文語訳舊約聖書(1953年版)(振り仮名付き)
ヨシュア記
1:1 ヱホバの僕モーセの死し後ヱホバ、モーセの從者ヌンの子ヨシユアに語りて言たまはく
1:2 わが僕モーセは已に死り然ば汝いま此すべての民とともに起てこのヨルダンを濟り我がイスラエルの子孫に與ふる地にゆけ
1:3 凡そ汝らが足の蹠にて踏む所は我これを盡く汝らに與ふ我が前にモーセに語し如し
1:4 汝らの疆界は荒野および此レバノンより大河ユフラテ河に至りてヘテ人の全地を包ね日の沒る方の大海に及ぶべし
1:5 汝が生ながらふる日の間なんぢに當る事を得る人なかるべし我モーセと偕に在しごとく汝と偕にあらん我なんぢを離れず汝を棄じ
1:6 心を強くしかつ勇め汝はこの民をして我が之に與ふることをその先祖等に誓ひたりし地を獲しむべき者なり
1:7 惟心を強くし勇み勵んで我僕モーセが汝に命ぜし律法をことごとく守りて行へ之を離れて右にも左にも曲るなかれ然ば汝いづくに往ても利を得べし
1:8 この律法の書を汝の口より離すべからず夜も晝もこれを念ひて其中に録したる所をことごとく守りて行へ然ば汝の途福利を得汝かならず勝利を得べし
1:9 我なんぢに命ぜしにあらずや心を強くしかつ勇め汝の凡て往く處にて汝の神ヱホバ偕に在せば懼るる勿れ戰慄なかれ
1:10 茲にヨシユア民の有司等に命じて言ふ
1:11 陣營の中を行めぐり民に命じて言へ汝等糧食を備へよ三日の内に汝らは此ヨルダンを濟り汝らの神ヱホバが汝らに與へて獲させんとしたまふ地を獲んために進みゆくべければなりと
1:12 ヨシユアまたルベン人ガド人およびマナセの支派の半に告て言ふ
1:13 ヱホバの僕モーセ前に汝らに命じて言り汝らの神ヱホバ今なんぢらに安息を賜へり亦この地を汝らに與へたまふべしと汝らこの言詞を記念よ
1:14 汝らの妻子および家畜はモーセが汝らに與へしヨルダンの此旁の地に止まるべし然ど汝ら勇者は皆身をよろひて兄弟等の先にたち進濟りて之を助けよ
1:15 而してヱホバが汝らに賜ひし如くなんぢらの兄弟等にも安息を賜ふにおよばば又かれらもなんぢらの神ヱホバの與へたまふ地を獲るにおよばば汝らヱホバの僕モーセより與へられしヨルダンの此旁日の出る方なる己が所有の地に還りてこれを保つべしと
1:16 彼らヨシユアに應て言ふ汝が我等に命ぜし所は我等盡く爲べし凡て汝が我らを遣す處には我ら往べし
1:17 我らは一切の事モーセに聽したがひし如く亦なんぢに聽したがはん唯ねがはくは汝の神ヱホバ、モーセと偕にいまししごとく汝と偕に在さんことを
1:18 誰にもあれ汝が命令に背き凡て汝が命ずるところの言に聽したがはざる者あらば之を殺すべし唯なんぢ心を強くしかつ勇め
2:1 茲にヌンの子ヨシユア、シツテムより潜かに二人の間者を發し之にいひけるは往てかの地およびヱリコを窺ひ探れ乃ち彼ら往て妓婦ラハブと名づくる者の家に入て其處に寝けるが
2:2 或人ヱリコの王に告て觀よイスラエルの子孫の者この地を探らんとて今宵ここに入きたれりといふ
2:3 是に於てヱリコの王ラハブに言つかはしけるは汝にきたりて汝の家に入し人を曳いだせ彼らは此全國を探らんとて來れるなり
2:4 婦人かのふたりの人を將て之を匿し而して言ふ實にその人々はわが許に來れり然れども我その何處よりか知ざりしが
2:5 黄昏どき門を閉るころに出されり我その人々の何處へ往しかを知ず急ぎその後を追へ然ば之に追及んと
2:6 その實は婦すでにかれらを領て屋葢に升り屋葢の上に列べおきたる麻のなかに之をかくししなり
2:7 かくてその人々彼らの後を追ひヨルダンの路をゆきて渡場に赴むけり、かれらの後を追ふ者出るや直に門を閉しぬ
2:8 二人のもの未だ寝ずラハブ屋背に上りて彼らのもとに來り
2:9 これに言けるはヱホバこの地を汝らに賜へり我らは甚く汝らを懼る此地の民盡く汝らの前に消亡ん我この事を知る
2:10 其は汝らがエジプトより出來し時ヱホバなんぢらの前にて紅海の水を乾たまひし事および汝らがヨルダンの彼旁にありしアモリ人の二箇の王シホンとオグとになししこと即ちことごとく之を滅ぼしたりし事を我ら聞たればなり
2:11 我ら之を聞や心怯けなんぢらの故によりて人の魂きえうせたり汝らの神ヱホバは上の天にも下の地にも神たるなり
2:12 然ば請ふ我すでに汝らに恩を施したれば汝らも今ヱホバを指て我父の家に恩をほどこさんことを誓ひて我に眞實の記號を與へよ
2:13 又わが父母兄弟姉妹および凡て彼らに屬る者をながらへしめ我らの生命を拯ひて死を免かれしめんことを誓へよ
2:14 二人のものこれに言けるは汝ら若しわれらの此事を洩すことなくば我らの生命汝らに代りて死ん又ヱホバわれらに此地を與へたまふ時には我らなんぢに恩を施し眞實を盡さん
2:15 是においてラハブ繩をもて彼らを窓より縋おろせり是は其家邑の石垣の上にありてかれ石垣の上に住しによる
2:16 ラハブかれらに言けるは恐らくは追者なんぢに遇ん汝ら山に往て三日が間そこに隱れをり追者の還るを待て後去ゆくべし
2:17 二人のものかれに言けるは汝が我らに誓しし此誓につきては我ら罪を獲じ
2:18 我らが此地に打いらん時は汝我らを縋おろしたりし窓に此一條の赤き紐を結つけ且つ汝の父母兄弟および汝の父の家の眷族を悉く汝の家に聚むべし
