旅先たびさきからわたしのところにいたのですが、なにすものがありませんから』とった場合ばあい

11:7 かれうちから、『面倒めんどうをかけないでくれ。もうめてしまったし、子供こどもたちもわたしと一緒いっしょとこにはいっているので、いまきてなにもあげるわけにはいかない』とうであろう。

11:8 しかし、よくきなさい、友人ゆうじんだからというのではきてあたえないが、しきりにねがうので、がって必要ひつようなものをしてくれるであろう。

11:9 そこでわたしはあなたがたにう。もとめよ、そうすれば、あたえられるであろう。さがせ、そうすればいだすであろう。もんをたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。

11:10 すべてもとめるものさがものいだし、もんをたたくものはあけてもらえるからである。

11:11 あなたがたのうちで、ちちであるものは、そのうおもとめるのに、うおかわりにへびをあたえるだろうか。

11:12 たまごもとめるのに、さそりをあたえるだろうか。

11:13 このように、あなたがたはわるものであっても、自分じぶん子供こどもには、おくものをすることをっているとすれば、てんちちはなおさら、もとめてもの聖霊せいれいくださらないことがあろうか」。

11:14 さて、イエスが悪霊あくれいしておられた。それは、おしのれいであった。悪霊あくれいくと、おしがものうようになったので、群衆ぐんしゅう不思議ふしぎおもった。

11:15 そのなかのある人々ひとびとが、「かれ悪霊あくれいのかしらベルゼブルによって、悪霊あくれいどもをしているのだ」とい、

11:16 またほかの人々ひとびとは、イエスをこころみようとして、てんからのしるしをもとめた。

11:17 しかしイエスは、かれらのおもいを見抜みぬいてわれた、「おおよそくに内部ないぶ分裂ぶんれつすれば自滅じめつしてしまい、またいえわかあらそえばたおれてしまう。

11:18 そこでサタンも内部ないぶ分裂ぶんれつすれば、そのくにはどうしてけよう。あなたがたはわたしがベルゼブルによって悪霊あくれいしているとうが、

11:19 もしわたしがベルゼブルによって悪霊あくれいすとすれば、あなたがたの仲間なかまはだれによってすのであろうか。だから、かれらがあなたがたをさばくものとなるであろう。

11:20 しかし、わたしがかみゆびによって悪霊あくれいしているのなら、かみくにはすでにあなたがたのところにきたのである。

11:21 つよひと十分じゅうぶん武装ぶそうして自分じぶん邸宅ていたくまもっているかぎり、そのもの安全あんぜんである。

11:22 しかし、もっとつよものおそってきてかれてば、そのたのみにしていた武具ぶぐうばって、その分捕ぶんどりひんけるのである。

11:23 わたしの味方みかたでないものは、わたしに反対はんたいするものであり、わたしとともあつめないものは、らすものである。

11:24 けがれたれいひとからると、やすもとめてみずところあるきまわるが、つからないので、てきたもといえかえろうとって、

11:25 かえってると、そのいえはそうじがしてあるうえかざりつけがしてあった。

11:26 そこでまたって、自分じぶん以上いじょうわるの七つのれいれてきてなかにはいり、そこにむ。そうすると、そのひとのち状態じょうたいはじめよりももっとわるくなるのである」。

11:27 イエスがこうはなしておられるとき、群衆ぐんしゅうなかからひとりのおんなこえりあげてった、「あなたを宿やどしたたい、あなたがわれた乳房ちぶさは、なんとめぐまれていることでしょう」。

11:28 しかしイエスはわれた、「いや、めぐまれているのは、むしろ、かみことばいてそれをまもひとたちである」。

11:29 さて群衆ぐんしゅうむらがりあつまったので、イエスはかたされた、「この時代じだい邪悪じゃあく時代じだいである。それはしるしをもとめるが、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしもあたえられないであろう。

11:30 というのは、ニネベの人々ひとびとたいしてヨナがしるしとなったように、ひともこの時代じだいたいしてしるしとなるであろう。

11:31 みなみ女王じょおうが、いま時代じだい人々ひとびとともにさばきのって、かれらをつみさだめるであろう。なぜなら、彼女かのじょはソロモンの知恵ちえくために、はてからはるばるきたからである。しかしよ、ソロモンにまさるものがここにいる。