2:19 凡て汝の家の門を出て街衢に來る者はその血自身の首に歸すべし我らは罪なし然どもし汝とともに家にをる者に手をくはふることをせばその血は我らの首に歸すべし
2:20 將た汝もし我らのこの事を洩さば汝が我らに誓せたる誓に我らあづかることなし
2:21 ラハブいひけるはなんぢらの言のごとくすべしと斯てかれらを出し去しめて赤き紐を窓に結べり
2:22 かれら往て山にいり追來るもののかへるを待て三日が間そこに居れりおひ來れるもの?ねく彼らを途に尋ねしかども終に獲ざりき
2:23 而してかの二箇の人は山を下り河を濟りて歸りヌンの子ヨシユアに詣りて其有し事等をつぶさに陳ぶ
2:24 またヨシユアにいふ誠にヱホバこの國をことごとく我らの手に付したまへりこの國の民は皆我らの前に消うせんと
3:1 ヨシユア朝はやく起いでてイスラエルの人々とともにシツテムを打發てヨルダンにゆき之を濟らずして其處に宿りぬ
3:2 斯て三日の後有司ら陣營の中をめぐり
3:3 民に命じて曰ふ汝ら祭司等レビ人がなんぢらの神ヱホバの契約の櫃を舁出すを見ば其處を發出てその後に從がへ
3:4 されど汝らとその櫃との間には量りて凡そ二千キユビト許の隔離あるべし之に近づく勿れなんぢらその行べき途を知んためなり汝らは未だこの途を經しことなかりき
3:5 ヨシユアまた民に言ふ汝ら身を潔めよヱホバ明日なんぢらの中に妙なる事を行ひたまふべしと
3:6 ヨシユア祭司等に告ていふ契約の櫃を舁き民に先だちて濟れと則ち契約の櫃を舁き民に先だちて進めり
3:7 ヱホバ、ヨシユアに言たまひけるは今日よりして我イスラエルの衆の目の前に汝を尊くし我がモーセと偕にありし如く汝と偕にあることを之に知せん
3:8 なんぢ契約の櫃を舁ところの祭司等に命じて言へ汝らヨルダンの水際にゆかばヨルダンにいりて立べしと
3:9 ヨシユアでイスラエルの人々にむかひて汝ら此に近づき汝らの神ヱホバの言を聽けと
3:10 而してヨシユア語りけらく活神なんぢらの中に在してカナン人ヘテ人ヒビ人ペリジ人ギルガジ人アモリ人ヱブス人を汝らの前より必ず逐はらひたまふべきを左の事によりてなんぢら知るべし
3:11 視よ全地の主の契約の櫃なんぢらに先だちてヨルダンにすすみ入る
3:12 然ば今イスラエルの支派の中より支派ごとに一人づつ合せて十二人を擧よ
3:13 全地の主ヱホバの櫃を舁ところの祭司等の足の蹠ヨルダンの水の中に踏とどまらばヨルダンの水上より流れくだる水きれとどまり立てうづだかくならん
3:14 かくて民はヨルダンを濟らんとてその幕屋を立出祭司等は契約の櫃を舁て之に先だちゆく
3:15 抑々ヨルダンは収穫の頃には絶ずその岸にことごとく溢るるなれど櫃を舁く者等ヨルダンに到り櫃を舁ける祭司等の足水際に浸ると斉しく
3:16 上より流れくだる水止まりて遥に遠き處まで涸れザレタンに近きアダム邑の邊にて積り起て堆かくなりアラバの海すなはち鹽海の方に流れくだる水まつたく截止りたれば民ヱリコにむかひて直に濟れり
3:17 即ちヱホバの契約の櫃を舁る祭司等ヨルダンの中の乾ける地に堅く立をりてイスラエル人みな乾ける地を渉りゆき遂に民ことごとくヨルダンを濟りつくせり
4:1 民ことごとくヨルダンを濟りつくしたる時ヱホバ、ヨシユアに語りて言たまはく
4:2 汝ら民の中より支派ごとに一人づつ合せて十二人を擧げ
4:3 これに命じて言へ汝らヨルダンの中祭司等の足を踏とめしその處より石十二を取あげてこれを負ひ濟り此夜なんぢらが宿る宿場に居ゑよと
4:4 ヨシユアすなはちイスラエルの人々の中より支派ごとに預て一人づつを取て備へおきぬその十二人の者を召よせ
4:5 而してヨシユアこれに言けるは汝らの神ヱホバの契約の櫃の前に當りて汝らヨルダンの中にすすみ入りイスラエルの人々の支派の數に循ひて各々石ひとつを取あげて肩に負きたれ
4:6 是は汝らの中に徴となるべし後の日にいたりて汝らの子輩是等の石は何のこころなりやと問て言ば
4:7 之にいへ往昔ヨルダンの水ヱホバの契約の櫃の前にて裁斷りたる事を表はすなり即ちそのヨルダンを濟れる時にヨルダンの水きれ止まれりこの故にこれらの石を永くイスラエルの人々の記念となすべしと
4:8 イスラエルのひとびとヨシユアの命ぜしごとく然なしヱホバのヨシユアに告げたまひし如くイスラエルの人々の支派の數にしたがひてヨルダンの中より石十二を取あげ之を負わたりてその宿る處にいたり之を其處にすゑたり
4:9 ヨシユアまたヨルダンの中において契約の櫃を舁る祭司等の足を踏立し處に石十二を立たりしが今日までも尚ほ彼處にあり
4:10 櫃を舁る祭司等はヱホバのヨシユアに命じて民に告しめたまひし事の悉く成るまでヨルダンの中に立をれり凡てモーセのヨシユアに命ぜし所に適へり民は急ぎて濟りぬ
4:11 民の悉く濟りつくせるときヱホバの櫃および祭司等は民の觀る前にて濟りたり
4:12 ルベンの子孫ガドの子孫およびマナセの支派の半モーセの之に言たりし如く身をよろひてイスラエルの人々に先だちて濟りゆき
4:13 凡そ四萬人ばかりの者軍の装に身を堅め攻戰はんとてヱホバに先だち濟りてヱリコの平野に至れり