11:32 ニネベの人々ひとびとが、いま時代じだい人々ひとびとともにさばきのって、かれらをつみさだめるであろう。なぜなら、ニネベの人々ひとびとはヨナの宣教せんきょうによってあらためたからである。しかしよ、ヨナにまさるものがここにいる。

11:33 だれもあかりをともして、それを穴倉あなぐらなかますしたくことはしない。むしろはいってひとたちに、そのあかりがえるように、燭台しょくだいうえにおく。

11:34 あなたのは、からだのあかりである。あなたのんでおれば、全身ぜんしんあかるいが、がわるければ、からだもくらい。

11:35 だから、あなたのうちなるひかりくらくならないように注意ちゅういしなさい。

11:36 もし、あなたのからだ全体ぜんたいあかるくて、くら部分ぶぶんすこしもなければ、ちょうど、あかりがかがやいてあなたをてらときのように、全身ぜんしんあかるくなるであろう」。

11:37 イエスがかたっておられたとき、あるパリサイびとが、自分じぶんいえ食事しょくじをしていただきたいともうたので、はいって食卓しょくたくにつかれた。

11:38 ところが、食前しょくぜんにまずあらうことをなさらなかったのをて、そのパリサイびと不思議ふしぎおもった。

11:39 そこでしゅかれわれた、「いったい、あなたがたパリサイびとは、さかずきぼん外側そとがわをきよめるが、あなたがたの内側うちがわ貪欲どんよく邪悪じゃあくとでちている。

11:40 おろかなものたちよ、外側そとがわつくったかたは、また内側うちがわ つくられたではないか。

11:41 ただ、内側うちがわにあるものをきよめなさい。そうすれば、いっさいがあなたがたにとって、きよいものとなる。

11:42 しかし、あなたほうパリサイびとは、わざわいである。はっか、うんこう、あらゆる野菜やさいなどの十ぶんの一をみやおさめておりながら、かみたいするあいとをなおざりにしている。それもなおざりにはできないが、これはおこなわねばならない。

11:43 あなたがたパリサイびとは、わざわいである。会堂かいどう上席じょうせき広場ひろばでの敬礼けいれいこのんでいる。

11:44 あなたがたは、わざわいである。人目ひとめにつかないはかのようなものである。そのうえあるいても人々ひとびとづかないでいる」。

11:45 ひとりの律法りっぽう学者がくしゃがイエスにこたえてった、「先生せんせい、そんなことをわれるのは、わたしたちまでも侮辱ぶじょくすることです」。

11:46 そこでわれた、「あなたがた律法りっぽう学者がくしゃも、わざわいである。れない重荷おもにひとわせながら、自分じぶんではそのゆびぽんでもれようとしない。

11:47 あなたがたは、わざわいである。預言者よげんしゃたちのてるが、しかしかれらをころしたのは、あなたがたの先祖せんぞであったのだ。

11:48 だから、あなたがたは、自分じぶん先祖せんぞのしわざに同意どういする証人しょうにんなのだ。先祖せんぞかれらをころし、あなたがたがそのてるのだから。

11:49 それゆえに、『かみ知恵ちえ』もっている、『わたしは預言者よげんしゃ使徒しととをかれらにつかわすが、かれらはそのうちのあるものころしたり、迫害はくがいしたりするであろう』。

11:50 それで、アベルのから祭壇さいだん神殿しんでんとのあいだころされたザカリヤのいたるまで、はじめからながされてきたすべての預言者よげんしゃについて、この時代じだいがその責任せきにんわれる。

11:51 そうだ、あなたがたにっておく、この時代じだいがその責任せきにんわれるであろう。

11:52 あなたがた律法りっぽう学者がくしゃは、わざわいである。知識ちしきのかぎをりあげて、自分じぶんがはいらないばかりか、はいろうとするひとたちをさまたげてきた」。

11:53 イエスがそこをかれると、律法りっぽう学者がくしゃやパリサイびとは、はげしくり、いろいろなこといかけて、

11:54 イエスのくちからなにいがかりをようと、ねらいはじめた。 

第12章 

12:1 そのあいだに、おびただしい群衆ぐんしゅうが、たがいうほどにむらがってきたが、イエスはまず弟子でしたちにかたりはじめられた、「パリサイびとのパンだね、すなわちかれらの偽善ぎぜんをつけなさい。