4:14 ヱホバこの日イスラエルの衆人の目の前にてヨシユアを尊くしたまひければ皆モーセを畏れしごとくに彼を畏る其一生の間常に然り
4:15 ヱホバ、ヨシユアに語りて言たまひけるは
4:16 なんぢ證詞の櫃を舁る祭司等にヨルダンを出きたれと命ぜよ
4:17 ヨシユアすなはち祭司等に命じヨルダンを出きたれと言ければ
4:18 ヱホバの契約の櫃を舁る祭司等ヨルダンの中より出きたる 祭司等足の蹠を陸地に擧ると斉くヨルダンの水故の處に流れかへりて初のごとくその岸にことごとく溢れぬ
4:19 正月の十日に民ヨルダンを出きたりヱリコの東の境界なるギルガルに營を張り
4:20 時にヨシユアそのヨルダンより取きたらせし十二の石をギルガルにたて
4:21 イスラエルの人々に語りて言ふ後の日にいたりて汝らの子輩その父に問て是らの石は何の意なりやと言ば
4:22 その子輩に告しらせて言へ在昔イスラエルこのヨルダンを陸地となして濟りすぎし事あり
4:23 即ち汝らの神ヱホバ、ヨルダンの水を汝らの前に乾涸して汝らを濟らせたまへり其事は汝らの神ヱホバの我らの前に紅海を乾涸して我らを渡らせたまひし状况の如くなりき
4:24 斯なしたまひしは地の諸の民をしてヱホバの手の力あるを知しめ汝らの神ヱホバを恒に畏れしめんためなり
5:1 ヨルダンの彼旁に居るアモリ人の諸の王および海邊に居るカナン人の諸の王はヱホバ、ヨルダンの水をイスラエルの人々の前に乾涸して我らを濟らせたまひしと聞きイスラエルの人々の事によりて神魂消え心も心ならざりき
5:2 その時ヱホバ、ヨシユアに言たまひけるは汝石の小刀を作り重て復イスラエルの人々に割禮を行なへと
5:3 ヨシユアすなはち石の小刀を作り陽皮山にてイスラエルの人々に割禮を行へり
5:4 ヨシユアが割禮を行ひし所以は是なりエジプトより出きたりし民の中の一切の男すなはち軍人は皆エジプトを出し後途にて荒野に死たりしが
5:5 その出來し民はみな割禮を受たる者なりき然どエジプトを出し後途にて荒野に生れし民には皆割禮を施こさざりき
5:6 そもそもイスラエルの人々は四十年の間荒野を歩みをりて終にそのエジプトより出來し民すなはち軍人等ことごとく亡はてたり是ヱホバの聲に聽したがはざりしに因てなり是をもてヱホバかれらの先祖等に誓ひて我等に與へんと宣まひし地なる乳と蜜との流るる地を之に見せじと誓たまへり
5:7 かれらに継て興らしめたまひしその子輩にはヨシユア割禮を行へりかれらは途にて割禮を施さざりしによりて割禮なきものなりければなり
5:8 一切の民に割禮を行ふこと畢りぬれば民は陣營に其儘居てその痊るを待り
5:9 時にヱホバ、ヨシユアにむかひて我今日エジプトの羞辱を汝らの上より轉ばし去りと宣まへり是をもてその處の名を今日までギルガル(轉)と稱ふ
5:10 イスラエルの人々ギルガルに營を張りその月の十四日の晩ヱリコの平野にて逾越節を行へり
5:11 而して逾越節の翌日その地の穀物酵いれぬパンおよび?麥をその日に食ひけるが
5:12 その地の穀物を食ひし翌日よりしてマナの降ることを止みてイスラエルの人々かさねてマナを獲ざりき其年はカナンの地の?物を食へり
5:13 ヨシユア、ヱリコの邊にあひける時目を擧て觀しに一箇の人劍を手に抜持て己にむかひて立ゐければヨシユアすなはちその許にゆきて之に言ふ汝は我等を助くるか將われらの敵を助くるか
5:14 かれいひけるは否われはヱホバの軍旅の將として今來れるなりとヨシユア地に俯伏て拝し我主なにを僕に告んとしたまふやと之に言り
5:15 ヱホバの軍旅の將ヨシユアに言けるは汝の履を足より脱され汝が立をる處は聖きなりとヨシユア然なしぬ
6:1 (イスラエルの人々の故によりてヱリコは堅く閉して出入する者なし)
6:2 ヱホバ、ヨシユアに言ひたまひけるは觀よわれヱリコおよびその王と大勇士とを汝の手に付さん
6:3 汝ら軍人みな邑を繞りて邑の周圍を一次まはるべし汝六日が間かく爲よ
6:4 祭司等七人おのおのヨベルの喇叭をたづさへて櫃に先だつべし而して第七日には汝ら七次邑をめぐり祭司等喇叭を吹ならすべし
6:5 然して祭司等ヨベルの角を音ながくふきならして喇叭の聲なんぢらに聞ゆる時は民みな大に呼はり喊ぶべし然せばその邑の石垣崩れおちん民みな直に進て攻のぼるべしと
6:6 ヌンの子ヨシユアやがて祭司等を召て之に言ふ汝ら契約の櫃を舁き祭司等七人ヨベルの喇叭七をたづさへてヱホバの櫃に先だつべしと
6:7 而して民に言ふ汝ら進みゆきて邑を繞れ甲冑のものどもヱホバの櫃に先だちて進むべしと
6:8 ヨシユアかく民に語りしかば七人の祭司等おのおのヨベルの喇叭をたづさへヱホバに先だちすきみて喇叭を吹きヱホバの契約の櫃これにしたがふ
6:9 即ち甲冑のものどもは喇叭を吹くところの祭司等にさきだちて行き後軍は櫃の後に行く祭司たちは喇叭を吹きつつすすめり
6:10 ヨシユア民に命じて言ふ汝ら呼はる勿れ汝らの聲を聞えしむるなかれまた汝らの口より言を出すなかれわが汝らに呼はれと命ずる日におよびて呼はるべしと
6:11 而してヱホバの櫃をもち邑を繞りて一周し陣營に來りて營中に宿れり
6:12 又あくる朝ヨシユアはやく興いで祭司等ヱホバの櫃を舁き
6:13 七人の祭司等おのおのヨベルの喇叭をたづさへヱホバの櫃に先だちて行き喇叭を吹きつつすすみ甲冑の者等これに先だちて行き後軍はヱホバの櫃の後に行く祭司等喇叭をふきつつ進めり
6:14 その次の日にも一次邑を繞りて陣營に歸り六日が間然なせり
6:15 第七日には夜明に早く興いで前のごとくして七次邑を繞れり唯この日のみ七次邑を繞りたり
6:16 七次目にいたりて祭司等喇叭を吹くときにヨシユア民に言ふ汝ら呼はれヱホバこの邑を汝らに賜へり
6:17 この邑およびその中の一切の物をば詛はれしものとしてヱホバに献ぐべし唯妓婦ラハブおよび凡て彼とともに家に在るものは生し存べしわれらが遣しし使者を匿したればなり
6:18 唯汝ら詛はれし物を愼め恐らくは汝ら其を詛はれしものとして献ぐるに方りその詛はれし物を自ら取りてイスラエルの陣營をも詛はるるものとならしめ之をして惱ましむるに至らん
6:19 但し銀金銅器鐵器などは凡てヱホバに聖別て奉まつるべきものなればヱホバの府庫にこれを携へいるべしと
6:20 是において民よばはり祭司喇叭を吹ならしけるが民喇叭の聲をきくと斉しくみな大聲を擧て呼はりしかば石垣崩れおちぬ斯りしかば民おのおの直に邑に上りいりて邑を攻取り
6:21 邑にある者は男女少きもの老たるものの區別なく盡くこれを刃にかけて滅ぼし且つ牛羊驢馬にまで及ぼせり
6:22 時にヨシユアこの地を窺ひたりし二箇の人にむかひ汝らかの妓婦の家に入りかの婦人およびかれに屬る一切のものを携へいだしかれに誓ひし如くせよと言ければ
6:23 間者たりし少き人等すなはち入てラハブおよびその父母兄弟ならびに彼につけるすべてのものを携へ出しまたその親戚をも携へ出しイスラエルの陣營の外にかれらを置り
6:24 斯て火をもて邑とその中の一切のものを焚ぬ但し銀金銅器鐵器などはヱホバの室の府庫に納めたり
6:25 妓婦ラハブおよびその父の家の一族と彼に屬る一切の者とはヨシユアこれを生し存ければラハブは今日までイスラエルの中に住をる是はヨシユアがヱリコを窺はせんとて遣はしし使者を匿したるに因てなり
6:26 ヨシユアその時人衆に誓ひて命じ言けるは凡そ起てこのヱリコの邑を建る者はヱホバの前に詛はるべし其石礎をすゑなば長子を失ひその門を建なば季子を失はんと
6:27 ヱホバ、ヨシユアとともに在してヨシユアの名あまねく此地に聞ゆ
7:1 時にイスラエルの人々その詛はれし物につきて罪を犯せり即ちユダの支派の中なるゼラの子ザブデの子なるカルミの子アカン詛はれし物を取り是をもてヱホバ、イスラエルの人々にむかひて震怒を發ちたまへり
7:2 ヨシユア、ヱリコより人を遣はしベテルの東に當りてベテアベンの邊にあるアイに到らしめんとし之に語りて言ふ汝ら上りゆきてかの地を窺へとその人々上りゆきてアイを窺ひけるが
7:3 ヨシユアの許に歸て之に言ふ民を盡くは上り往しめざれ唯二三千人を上らせてアイを撃しめよかれらは寡ければ一切の民を彼處に遣て勞せしむるなかれと
7:4 是において民およそ三千人ばかり彼處に上りゆきけるが遂にアイの人の前より遁はしれり
7:5 アイの人彼らを門の前より追てシバリムにいたり下坂にてその三十六人ばかりを撃り民は魂神消て水のごとくになりぬ
7:6 斯りしかばヨシユア衣を裂きイスラエルの長老等とともにヱホバの櫃の前にて暮まで地に俯伏をり首に塵を蒙れり
7:7 ヨシユア言けらく嗟主ヱホバよ何とて此民を導きてヨルダンを濟らせ我らをアモリ人の手に付して滅亡させんとしたまふや我等ヨルダンの彼旁に安んじ居しならば善りしものを
7:8 嗟主よイスラエルすでに敵に背を見せたれば我また何をか言ん
7:9 カナン人およびこの地の一切の民これを聞きわれらを攻かこみてわれらの名をこの世より絶ん然らば汝の大なる御名を如何にせんや
7:10 ヱホバ、ヨシユアに言たまひけるは立よなんぢ何とて斯は俯伏すや
7:11 イスラエルすでに罪を犯しわが彼らに命じおける契約を破れり即ち彼らは詛はれし物を取り窃みかつ詐りてこれを己の所有物の中にいれたり
7:12 是をもてイスラエルの人々は敵に當ること能はず敵に背を見す是は彼らも詛はるる者となりたればなり汝ら其詛はれし物を汝らの中より絶にあらざれば我ふたたび汝らと偕にをらじ
7:13 たてよ民を潔めて言へ汝ら身を潔めて明日を待てイスラエルの神ヱホバかく言たまふイスラエルよ汝の中に詛はれしものあり汝その詛はれし物を汝らの中より除き去るまでは汝の敵に當ること能はず
7:14 然ば翌朝汝らその支派にしたがひて進みいづべし而してヱホバの掣たまふ支派はその宗族にしたがひて進み出でヱホバの掣たまふ宗族はその家にしたがひて進み出でヱホバの掣たまふ家は男ひとりびとりに從がひて進みいづべし
7:15 凡そ掣れて詛はれし物を有りと定まる者は其一切の所有物とともに火に焚るべし是はヱホバの契約を破りイスラエルの中に愚なる事を行ひたるが故なりと
7:16 ヨシユア是において朝はやく興いでてイスラエルをその支派にしたがひて進出しめけるにユダの支派掣れたれば
7:17 ユダのもろもろの宗族を進み出でしめけるにゼラの宗族掣れゼラの宗族の人々を進み出しめけるにザブデ掣れ