12:2 おおいかぶされたもので、あらわれてこないものはなく、かくれているもので、られてこないものはない。

12:3 だから、あなたがたがくらやみでったことは、なんでもみなあかるみでかれ、密室みっしつみみにささやいたことは、屋根やねうえいひろめられるであろう。

12:4 そこでわたしのともであるあなたがたにうが、からだをころしても、そのあとでそれ以上いじょうなにもできないものどもをおそれるな。

12:5 おそるべきものがだれであるか、おしえてあげよう。ころしたあとで、さら地獄じごく権威けんいのあるかたをおそれなさい。そうだ、あなたがたにっておくが、そのかたをおそれなさい。

12:6 五のすずめは二アサリオンでられているではないか。しかも、その一かみのみまえでわすれられてはいない。

12:7 そのうえ、あなたがたのあたままでも、みなかぞえられている。おそれることはない。あなたがたはおおくのすずめよりも、まさったものである。

12:8 そこで、あなたがたにう。だれでもひとまえでわたしをけいれるものを、ひとかみ使つかいたちのまえけいれるであろう。

12:9 しかし、ひとまえでわたしをこばものは、かみ使つかいたちのまえこばまれるであろう。

12:10 また、ひとさからうものはゆるされるであろうが、聖霊せいれいをけがすものは、ゆるされることはない。

12:11 あなたがたが会堂かいどう役人やくにん高官こうかんまえへひっぱられてった場合ばあいには、なにをどう弁明べんめいしようか、なにおうかと心配しんぱいしないがよい。

12:12 うべきことは、聖霊せいれいがそのときおしえてくださるからである」。

12:13 群衆ぐんしゅうなかのひとりがイエスにった、「先生せんせい、わたしの兄弟きょうだいに、遺産いさんけてくれるようにおっしゃってください」。

12:14 かれわれた、「ひとよ、だれがわたしをあなたがたの裁判人さいばんにんまたは分配ぶんぱいにんてたのか」。

12:15 それから人々ひとびとにむかってわれた、「あらゆる貪欲どんよくたいしてよくよく警戒けいかいしなさい。たといたくさんのものっていても、ひとのいのちは、ものにはよらないのである」。

12:16 そこで一つのたとえかたられた、「ある金持かねもちはたけ豊作ほうさくであった。

12:17 そこでかれこころなかで、『どうしようか、わたしの作物さくもつをしまっておくところがないのだが』とおもいめぐらして

12:18 った、『こうしよう。わたしのくらりこわし、もっとおおきいのをてて、そこに穀物こくもつ食糧しょくりょう全部ぜんぶしまいもう。

12:19 そして自分じぶんたましいおう。たましいよ、おまえには長年ながねんぶん食糧しょくりょうがたくさんたくわえてある。さあ安心あんしんせよ、え、め、たのしめ』。

12:20 するとかみかれわれた、『おろかなものよ、あなたのたましい今夜こんやのうちにもられるであろう。そしたら、あなたが用意よういしたものは、だれのものになるのか』。

12:21 自分じぶんのためにたからんでかみたいしてまないものは、これとおなじである」。

12:22 それから弟子でしたちにわれた、「それだから、あなたがたにっておく。なにべようかと、いのちのことでおもいわずらい、なにようかとからだのことでおもいわずらうな。

12:23 いのち食物しょくもつにまさり、からだは着物きものにまさっている。

12:24 からすのことをかんがえてよ。まくことも、ることもせず、また、納屋なやもなくくらもない。それだのに、かみかれらをやしなっていてくださる。あなたがたはとりよりも、はるかにすぐれているではないか。

12:25 あなたがたのうち、だれがおもいわずらったからとて、自分じぶん寿命じゅみょうをわずかでもばすことができようか。

12:26 そんなちいさなことさえできないのに、どうしてほかのことをおもいわずらうのか。

12:27 はなのことをかんがえてるがよい。つむぎもせず、りもしない。しかし、あなたがたにうが、栄華えいがをきわめたときのソロモンでさえ、このはなの一つほどにも着飾きかざってはいなかった。

12:28 きょうはにあって、あすはれられるくさでさえ、かみはこのようによそおってくださるのなら、あなたがたに、それ以上いじょうよくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰しんこううすものたちよ。

12:29 あなたがたも、なにべ、なにもうかと、あくせくするな、また使つかうな。

12:30 これらのものはみな、この異邦人いほうじんせつもとめているものである。あなたがたのちちは、これらのものがあなたがたに必要ひつようであることを、ごぞんじである。

12:31 ただ、御国みくにもとめなさい。そうすれば、これらのものはえてあたえられるであろう。

12:32 おそれるな、ちいさいれよ。御国みくにくださることは、あなたがたのちちのみこころなのである。

12:33 自分じぶんものって、ほどこしなさい。自分じぶんのためにふるびることのない財布さいふをつくり、盗人ぬすびと近寄ちかよらず、むしやぶらないてんに、きることのないたからをたくわえなさい。

12:34 あなたがたのたからのあるところには、こころもあるからである。

12:35 こしおびをしめ、あかりをともしていなさい。

12:36 主人しゅじんこんえんからかえってきてをたたくとき、すぐあけてあげようとっているひとのようにしていなさい。

12:37 主人しゅじんかえってきたとき、さましているのをられるしもべたちは、さいわいである。よくっておく。主人しゅじんおびをしめてしもべたちを食卓しょくたくにつかせ、すすって給仕きゅうじをしてくれるであろう。

12:38 主人しゅじん夜中よなかごろ、あるいは夜明よあけごろにかえってきても、そうしているのをられるなら、そのひとたちはさいわいである。

12:39 このことを、わきまえているがよい。いえ主人しゅじんは、盗賊とうぞくがいつごろるかわかっているなら、自分じぶんいえらせはしないであろう。

12:40 あなたがたも用意よういしていなさい。おもいがけないときひとるからである」。

12:41 するとペテロがった、「しゅよ、このたとえはなしておられるのはわたしたちのためなのですか。それとも、みんなのもののためなのですか」。

12:42 そこでしゅわれた、「主人しゅじんが、召使めしつかいたちのうえてて、ときおうじてさだめの食事しょくじをそなえさせる忠実ちゅうじつ思慮しりょぶか家令かれいは、いったいだれであろう。

12:43 主人しゅじんかえってきたとき、そのようにつとめているのをられるしもべは、さいわいである。

12:44 よくっておくが、主人しゅじんはそのしもべてて自分じぶんぜん財産ざいさん管理かんりさせるであろう。

12:45 しかし、もしそのしもべが、主人しゅじんかえりがおそいとこころなかおもい、男女だんじょ召使めしつかいたちをちたたき、そしてべたり、んだりしていはじめるならば、

12:46 そのしもべ主人しゅじんおもいがけないがつかないときかえってるであろう。そして、かれ厳罰げんばつしょして、忠実ちゅうじつなものたちとおなにあわせるであろう。

12:47 主人しゅじんのこころをっていながら、それにしたがって用意よういもせずつとめもしなかったしもべは、おおくむちたれるであろう。

12:48 しかし、らずにたれるようなことをしたものは、たれほうすくないだろう。おおあたえられたものからはおおもとめられ、おおまかせられたものからはさらおお要求ようきゅうされるのである。

12:49 わたしは、地上ちじょうとうじるためにきたのだ。がすでにえていたならと、わたしはどんなにねがっていることか。

12:50 しかし、わたしにはけねばならないバプテスマがある。そして、それをけてしまうまでは、わたしはどんなにかくるしいおもいをすることであろう。

12:51 あなたがたは、わたしが平和へいわをこの地上ちじょうにもたらすためにきたとおもっているのか。あなたがたにっておく。そうではない。むしろ分裂ぶんれつである。

12:52 というのは、いまからのちは、一家いっかうちで五にんあいわかれて、三にんはふたりに、ふたりは三にん対立たいりつし、

12:53 またちちに、ちちに、ははむすめに、むすめははに、しゅうとめはよめに、よめはしゅうとめに、対立たいりつするであろう」。

12:54 イエスはまた群衆ぐんしゅうたいしてもわれた、「あなたがたは、くも西にしおこるのをるとすぐ、にわかあめがやってる、とう。はたしてそのとおりになる。

12:55 それから南風みなみかぜくと、つくなるだろう、とう。はたしてそのとおりになる。

12:56 偽善者ぎぜんしゃよ、あなたがたは天地てんち模様もよう見分みわけることをりながら、どうしていま時代じだい見分みわけることができないのか。

12:57 また、あなたがたは、なぜただしいことを自分じぶん判断はんだんしないのか。

12:58 たとえば、あなたをうったえるひと一緒いっしょ役人やくにんのところへくときには、途中とちゅうでそのひと和解わかいするようにつとめるがよい。そうしないと、そのひとはあなたを裁判官さいばんかんのところへひっぱってき、裁判官さいばんかんはあなたを獄吏ごくりわたし、獄吏ごくりはあなたをごくむであろう。