7:18 ザブデの家の人々を進み出しめけるにアカン掣れぬ彼はユダの支派なるゼラの子ザブデの子なるカルミの子なり
7:19 ヨシユア、アカンに言けるは我子よ請ふイスラエルの神ヱホバに稱讃を歸し之にむかひて懺悔し汝の爲たる事を我に告よ其事を我に隱すなかれ
7:20 アカン、ヨシユアに答へて言けるは實にわれはイスラエルの神ヱホバに對ひて罪ををかし如此々々行へり
7:21 即ちわれ掠取物の中にバビロンの美しき衣服一枚に銀二百シケルと重量五十シケルの金の棒あるを見欲く思ひて其を取れりそれはわが天幕の中に地に埋め匿してあり銀も下にありと
7:22 爰にヨシユア使者を遣はしければ即ち彼の天幕に奔りゆきて視しに其は彼の天幕の中に匿しありて銀も下にありき
7:23 彼ら其を天幕の中より取出してヨシユアとイスラエルの一切の人々の所に携へきたりければ則ちそれをヱホバの前に置り
7:24 ヨシユアやがてイスラエルの一切の人とともにゼラの子アカンを執へかの銀と衣服と金の棒およびその男子女子牛驢馬羊天幕など凡て彼の有る物をことごとく取てアコルの谷にこれを曳ゆけり
7:25 而してヨシユア言けらく汝なんぞ我らを惱まししやヱホバ今日汝を惱ましたまふべしと頓てイスラエル人みな石をもて彼を撃ころし又その家族等をも石にて撃ころし火をもて之を焚けり
7:26 而してアカンの上に大なる石堆を積揚たりしが今日まで存るかくてヱホバその烈しき忿怒を息たまへり是によりてその處の名を今日までアコル(惱)の谷と呼ぶ
8:1 茲にヱホバ、ヨシユアに言たまひけるは懼るる勿れ戰慄なかれ軍人をことごとく率ゐ起てアイに攻のぼれ視よ我アイの王およびその民その邑その地を都て汝の手に授く
8:2 汝さきにヱリコとその王とに爲し如くアイとその王とに爲べし今回は其貨財およびその家畜を奪ひて自ら取べし汝まづ邑の後に伏兵を設くべしと
8:3 ヨシユアすなはち起あがり軍人をことごとく將てアイに攻のぼらんとしまづ大勇士三萬人を選びて夜の中にこれを遣はせり
8:4 ヨシユアこれに命じて言く汝らは邑に對ひて邑の後に伏すべし邑に遠く離れをる勿れ皆準備をなして待をれ
8:5 我と我に從がふ民みな共に邑に攻よせん而して彼らが初のごとく我らにむかひて打出んとき我らは彼らの前より逃はしらん
8:6 然せば彼ら我らを追て出來べければ我等つひに之を邑より誘き出すことを得ん其は彼等いはんこの人衆は初めのごとくまた我等の前より逃ぐと斯てわれらその前より逃はしらん
8:7 汝らその伏をる處より起りて邑を取べし汝らの神ヱホバ之を汝らの手に付したまふべし
8:8 汝ら邑を乗取たらば邑に火を放ちヱホバの言詞の如く爲べし我これを汝らに命ず努よやと
8:9 かくてヨシユアかれらを遣はしければ即はち往てアイの西の方にてベテルとアイとの間に身を伏せたりヨシユアはその夜民の中に宿れり
8:10 ヨシユア朝はやく興いでて民をあつめイスラエルの長老等とともに民に先だちてアイにのぼりゆけり
8:11 彼に從がふ軍人ことごとく上りゆきて攻寄せ邑の前に至りてアイの北に陣をとれり彼とアイの間には一の谷ありき
8:12 ヨシユア五千人許を擧て邑の西の方にてベテルとアイとの間にこれを伏せおけり
8:13 かく民の全軍を邑の北に置きその伏兵を邑の西に置てヨシユアその夜谷の中にいりぬ
8:14 アイの王これを視しかばその邑の人々みな急ぎて蚤に起き進み出てイスラエルと戰ひけるが預て諜しあはせ置る頃には王とその一切の民アラバの前に進み來れり王は邑の後に伏兵ありて已を伺ふを知らざりき
8:15 時にヨシユア、イスラエルの一切の人とともに彼らに打負し状して荒野の路を指て逃はしりしかば
8:16 その邑の民みな之を追撃んとて呼はり集まりヨシユアの後を追て邑を出離れ
8:17 アイにもベテルにもイスラエルを追ゆかずして遺りをる者は一人もなく皆邑を開き放してイスラエルの後を追り
8:18 時にヱホバ、ヨシユアに言たまはく汝の手にある矛をアイの方に指伸よ我これを汝の手に授くべしとヨシユアすなはち己の手にある矛をアイの方に指伸るに
8:19 伏兵たちまち其處より起りヨシユアが手を伸ると齊しく奔きたりて邑に打いり之を取りて直に邑に火をかけたり
8:20 茲にアイの人々背をふりかへりて觀しに邑の焚る煙天に立騰りゐたれば此へも彼へも逃るに術なかりき斯る機しも荒野に逃ゆける民も身をかへして其追きたる者等に逼れり
8:21 ヨシユアおよび一切のイスラエル人伏兵の邑を取て邑の焚る煙の立騰るを見身を還してアイの人々を殺しけるが
8:22 かの兵また邑より出きたりて彼らに向ひければ彼方にも此方にもイスラエル人ありて彼らはその中間に挾まれぬイスラエル人かくして彼らを攻撃て一人をも餘さず逃さず
8:23 つひにアイの王を生擒てヨシユアの許に曳きたれり
8:24 イスラエル人己を荒野に追きたりしアイの民をことごとく野に殺し刃をもてこれを仆し盡すにおよびて皆アイに歸り刃をもてこれを撃ほろぼせり
8:25 その日アイの人々ことごとく斃れたりその數男女あはせて一萬二千人
8:26 ヨシユア、アイの民をことごとく滅ぼし絶まではその矛を指伸たる手を垂ざりき
8:27 但しその邑の家畜および貨財はイスラエル人これを奪ひて自ら取り是はヱホバのヨシユアに命じたまひし言に依なり
8:28 ヨシユア、アイを燬て永くこれを墟垤とならしむ是は今日まで荒地となりをる
8:29 ヨシユアまたアイの王を薄暮まで木に掛てさらし日の沒におよびて命じてその死骸を木より取おろさしめ邑の門の入口にこれを投すて其上に石の大垤を積おこせり其は今日まで存る
8:30 かくてヨシユア、エバル山にてイスラエルの神ヱホバに一の壇を築けり
8:31 是はヱホバの僕モーセがイスラエルの子孫に命ぜしことに本づきモーセの律法の書に記されたる所に循がひて新石をもて作れる壇にて何人も鐵器をその上に振あげず人衆その上にてヱホバに燔祭を献げ酬恩祭を供ふ
8:32 彼處にてヨシユア、モーセの書しるしし律法をイスラエルの子孫の前にて石に書うつせり
8:33 かくてイスラエルの一切の人およびその長老官吏裁判人など他國の者も本國の者も打まじりてヱホバの契約の櫃を舁る祭司等レビ人の前にあたりて櫃の此旁と彼旁に分れ半はゲリジム山の前に半はエバル山の前に立り是ヱホバの僕モーセの命ぜし所にしたがひて最初に先イスラエルの民を祝せんとてなり
8:34 然る後ヨシユア律法の書に凡てしるされたる所に循ひて祝福と呪詛とにかかはる律法の言をことごとく誦り
8:35 モーセの命じたる一切の言の中にヨシユアがイスラエルの全會衆および婦人子等ならびにイスラエルの中にをる他國の人の前にて誦ざるは無りき
9:1 茲にヨルダンの彼旁において山地平地レバノンに對へる大海の濱邊に居る諸の王すなはちヘテ人アモリ人カナン人ペリジ人ヒビ人ヱブス人たる者どもこれな聞て
9:2 心を同うし相集まりてヨシユアおよびイスラエルと戰はんとす
9:3 然るにギベオンの民ヨシユアがヱリコとアイとに爲たりし事を聞しかば
9:4 己も詭計をめぐらして使者の状にいでたち古き袋および古び破れたるを結びとめたる酒の革嚢を驢馬に負せ
9:5 補ひたる古履を足にはき古衣を身にまとひ來れり其糧のパンは凡て乾きかつ黴てありき
9:6 彼等ギルガルの陣營に來りてヨシユアの許にいたり彼とイスラエルの人々に言ふ我らは遠き國より來れり然ば今われらと契約を結べと
9:7 イスラエルの人々ヒビ人に言けるは汝らは我等の中に住をるならんも計られねば我ら爭か汝らと契約を結ぶことを得んと
9:8 彼ら又ヨシユアにむかひて我らは汝の僕なりと言ければヨシユアかれらに汝らは何人にして何處より來りしやと問しに
9:9 彼らヨシユアに言けるは僕等は汝の神ヱホバの名の故によりて遥に遠き國より來れり其は我ら彼の聲譽および彼がエジプトにて行ひたりし一切の事を聞き
9:10 また彼がヨルダンの彼旁にをりしアモリ人の二箇の王すなはちヘシボンの王シホンおよびアシタロテにをりしバシヤンの王オグに爲たりし一切の事を聞たればなり
9:11 是をもて我らの長老および我らの國に住をるものみなわれらに告て言り汝ら旅路の糧を手に携さへ往てかれらを迎へて彼らに言へ我らは汝らの僕なり請ふ我らと契約を結べと
9:12 我らの此パンは汝らの所に來らんとて出たちし日に我ら家々より其なほ温煖なるをとり備へしなるが視よ今は已に乾きて黴たり
9:13 また酒をみたせるこれらの革嚢も新しかりしが破るるに至り我らのこの衣服も履も旅路の甚だ長きによりて古びぬと
9:14 然るに人々は彼らの糧を取りヱホバの口を問ことをせざりき
9:15 ヨシユアすなはち彼らと好を爲し彼らを生しおかんといふ契約を結び會中の長等かれらに誓ひたりしが
9:16 その彼らと契約を結びてより三日を經て後かれらは己に近き人にして己の中に住をる者なりと聞り
9:17 イスラエルの子孫やがて進みて第三日に彼らの邑々に至れり其邑はギベオン、ケピラ、ベエロテおよびキリアテヤリムなり
9:18 然れども會中の長等イスラエルの神ヱホバを指て彼らに誓ひたりしをもてイスラエルの子孫これを攻撃ざりき是をもて會衆みな長等にむかひて呟けり
9:19 然ど長等は凡て全會衆に言ふ我らイスラエルの神ヱホバを指て彼らに誓へり然ば今彼らに觸べからず
9:20 我ら斯かれらに爲て彼らを生しおかん然すれば彼らに誓ひし誓によりて震怒の我らに及ぶことあらじと
9:21 長等また人衆にむかひて彼らを生しおくべしと言ければ彼らは遂に全會衆のために薪を斬り水を汲ことをする者となれり長等の彼等に言たるが如し
9:22 ヨシユアすなはち彼らを召よせて彼らに語りて言けるは汝らは我らの中に住をりながら何とて我らは汝らに甚だ遠しと言て我らを誑かししや
9:23 然ば汝らは詛はる汝らは永く奴隸となり皆わが神の室のために薪を斬り水を汲ことをする者となるべしと
9:24 彼らヨシユアに應へて言けるは僕等はなんぢの神ヱホバその僕モーセに此地をことごとく汝らに與へ此地の民をことごとく汝らの前より滅ぼし去ことを命ぜしと明白に傳へ聞たれば汝らのために生命の危からんことを太く懼れて斯は爲けるなり
9:25 視よ我らは今汝の手の中にあり汝の我らに爲を善とし正當とする所を爲たまへと
9:26 ヨシユアすなはち其ごとく彼らに爲し彼らをイスラエルの子孫の手より救ひて殺さしめざりき