12:59 わたしはってく、最後さいごの一レプタまでも支払しはらってしまうまでは、けっしてそこからることはできない」。 

第13章 

13:1 ちょうどそのとき、ある人々ひとびとがきて、ピラトがガリラヤびとたちのながし、それをかれらの犠牲ぎせいぜたことを、イエスにらせた。

13:2 そこでイエスはこたえてわれた、「それらのガリラヤびとが、そのような災難さいなんにあったからといって、のすべてのガリラヤびと以上いじょうつみふかかったとおもうのか。

13:3 あなたがたにうが、そうではない。あなたがたもあらためなければ、みなおなじようにほろびるであろう。

13:4 また、シロアムのとうたおれたためにおしころされたあの十八にんは、エルサレムのぜん住民じゅうみん以上いじょうつみ負債ふさいがあったとおもうか。

13:5 あなたがたにうが、そうではない。あなたがたもあらためなければ、みなおなじようにほろびるであろう」。

13:6 それから、このたとえかたられた、「あるひと自分じぶんのぶどうえんにいちじくのえていたので、さがしにきたがつからなかった。

13:7 そこで園丁えんていった、『わたしは三年間ねんかんもとめて、このいちじくののところにきたのだが、いまだにあたらない。そのたおしてしまえ。なんのために、土地とちをむだにふさがせてくのか』。

13:8 すると園丁えんていこたえてった、『ご主人様しゅじんさま、ことしも、そのままにしていてください。そのまわりをって肥料ひりょうをやってますから。

13:9 それで来年らいねんがなりましたら結構けっこうです。もしそれでもだめでしたら、たおしてください』」。

13:10 安息日あんそくにちに、ある会堂かいどうおしえておられると、

13:11 そこに十八年間ねんかん病気びょうきれいにつかれ、かがんだままで、からだをばすことのまったくできないおんながいた。

13:12 イエスはこのおんなて、びよせ、「おんなよ、あなたの病気びょうきはなおった」とって、

13:13 をそのうえかれた。するとちどころに、そのからだがまっすぐになり、そしてかみをたたえはじめた。

13:14 ところが会堂司かいどうづかさは、イエスが安息日あんそくにち病気びょうきをいやされたことをいきどおり、群衆ぐんしゅうにむかってった、「はたらくべき六日むいかある。そのあいだに、なおしてもらいにきなさい。安息日あんそくにちにはいけない」。

13:15 しゅはこれにこたえてわれた、「偽善者ぎぜんしゃたちよ、あなたがたはだれでも、安息日あんそくにちであっても、自分じぶんうしやろばを家畜かちく小屋こやからいて、みずませにしてやるではないか。

13:16 それなら、十八年間ねんかんもサタンにしばられていた、アブラハムのむすめであるこのおんなを、安息日あんそくにちであっても、その束縛そくばくからいてやるべきではなかったか」。

13:17 こうわれたので、イエスに反対はんたいしていたひとたちはみなった。そして群衆ぐんしゅうはこぞって、イエスがなされたすべてのすばらしいみわざをよろこんだ。

13:18 そこでわれた、「かみくになにているか。またそれをなににたとえようか。

13:19 一つぶのからしだねのようなものである。あるひとがそれをってにわにまくと、そだってとなり、そらとりもそのえだ宿やどるようになる」。

13:20 またわれた、「かみくになににたとえようか。

13:21 パンだねのようなものである。おんながそれをって三こななかぜると、全体ぜんたいがふくらんでくる」。

13:22 さてイエスはおしえながら町々まちまち村々むらむらとおぎ、エルサレムへとたびつづけられた。

13:23 すると、あるひとがイエスに、「しゅよ、すくわれるひとすくないのですか」とたずねた。

13:24 そこでイエスは人々ひとびとにむかってわれた、「せま戸口とぐちからはいるようにつとめなさい。事実じじつ、はいろうとしても、はいれないひとおおいのだから。

13:25 いえ主人しゅじんってじてしまってから、あなたがたがそとをたたきはじめて、『ご主人様しゅじんさま、どうぞあけてください』とっても、主人しゅじんはそれにこたえて、『あなたがたがどこからきたひとなのか、わたしはらない』とうであろう。

13:26 そのとき、『わたしたちはあなたとご一緒いっしょいしました。また、あなたはわたしたちの大通おおどおりでおしえてくださいました』としても、

13:27 かれは、『あなたがたがどこからきたひとなのか、わたしはらない。悪事あくじはたらものどもよ、みんなってしまえ』とうであろう。

13:28 あなたがたは、アブラハム、イサク、ヤコブやすべての預言者よげんしゃたちが、かみくににはいっているのに、自分じぶんたちはそとされることになれば、そこでさけんだり、がみをしたりするであろう。

13:29 それから人々ひとびとが、ひがしから西にしから、またみなみからきたからきて、かみくに宴会えんかいせきにつくであろう。

13:30 こうしてあとのものでさきになるものがあり、また、さきのものであとになるものもある」。

13:31 ちょうどそのとき、あるパリサイびとたちが、イエスに近寄ちかよってきてった、「ここからきなさい。ヘロデがあなたをころそうとしています」。

13:32 そこでかれらにわれた、「あのきつねのところへってこうえ、『よ、わたしはきょうもあすも悪霊あくれいし、また、病気びょうきをいやし、そして三にわざをえるであろう。

13:33 しかし、きょうもあすも、またそのつぎも、わたしはすすんでかねばならない。預言者よげんしゃがエルサレム以外いがいぬことは、ありないからである』。

13:34 ああ、エルサレム、エルサレム、預言者よげんしゃたちをころし、おまえにつかわされた人々ひとびといしころものよ。ちょうどめんどりがつばさしたにひなをあつめるように、わたしはおまえのらをいくたびあつめようとしたことであろう。それだのに、おまえたちはおうじようとしなかった。

13:35 よ、おまえたちのいえ見捨みすてられてしまう。わたしはってく、

しゅによってきたるものに、祝福しゅくふくあれ』
とおまえたちがときるまでは、ふたたびわたしにうことはないであろう」。 

第14章 

14:1 ある安息日あんそくにちのこと、食事しょくじをするために、あるパリサイのかしらのいえにはいってかれたが、人々ひとびとはイエスの様子ようすをうかがっていた。

14:2 するとそこに、水腫すいしゅをわずらっているひとが、みまえにいた。

14:3 イエスは律法りっぽう学者がくしゃやパリサイびとたちにむかってわれた、「安息日あんそくにちひとをいやすのは、ただしいことかどうか」。

14:4 かれらはだまっていた。そこでイエスはそのひといていやしてやり、そしておかえしになった。

14:5 それからかれらにわれた、「あなたがたのうちで、自分じぶんのむすこかうし井戸いどんだなら、安息日あんそくにちだからといって、すぐにげてやらないものがいるだろうか」。

14:6 かれらはこれにたいしてかえ言葉ことばがなかった。

14:7 きゃくまねかれたものたちが上座じょうざえらんでいる様子ようすをごらんになって、かれらに一つのたとえかたられた。

14:8 「こんえんまねかれたときには、上座じょうざにつくな。あるいは、あなたよりも身分みぶんたかひとまねかれているかもれない。

14:9 その場合ばあい、あなたとそのひととをまねいたものがきて、『このかたにゆずってください』とうであろう。そのとき、あなたはって末座まつざにつくことになるであろう。

14:10 むしろ、まねかれた場合ばあいには、末座まつざってすわりなさい。そうすれば、まねいてくれたひとがきて、『ともよ、上座じょうざほうへおすすみください』とうであろう。そのとき、あなたはせきともにするみんなのまえで、面目めんぼくをほどこすことになるであろう。

14:11 おおよそ、自分じぶんたかくするものひくくされ、自分じぶんひくくするものたかくされるであろう」。

14:12 また、イエスは自分じぶんまねいたひとわれた、「午餐ごさんまたは晩餐ばんさんせきもうける場合ばあいには、友人ゆうじん兄弟きょうだい親族しんぞく金持かねもちとなびとなどはばぬがよい。おそらくかれらもあなたをまねきかえし、それであなたは返礼へんれいけることになるから。