9:27 ヨシユアその日かれらをして會衆のためおよびヱホバの壇の爲に其えらびたまふ處において薪を斬り水を汲ことをする者とならしめたりしが今日まで然り
10:1 茲にエルサレムの王アドニゼデクはヨシユアがアイを攻取てこれを全く滅ぼし嚮にヱリコとその王とに爲しごとくにアイとその王とにも爲たる事およびギベオンの民がイスラエルと好を爲て之が中にをる事を聞て
10:2 大に懼る是ギベオンは大なる邑にして都府に等しきに因りまたアイよりも大きくしてその内の人々凡て強きに因てなり
10:3 エルサレムの王アドニゼデク是においてヘブロンの王ホハム、ヤルムテの王ピラム、ラキシの王ヤピアおよびエグロンの王デビルに人を遣はして云ふ
10:4 我の處に上りきたりて我を助けよ我らギベオンを攻撃ん其はヨシユアおよびイスラエルの子孫と好を結びたればなりと
10:5 而してこのアモリ人の王五人すなはちエルサレムの王ヘブロンの王ヤルムテの王ラキシの王およびエグロンの王あひ集まりそり諸軍勢を率て上りきたりギベオンに對ひて陣を取り之を攻て戰ふ
10:6 ギベオンの人々ギルガルの陣營に人を遣はしヨシユアに言しめけるは僕等を助くることを緩うする勿れ迅速に我らの所に上り來りて我らを救ひ助けよ山地に住をるアモリ人の王みな相集りて我らを攻るなりと
10:7 ヨシユアすなはち一切の軍人および一切の大勇士を率ゐてギルガルより進みのぼれり
10:8 時にヱホバ、ヨシユアに言たまひけるは彼らを懼るるなかれ我かれらを汝の手に付す彼らの中には汝に當ることを得る者一人もあらじと
10:9 この故にヨシユア、ギルガルより終夜進みのぼりて猝然にかれらに攻よせしに
10:10 ヱホバかれらをイスラエルの前に敗りたまひければヨシユア、ギベオンにおいて彼らを夥多く撃殺しベテホロンの昇阪の路よりしてアゼカおよびマツケダまで彼らを追撃り
10:11 彼らイスラエルの前より逃はしりてベテホロンの降阪にありける時ヱホバ天より大石を降しそのアゼカに到るまで然したまひければ多く死りイスラエルの子孫が劍をもて殺しし者よりも雹石にて死し者の方衆かりき
10:12 ヱホバ、イスラエルの子孫の前にアモリ人を付したまひし日にヨシユア、ヱホバにむかひて申せしことあり即ちイスラエルの目の前にて言けらく日よギベオンの上に止まれ月よアヤロンの谷にやすらへ
10:13 民その敵を撃やぶるまで日は止まり月はやすらひぬ是はヤシヤルの書に記さるるにあらずや即ち日空の中にやすらひて急ぎ沒ざりしこと凡そ一日なりき
10:14 是より先にも後にもヱホバ是のごとく人の言を聽いれたまひし日は有ず是時にはヱホバ、イスラエルのために戰ひたまへり
10:15 かくてヨシユア一切のイスラエル人とともにギルガルの陣營に歸りぬ
10:16 かの五人の王は逃ゆきてマツケダの洞穴に隱れたりしが
10:17 五人の王はマツケダの洞穴に隱れをるとヨシユアに告て言ふ者ありければ
10:18 ヨシユアいひけるは汝ら洞穴の口に大石を轉ばしその傍に人を置てこれを守らせよ
10:19 但し汝らは止る勿れ汝らの敵の後を追てその殿軍を撃て彼らをその邑々に入しむる勿れ汝らの神ヱホバかれらを汝らの手に付したまへるぞかしと
10:20 ヨシユアおよびイスラエルの子孫おびただしく彼らを撃殺して遂に殺し盡しその撃もらされて遺れる者等城々に逃いるにおよびて
10:21 民みな安然にマツケダの陣營にかへりてヨシユアの許にいたりけるがイスラエルの子孫にむかひて舌を鳴すもの一人もなかりき
10:22 時にヨシユア言ふ洞穴の口を開きて洞穴よりかの五人の王を我前に曳いだせと
10:23 やがて然なしてかの五人の王すなはちエルサレムの王ヘブロンの王ヤルムテの王ラキシの王およびエグロンの王を洞穴より彼の前に曳いだせり
10:24 かの王等をヨシユアの前に曳いだしし時ヨシユア、イスラエルの一切の人々を呼よせ己とともに往し軍人の長等に言けるは汝ら近よりて此王等の頸に足をかけよと乃はち近よりてその王等の頸に足をかけければ
10:25 ヨシユアこれに言ふ汝ら懼るる勿れ慄く勿れ心を強くしかつ勇めよ汝らが攻て戰ふ諸の敵にはヱホバすべて斯のごとく爲たまふべしと
10:26 かくて後ヨシユア彼らを撃て死しめ五個の木にかけて晩暮まで木の上にこれを曝しおきしが
10:27 日の沒る時におよびてヨシユア命を下しければ之を木より取おろしその隱れたりし洞穴に投いれて洞穴の口に大石を置り是は今日が日までも存す
10:28 ヨシユアかの日マツケダを取り刃をもて之とその王とを撃ち之とその中たる一切の人をことごとく滅して一人をも遺さずヱリコの王になしたるごとくにマツケダの王にも爲しぬ
10:29 かくてヨシユア一切のイスラエル人を率ゐてマツケダよりリブナに進みてリブナを攻て戰ひけるに
10:30 ヱホバまた之とその王をもイスラエルの手に付したまひしかば刃をもて之とその中なる一切の人を撃ほろぼし一人をもその中に遺さずヱリコの王に爲たるごとくにその王にも爲ぬ
10:31 ヨシユアまた一切のイスラエル人を率ゐてリブナよりラキシに進み之にむかひて陣をとり之を攻めて戰ひけるに
10:32 ヱホバでラキシをイスラエルの手に付したまひけれぼ第二日にこれを取り刃をもて之とその中なる一切の人々を撃ちほろぼせり凡てリブナに爲たるがごとし