14:13 むしろ、宴会えんかいもよお場合ばあいには、貧乏人びんぼうにん不具者ふぐしゃあしなえ、盲人もうじんなどをまねくがよい。

14:14 そうすれば、かれらは返礼へんれいができないから、あなたはさいわいになるであろう。ただしい人々ひとびと復活ふっかつさいには、あなたはむくいられるであろう」。

14:15 列席者れっせきしゃのひとりがこれをいてイエスに「かみくに食事しょくじをするひとは、さいわいです」とった。

14:16 そこでイエスがわれた、「あるひと盛大せいだい晩餐ばんさんかいもよおして、おおぜいのひとまねいた。

14:17 晩餐ばんさん時刻じこくになったので、まねいておいたひとたちのもとにしもべおくって、『さあ、おいでください。もう準備じゅんびができましたから』とわせた。

14:18 ところが、みんな一様いちようことわりはじめた。最初さいしょひとは、『わたしは土地とちいましたので、ってなければなりません。どうぞ、おゆるしください』とった。

14:19 ほかのひとは、『わたしは五ついうしいましたので、それをしらべにくところです。どうぞ、おゆるしください』、

14:20 もうひとりのひとは、『わたしはつまをめとりましたので、まいることができません』とった。

14:21 しもべかえってきて、以上いじょうこと主人しゅじん報告ほうこくした。するといえ主人しゅじんはおこってしもべった、『いますぐに、まち大通おおどおりや小道こみちって、貧乏人びんぼうにん不具者ふぐしゃ盲人もうじんあしなえなどを、ここへれてきなさい』。

14:22 しもべった、『ご主人様しゅじんさまおおせのとおりにいたしましたが、まだせきがございます』。

14:23 主人しゅじんしもべった、『みちやかきねのあたりにって、このいえがいっぱいになるように、人々ひとびと無理むりやりにひっぱってきなさい。

14:24 あなたがたにってくが、まねかれたひとで、わたしの晩餐ばんさんにあずかるものはひとりもないであろう』」。

14:25 おおぜいの群衆ぐんしゅうがついてきたので、イエスはかれらのほういてわれた、

14:26 「だれでも、ちちははつま兄弟きょうだい姉妹しまい、さらに自分じぶんいのちまでもてて、わたしのもとにるのでなければ、わたしの弟子でしとなることはできない。

14:27 自分じぶん十字架じゅうじかうてわたしについてるものでなければ、わたしの弟子でしとなることはできない。

14:28 あなたがたのうちで、だれかが邸宅ていたくてようとおもうなら、それを仕上しあげるのにりるだけのかねっているかどうかをるため、まず、すわってその費用ひよう計算けいさんしないだろうか。

14:29 そうしないと、土台どだいをすえただけで完成かんせいすることができず、ているみんなのひとが、

14:30 『あのひとてかけたが、仕上しあげができなかった』とってあざわらうようになろう。

14:31 また、どんなおうでも、ほかのおうたたかいをまじえるために場合ばあいには、まずして、こちらの一万人まんにんをもって、二万人まんにんひきいてかっててき対抗たいこうできるかどうか、かんがえてないだろうか。

14:32 もし自分じぶんちからにあまれば、てきがまだとおくにいるうちに、使者ししゃおくって、もとめるであろう。

14:33 それとおなじように、あなたがたのうちで、自分じぶん財産ざいさんをことごとくるものでなくては、わたしの弟子でしとなることはできない。

14:34 しおいものだ。しかし、しおもききめがなくなったら、なにによって塩味しおあじりもどされようか。

14:35 つちにも肥料ひりょうにもやくたず、そとてられてしまう。みみのあるものはくがよい」。 

第15章 

15:1 さて、取税人しゅぜいにん罪人つみびとたちがみな、イエスのはなしこうとして近寄ちかよってきた。

15:2 するとパリサイびと律法りっぽう学者がくしゃたちがつぶやいて、「このひと罪人つみびとたちをむかえて一緒いっしょ食事しょくじをしている」とった。

15:3 そこでイエスはかれらに、このたとえをおはなしになった、

15:4 「あなたがたのうちに、百ぴきひつじっているものがいたとする。その一ぴきがいなくなったら、九十九ひき野原のはらのこしておいて、いなくなった一ぴきつけるまではさがあるかないであろうか。