10:33 時にゲゼルの王ホラム、ラキシを援けんとて上りきたりければヨシユアかれとその民とを撃ころして終に一人をも遺さざりき
10:34 斯てヨシユア一切のイスラエル人を率ゐてラキシよりエグロンに進み之に對ひて陣を取りこれを攻て戰ひ
10:35 その日にこれを取り刃をもて之を撃その中なる一切の人をことごとくその日に滅ぼせり凡てラキシに爲たるが如し
10:36 ヨシユアまた一切のイスラエル人をひきゐてエグロンよりヘブロンに進みのぼり之を攻て戰ひ
10:37 やがてこれを取り之とその王およびその一切の邑々とその中なる一切の人を刃にかけて撃ころして一人をも遺さざりき凡てエグロンに爲たるが如し即ち之とその中なる一切の人をことごとく滅ぼせり
10:38 かくてヨシユア一切のイスラエル人を率ゐ歸りてデビルに至り之を攻て戰ひ
10:39 之とその王およびその一切の邑を取り刃をもて之を撃てその中なる一切の人をことごとく滅ぼし一人をも遺さざりき其デビルと其王に爲たる所はヘブロンに爲たるが如く又リブナとその王に爲たるがごとくなりき
10:40 ヨシユアかく此全地すなはち山地南の地平地および山腹の地ならびに其すべての王等を撃ほろぼして人一箇をも遺さず凡て氣息する者は盡くこれを滅ぼせりイスラエルの神ヱホバの命じたまひしごとし
10:41 ヨシユア、カデシバルネアよりガザまでの國々およびゴセンの全地を撃ほろぼしてギベオンにまで及ぼせり
10:42 イスラエルの神ヱホバ、イスラエルのために戰ひたまひしに因てヨシユアこれらの諸王およびその地を一時に取り
10:43 かくてヨシユア一切のイスラエル人を率ゐてギルガルの陣營にかへりぬ
11:1 ハゾルの王ヤビン之を聞およびマドンの王ヨバブ、シムロンの王アクサフの王
11:2 および北の地山地キンネロテの南のアラバ平地西の方なるドルの高處などに居る王等
11:3 すなはち東西のカナン人アモリ人ヘテ人ペリジ人山地のエブス人ミヅバの地なるヘルモンの麓のヒビ人などに人を遣はせり
11:4 爰に彼らその諸軍勢を率ゐて出きたれり其民の衆多ことは濱の砂の多きがごとくにして馬と車もまた甚だ多かりき
11:5 これらの王たち皆あひ會して進みきたり共にメロムの水の邊に陣をとりてイスラエルと戰はんとす
11:6 時にヱホバ、ヨシユアに言たまひけるは彼らの故によりて懼るる勿れ明日の今頃われ彼らをイスラエルの前に付して盡く殺さしめん汝かれらの馬の足の筋を截り火をもて彼らの車を焚べしと
11:7 ヨシユアすなはち一切の軍人を率ゐて俄然にメロムの水の邊に押寄て之を襲ひけるに
11:8 ヱホバこれをイスラエルの手に付したまひしかば則ち之を撃やぶりて大シドンおよびミスレポテマイムまで之を追ゆき東の方にては又ミヅバの谷までこれを追ゆき遂に一人をも遺さず撃とれり
11:9 ヨシユアすなはちヱホバの己に命じたまひしことにしたがひて彼らに馬の足の筋を截り火をもてその車を焚り
11:10 その時ヨシユア歸りきたりてハゾルを取り刃をもてその王を撃り在昔ハゾルは是らの諸國の盟主たりき
11:11 即ち刃をもてその中なる一切の人を撃てことごとく之を滅ぼし氣息する者は一人だに遺さざりき又火をもてハゾルを焚り
11:12 ヨシユアこれらの王の一切の邑々およびその諸王を取り刃をもてこれを撃て盡く滅ぼせり、ヱホバの僕モーセの命じたるがごとし
11:13 但しその岡の上にたちたる邑々はイスラエルこれを焚ず唯ハゾルのみをヨシユア焚り
11:14 是らの邑の諸の貨財及び家畜はイスラエルの人々奪ひて自ら之を取り人はみな刃をもて撃て滅ぼし盡し氣息する者は一人だに遺さざりき
11:15 ヱホバその僕モーセに命じたまひし所をモーセまたヨシユアに命じ置たりしがヨシユアその如くに行へり凡てヱホバのモーセに命じたまひし所はヨシユア一だに爲で置し事なし
11:16 ヨシユア斯その全地すなはち山地南の全地ゴセンの全地平地アラバ、イスラエルの山地およびその平地を取り
11:17 セイルに上りゆくでハラク山よりヘルモン山の麓なるレバノン谷のバアルガデまでを獲その王等をことごとく執へて之を撃て死しめたり
11:18 ヨシユア此すべての王等と戰爭をなすこと日ひさし
11:19 ギベオンの民ヒビ人を除くの外はイスラエルの子孫と好をなしし邑なかりき皆戰爭をなしてこれを攻とりしなり
11:20 そもそも彼らが心を剛愎にしてイスラエルに攻よせしはヱホバの然らしめたまひし者なり彼らは詛はれし者となり憐憫を乞ふこととせず滅ぼされんがためなりき是全くヱホバのモーセに命じたまひしが如し
11:21 その時ヨシユアまた往て山地ヘブロン、デビル、アナブ、ユダの一切の山地イスラエルの一切の山地などよりしてアナク人を絶ち而してヨシユア彼らの邑々をも與に滅ぼせり
11:22 然からにイスラエルの子孫の地の内にはアナク人一人も遺りをらず只ガザ、ガテ、アシドドに少く遺りをる而已
11:23 ヨシユアかく此地を盡く取り全くヱホバのモーセに告たまひし如し而してヨシユア、イスラエルの支派の區別にしたがひ之を與へて?業となさしめたり遂に此地に戰爭やみぬ