15:5 そしてつけたら、よろこんでそれを自分じぶんかたせ、

15:6 いえかえってきて友人ゆうじんとなびとあつめ、『わたしと一緒いっしょよろこんでください。いなくなったひつじつけましたから』とうであろう。

15:7 よくきなさい。それとおなじように、罪人つみびとがひとりでもあらためるなら、悔改くいあらためを必要ひつようとしない九十九にんただしいひとのためにもまさるおおきいよろこびが、てんにあるであろう。

15:8 また、あるおんな銀貨ぎんかまいっていて、もしその一まいをなくしたとすれば、彼女かのじょはあかりをつけて家中いえじゅうき、それをつけるまでは注意深ちゅういぶかさがさないであろうか。

15:9 そして、つけたなら、おんなともだちや近所きんじょおんなたちをあつめて、『わたしと一緒いっしょよろこんでください。なくした銀貨ぎんかつかりましたから』とうであろう。

15:10 よくきなさい。それとおなじように、罪人つみびとがひとりでもあらためるなら、かみ御使みつかいたちのまえでよろこびがあるであろう」。

15:11 またわれた、「あるひとに、ふたりのむすこがあった。

15:12 ところが、おとうと父親ちちおやった、『ちちよ、あなたの財産ざいさんのうちでわたしがいただくぶんをください』。そこで、ちちはその身代しんだいをふたりにけてやった。

15:13 それから幾日いくにちもたたないうちに、おとうと自分じぶんのものを全部ぜんぶとりまとめてとおところき、そこで放蕩ほうとうちくずして財産ざいさん使つかはたした。

15:14 なにもかも浪費ろうひしてしまったのち、その地方ちほうにひどいききんがあったので、かれべることにもきゅうしはじめた。

15:15 そこで、その地方ちほうのある住民じゅうみんのところにってせたところが、そのひとかれはたけにやってぶたわせた。

15:16 かれは、ぶたべるいなごまめはらたしたいとおもうほどであったが、なにもくれるひとはなかった。

15:17 そこでかれ本心ほんしんちかえってった、『ちちのところには食物しょくもつのありあまっている雇人やといにんおおぜいいるのに、わたしはここでえてのうとしている。

15:18 って、ちちのところへかえって、こうおう、ちちよ、わたしはてんたいしても、あなたにむかっても、つみおかしました。

15:19 もう、あなたのむすことばれる資格しかくはありません。どうぞ、雇人やといにんのひとり同様どうようにしてください』。

15:20 そこでって、ちちのところへかけた。まだとおはなれていたのに、ちちかれをみとめ、あわれにおもってはしり、そのくびをだいて接吻せっぷんした。

15:21 むすこはちちった、『ちちよ、わたしはてんたいしても、あなたにむかっても、つみおかしました。もうあなたのむすことばれる資格しかくはありません』。

15:22 しかしちちしもべたちにいつけた、『さあ、はやく、最上さいじょう着物きものしてきてこのせ、指輪ゆびわにはめ、はきものをあしにはかせなさい。

15:23 また、えたうしいてきてほふりなさい。べてたのしもうではないか。

15:24 このむすこがんでいたのにかえり、いなくなっていたのにつかったのだから』。それから祝宴しゅくえんがはじまった。

15:25 ところが、あにはたけにいたが、かえってきていえちかづくと、音楽おんがくおどりのおときこえたので、

15:26 ひとりのしもべんで、『いったい、これは何事なにごとなのか』とたずねた。

15:27 しもべこたえた、『あなたのご兄弟きょうだいがおかえりになりました。無事ぶじむかえたというので、父上ちちうええたうしをほふらせなさったのです』。

15:28 あにはおこっていえにはいろうとしなかったので、ちちてきてなだめると、

15:29 あにちちにむかってった、『わたしはなんねんもあなたにつかえて、一でもあなたのいつけにそむいたことはなかったのに、ともだちとたのしむためにやぎ一ぴきくださったことはありません。

15:30 それだのに、遊女ゆうじょどもと一緒いっしょになって、あなたの身代しんだいいつぶしたこのあなたのかえってくると、そのためにえたうしをほふりなさいました』。

15:31 するとちちった、『よ、あなたはいつもわたしと一緒いっしょにいるし、またわたしのものは全部ぜんぶあなたのものだ。

15:32 しかし、このあなたのおとうとは、んでいたのにかえり、いなくなっていたのにつかったのだから、よろこいわうのはあたりまえである』」。